劇場公開日 2022年6月24日

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「開放感と強さ」大人は判ってくれない あま・おとさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0開放感と強さ

2024年6月19日
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鑑賞方法:VOD

主人公アントワープを演じたジャン・ピエール・レオは当時14歳だったとのこと。凄みがあるというか大人っぽいというか…男っぽくみえる。
観劇する幼い子どもたちの場面が出てきた。こどもたちの反応はそれぞれ違っていて、もうこの頃からすでに個がある。でも、あどけない罪のない可愛さはみなに共通。わたしたち、スタートはみなこんな感じなのだ…。それが、環境や経験により良きものも悪しきものもプラスされていく。そしてアントワープの凄みもそう、ということなのか。
この子どもたちの描写は飽きなくておもしろかった。

彼に心身ともに行き場がないということは見ていれば自然に納得されてくる。腰の座った落ち着いた描写がなければなかなかこうはいかない。
いよいよ少年院送りになった時、ああ、ついにこんなことになってしまった…と思った。と同時に開放感も感じた。彼は、大人のつまらない気まぐれにもう縛られずにすむから。彼はそんなものから離れて強く生きたほうがいい、と。
その開放は脱走により、ひとまず現実のものになる。海の広がりが彼の眼の前にあった。どれほど不安で、同時にどれほど強い心持ちだったのだろう…。

この映画は監督の 自伝的映画だという。もしもっと違う良き環境に置かれていたならば、この監督さんはこの形では成功しなかったのだろうか。何も不具合な環境でなければ良い芸術家が生まれないということはないだろうけれど、大人や社会に対する反発やら洞察やらが活動に影響を与えた面はあったのだろう。
そして社会は気まぐれに、今度は彼への称賛にまわる。おかしな構図だこと。

あま・おと