エデンの東

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劇場公開日:

解説・あらすじ

旧約聖書のカインとアベルの物語を下敷きにしたジョン・スタインベックの同名小説を、「欲望という名の電車」「波止場」の名匠エリア・カザン監督が映画化した青春ドラマ。1917年のアメリカ・カリフォルニア北部の町サリナスを舞台に、孤独な青年キャルの苦悩や家族との確執を描く。主演は本作が映画初出演となるジェームズ・ディーン。共演にジュリー・ハリス、ジョー・バン・フリート。音楽はレナード・ローゼンマン。1955年公開。日本でも幾度かリバイバル公開されており、2005年11月にはデジタルリマスター版でリバイバル公開。2021年1月にも「ジェームス・ディーン生誕90周年記念上映」(21年1月29日~、新宿ピカデリー&なんばパークスシネマ)でリバイバル上映。

1955年製作/118分/PG12/アメリカ
原題または英題:East of Eden
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2021年1月29日

その他の公開日:1955年(日本初公開)、2005年11月3日

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第13回 ゴールデングローブ賞(1956年)

受賞

最優秀作品賞(ドラマ)  

第8回 カンヌ国際映画祭(1955年)

受賞

ドラマティック映画賞 エリア・カザン

出品

出品作品 エリア・カザン
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映画レビュー

3.0”善”の傲慢さ。

2025年6月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

カワイイ

親子の物語。

旧約聖書のエピソードをベースにしているのだそうだ。
 キリスト者ではないからかな。どうも、合わない。
 旧約聖書・新約聖書を途中まで読んでみたことはあるけれど。”父”である”神”の意に添わなければ、滅ぼされる話ばっかり。ソドムとゴモラみたいに。ノアの箱舟だって…。気に入った人は助けるらしいが。

この話も、”善”たる父と兄。その対比として、主人公キャルと母。その確執が入り交じって話が進む。
 ”悪”と認定されたキャルが、”悪”と認定された母の力を借りて、”善”とされている父に愛してもらおうと努力するが…。
 そして、”善”と”悪”の中で、迷うエイブラ。

エイブラは人間らしい。
 キャルに悩みを打ち明けつつ、え、落ち込んでいるキャルにそんなお願い?自己中さにあきれると同時に、人間てそんなものだよなとも思ってしまう。

もう一つの”善”の争い。
 ドイツ系移民のアルブレヒト。この映画は第一次大戦なので、ナチスは出てこないけれど、対戦相手であるドイツのことを悪く言われて、それを否定する。それに絡む、街の人々。家族が戦死したりして、ドイツを認めたくないのは判る。半面、ついこの前まで、同じ町に住み、関わりのあるアルブレヒトへの暴行。自分たちの思いこそが”善”として排斥活動になる。

”善”は”善”であれば、何をしても良いのか。
その”善”の醜悪さが鼻について、嫌悪感が立ち上る。

そして何より”善”の脆さ。自分の世界が壊れると…。
自分のことしか考えられない”善”。
「ざまあみろ」と言いたくなる私は相当汚れているのだろう。

親子の確執。その顛末と見ると、共感でき、身につまされる。
あ、否、親の価値観を子に押し付けて、子をダメにする親はたくさんいるか。
そういう意味では普遍的な物語。

父が「お前を許す」という場面の醜悪さ。構図もなぜか斜め。観ているだけで不安定さに嫌悪感が出てくる。
 妻ケートへも、自分色に染めようとするだけ。ケートが何を感じ、考えようとしているのかを考えようともしていない。

兄。キャルより、自分の方が愛を勝ち取って、皆に認められているという醜悪な優越感を振りまく。キャルを愛しているとはいうものの、見下しているから。自分の地位を脅かさないものだから。ワザとなのか、天然なのか、キャルの足を引っ張っる発言が多い。キャルをかばうそぶりもない。かえって、キャルがいた方が、自分の”善”が目立つくらいに思っているのではないかと思えるような言動が多い。
 エイブラにも、自分の”善”を押し付けるだけ。それで、エイブラが悩んでいることには一切気が付かない。それって、”愛”なのか。自分の”善”に酔っているナルシストなだけではないのか。

保安官は、アルブレヒトの騒動の際でも、大岡裁判的な采配を見せ、キャルにも寄り添うような言動があり、一見、良い人に見える。けれど、表面的なことしか見えていない。

そんな三人が好きになれないので、キャルが父に認められようとあがくのがよくわからない。さっさと、見切って自分の場所を見つけに行けばよいのに。

「ケートが、生まれたばかりの子どもを捨てて出て行って17年」
 そうか、キャルはまだ17歳なんだ。アーロンが老けて見えるから、キャルが大豆相場なんてやっているから、成人しているのかと思ってしまった。
 だとすると、家族の中に居場所を作らないと生きていけない。ケートのところからは追い出されそうだし。
 父が喜ぶ顔を想像して、兄よりも認められる瞬間を想像して、はしゃぐキャル。
 そして…。
 こうなって…。
 こうなった…。
私的にはちょっとわだかまりが残るけれど。

原作未読。この映画は原作の一部を映画化したとか。きっと、この映画に描かれていない設定などがあるのだろうなと思う。

キャルを演じられたディーン氏の、捨て猫のような表情が。大豆畑で夢見る有様が、ラストのシーンが、愛おしくなる。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

≪以下、ネタバレ≫

エイブラの気持ちも考えずに、婚約を強行するアーロン。
エイブラの了承、エイブラの両親の了承はいらないのか。
自分が決めたことだから許されると思うアーロン。
そこを確かめもせずに、既成の事実となったと喜ぶ父。
キャルにエイブラを取られそうな予感がして、キャルの優位に立ちたいというアーロンの気持ちには気が付かない。困った表情をしているエイブラにも気が付かない父。
なんという傲慢な父と兄。

気持ちは嬉しいが、大豆相場で儲けたお金を受け取れないという父。
 与えられた役目とはいえ、自分たちが送り出した若者の有様をみたら、戦争特需で儲けるなんてという気持ちは判る。
 でも、キャルはそれに気が付かない。まだ、17歳だもの。やっと元気を取り戻して、新しいことに熱中しだした父を応援したいだけ。お金さえあれば、また冷蔵の取り組みを再開できる、父を元気づけられると思っているだけ。特に、最近、父が元気がないから。大豆畑に夢中になっていて、父が元気がない理由を聞いていないから。
 このすれ違いには胸が痛くなった。
 父の説明の仕方がもう少し、キャルの気持ちを組みながらであったが、その後の展開は違ったであろうに。

拒否されて、縋りつくキャル。そこからのキャルの変化に鳥肌が立つ。
 絶望から、一気に悪魔になる。その時の不気味さ・怖さ。木の陰から出てきて、兄を見据える目。兄に迫る、有無を言わさない迫力。
 そして、事を成し遂げて、父への一言。「家族は必要としない」

この言葉を聞いて、父が変化をすればよかったのに。自分の愚を悟ってくれればよかったのに。

そのような変化もなく、アーロンの愚行で倒れてしまう父。
それから、エイブラの活躍もあり、大円団になるのだが、
半面、アーロンがいなくなった代わりを、キャルに求めているだけのようにも見えるのだ。

脚本的には、エイブラの説得、キャルが父に語るかっての父の教え、看護婦、そして和解になるのだが。
 あの場面でエイブラがあのようなことをいう流れは判る。
 だが、キャルがあの父の教えを言うって。あんなことをしたのに。ついさっきまで反省すらせずに、父を捨てようとしたのに。保安官の言葉、エイブラの言葉、父の死期を知り、急速に反省したのか、17歳。

それでも、嬉々として父の側に座るキャルの姿を見ると、「よかったね」と声をかけたくなる。

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とみいじょん

3.5映画終活シリーズ

2024年9月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1954年度作品
ジェームス•ディーン初鑑賞
エリア•カザン三作品目
ジェームス•ディーンはアイドルスターやったんや
25歳で、高校生役
大映テレビ的な作品やな、笑

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あきちゃん

5.0映画史上屈指の存在感

2024年8月4日
PCから投稿

モンロー、ヘップバーン、李の三先輩に並んで、俳優の個性だけで世界を制覇した俳優の史上の名作です。

作品自体は標準的な文芸作品で、日本人にはよくわからないキリスト教の御託がテーマらしいですが、ディーン先輩の圧倒的な存在感は、アクターズ・スタジオを凍りつかせた稽古伝説を裏付ける眼の動き、肩の傾け方、後ろ姿のシルエットからセリフの間まで、デニーロ先輩の神業テクニックとは違う、まさに生まれつき、才能としか言いようのない唯一無二感です。

おばちゃまのジェームズディーンちゃんは不滅です。

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越後屋

5.0ジェームズ・ディーン‼️

2024年7月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD

泣ける

楽しい

幸せ

農場主アダムの双生児の息子、優等生で父に溺愛されている兄アーロン、父への愛を受けてもらえない弟キャルの相剋を描いた物語‼️やはりこの作品を語る上で欠かせないのはジェームズ・ディーン‼️親を慕う心、愛を求める一生懸命な姿、努力が報われない悔しさ、それらを絶妙な表情で演じるJ・ディーンの素晴らしい演技と言うよりはその存在感‼️キャルがアダムの胸にしがみつき、泣きじゃくるシーンは必見ですね‼️そしてそんなJ・ディーンのイメージを我々の胸に刻み込んでくれたレナード・ローゼンマンのテーマ曲もホントに忘れられません‼️入江の全景やキャルが転がる大豆畑といった一つ一つのシーンの構図の素晴らしさも、まるで美しい水彩画を観ているような気分にしてくれる名作でした‼️

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