「男女二組の恋愛模様を並列したメロドラマ大作に残る演出の欲求不満」イングリッシュ・ペイシェント Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
男女二組の恋愛模様を並列したメロドラマ大作に残る演出の欲求不満
昨年のアカデミー賞受賞作品。第二次世界大戦を背景に、二組の男女の恋愛模様を巧みに交差させながら、終結と再生を同時に描いたメロドラマ大作。ただし、心うごめく者たちの表情の表現と物語の進展の調和が足りない。美しくは描いているが、その時その瞬間に見せる心の面影のモンタージュが弱い。アンソニー・ミンゲラ監督にその興味がないのかと訝しく思うほどなのだが、演出がスマート過ぎないか。人妻キャサリンを演じたクルスティン・スコット・トーマスの決して妖艶ではない色気のその内面からしっとり表れる成熟した女性の艶を出した演技が素晴らしく、対照的にジュリエット・ビノシュの若くして成熟したその肉体の一皮剥いた中に溢れる女性の欲求を演じた成果を認めると、男優たちの問題ともいえるか。はっきり言えば、男女のつり合いが取れていない。映画の語りとしてもラストの向かいクレッシェンドすべきなのだが、その流れも上手く行っていない。デヴィット・リーン監督なら傑作になったであろうと、少し欲求不満が残る作品だった。
1997年 11月9日
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