劇場公開日 2021年1月29日

「ディーンが父を抱きしめる場面は、やはり映画史上屈指の名場面。」エデンの東 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ディーンが父を抱きしめる場面は、やはり映画史上屈指の名場面。

2020年6月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作は映画史上の名作として誰もが題名だけでも聞いたことがあるであろう作品です。コロナ禍によりこうした名作もスクリーンで鑑賞する機会が得られたのは、数少ない吉報の一つでしょう。

 映像で観るジェームス・ディーンは、やはりイメージに違わぬ名演です。これが彼にとっての映画初出演作なのですが、母に絶望し父にすがりつく彼の姿は鮮烈で、涙を誘わずにはいられません。

 ディーンの熱演は、エリア・カザン監督の導入した、俳優が演じる人物に心身共に一体化する「メソッド演技」によるところも大きく、『波止場』(一九五四)のマーロン・ブランドと同様、後の映画俳優の演技に大きな影響を与えました。さらにまた、カザン監督自身も本作の数年前に、所謂「赤狩り」の矢面に立たされており、それもまた、本作の「陰」の濃さに影響を与えているようです。

 作中でも引用しているように、本作の構成や人物名などは旧約聖書のカインとアベルの物語に基づいています。ただし旧約聖書ではケイン=キャルが兄で、アベル=アロンは弟のところ、映画では逆転しています。またイヴの立場にあるケートが全く子供を顧みない母親であるなど、聖書を相対化した描写があり、興味深いです。

yui