エヴァの匂いのレビュー・感想・評価
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地獄の異邦人
エヴァ(ジャンヌ・モロー)は “その道の” プロであり 迷いも卑下もない
過去に破滅させられた男や このウェールズ人タイヴィアン(スタンリー・ベイカー)は彼女が相手の好み(弱味)を見抜き〈即興のように〉そこを突き、金を巻き上げる… ということを理解していないか、忘れてしまう
彼女はイタリアのローマ、ヴェネツィア周辺を根城にしている
超高級ホテルといえども高額な部屋を常に満室には出来ないから 女の前では見栄を張り、金払いの良くなる客を連れてきてくれる彼女達を歓迎する
エヴァのようにアカ抜けていて お洒落であれば賭博場の華の役目も果たす
彼女達とホテルは〈持ちつ持たれつ〉なのだ
高級店にとっても得意客…
彼等の流儀を理解せず、エヴァに執着し、金を渋りながら自己顕示欲だけは強いこのウェールズ人はここでは馬鹿にされる
(彼が本当の作家であれば、察知できたはず)
この映画は 長回し撮影の演出が冴えている
他にもモローが〈奇妙な果実〉を聴いていたこと
コクトーがこの原作を彼女に薦めたこと
衣装合わせでカルダンと恋に落ちたことなども 大きく関係している
私は女性なので モローが着こなす彼の服の数々に見惚れてしまった
エヴァの場合それらは鎧の役目も果たすがタイヴィアンの贅沢は自分を大きく見せようとする心理も働いている
ゴンドラやホテル・ダニエリなどのロケーションも美しかった
フランチェスカ(リージ)の絶望のシーンで
《楽園追放》の複製画が映るが
どうして人間は〈禁断の果実〉に手を伸ばしてしまうのだろう…
そして 階段を降りてくるエヴァの神々しさは 何だろう…
彼女は男の罪の《告解》も していることになるからだろうか
ロージーは ハドリー・チェイスのパルプ小説を全く違和感なく、ヨーロッパの美しく残酷な都市での誘惑の物語に置き換えている
ウェールズ人の(兄が執筆した)本の題名も「地獄の異邦人」である
彼は取り込まれてしまったのだろうか?
女と出会ったからではなく
ハドリー・チェイス原作。
ジャンヌ・モロー主演。
ビリー・ホリデイの歌。
このトライアングルが素晴らしい映画
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男は悪女と出会ったから堕落したのではなく、最初っから悪かったんだ(皆を騙してたし)、堕ちるべくして堕ちたんだという、チェイス特有の潔癖さがイイ。
ロージー監督は、そこに「アダムとエヴァ」のモチーフを加えて映画化。
なかなかに渋い映画だなあと思う。
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追記:ロージー監督に影響を受けたアルドリッチの『傷だらけの挽歌』(同じくチェイス原作)も、すごく好き。
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