劇場公開日 1971年12月18日

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「ネズミの可愛さと気持ち悪さが堪能できる!」ウイラード モアイさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ネズミの可愛さと気持ち悪さが堪能できる!

2024年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

そんなもん堪能したいかは別として、それを堪能できる映画です。

ホラー映画には観客を恐怖のどん底へ突き落す怪物ないしお化けがつきものですが、本作でその役を担うのはネズミです。本当にただのネズミです。
一部のシーンでぬいぐるみを使っているかもしれませんが、この映画に登場するネズミはほぼ全てのシーンで本物の生きたネズミです。

一、二匹がじゃれあっている程度ならまだいいのですが、それが数十匹、百数匹とネズミ算式に増えていくと、言い知れぬ不気味さが沸き上がります。(割とデカいし)

顔だけ映っている分には可愛いんです。つぶらな瞳で鼻をヒクつかせていて・・・。ところが真っ黄色の歯が覗いたり、ちょっと引いて全身が映ると、毛のない、指が長い足とミミズの様なシッポが気持ち悪いのです。しかもそれが暗闇の中で群れで蠢いていたり、カーテンや壁を這いずりまわっていたり、人の体にまとわりついたりしている様は強烈です。生理的にキツい!

また主人公もなかなか生々しいです。
主人公:ウイラードは手の爪を噛むシーンが印象的な、内向的でコミュニケーション能力が低く、ストレスを内に溜め込むタイプです。

ウイラードの勤め先も住む家も彼の亡父が残したものです。しかしそれらの現状はウイラードにとって居心地のいい場所ではありません。

ただ当のウイラードにはそんな現状を変えたり、抜け出したりするための力が不足していますし、足りない力を補おうと努力する情熱もありません。なんとなく不満を募らせながらも、どこかで現状を受け入れて淡々と日々をやり過ごし、居心地のよくない場所に居座り続けています。
そしてそんな彼が夢中で情熱を注ぐのは地下室で増え続けるネズミたちを飼い慣らすことだけなのです。

身に覚えのある事なので言い難いのですが、ウイラードからはどこか自身の人生から目を背けた生き方をしている印象を受けるのです。そうしてなんとなく先延ばしにしていた事のツケがあるとき一気にやってきて、ニッチもサッチもいかなくなり非道な手段に打って出るという…。
得てしてそういう人間は身勝手なものですが、彼の最後の台詞にそれがよく表れています。またその一方でとても悲しく響く台詞でもあるのです。

と、正直そこまで凄い作品か?というと判断難しいのですが、個人的に妙な生々しさが刺さる映画でした。

※最後に一つ本編の結末とは関係ないネタバレをしますと、ウイラードの家の階段には昇降機が付いています!もうホラー映画で昇降機が出てくれば暴走しない訳がない!…のですが、この映画ではなんと昇降機は暴走しません。そこは暴走させようよ!!

モアイ
琥珀糖さんのコメント
2024年7月19日

おはようございます。

昨夜遅くに、「春までの祭」を観ました。
コメントして頂き、ビデオ収録を思い出しました。

とても素敵でしたね。
もう感動しました。
笠智衆さんって、演技が素晴らしいですね。
こんな上手い俳優さんでしたか。
気持ちが手に取るように読めました。
また吉永小百合さんの美しいこと、自然なこと。
やはり脚本ですね。
藤竜也のなんとなく信用できないような感じとか。
1989年収録。この後、バブルがはじけるんでしたか?
吉永小百合さんの役も人生に波乱がありそうですね。

ありがとうございました。
お陰様で、笠智衆の最後の出演作を観ることが出来ました。

琥珀糖