「「詩は必要としている人のもの」なのか?」イル・ポスティーノ なにわさんの映画レビュー(感想・評価)
「詩は必要としている人のもの」なのか?
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マリオがパブロの詩を使ってベアトリーチェを口説いたのが最後まで引っかかってしまった。「詩は必要としている人のもの」というのがマリオの考えだ。なるほど、そういう考えもあるかもしれない。共産主義的な言い方をするなら、詩という財産を共有する、ということかな。
それでもやっぱりマリオの考えには賛成できない。創作物というのは作り手の個人性が宿るもので、それを自分のものかのように使うのは作り手に対して敬意が無さすぎる。どれだけ稚拙な表現になっても、マリオは自分の感性を懸命に働かせ、必死に言葉を生み出してベアトリーチェを口説くべきだった。人の言葉を借りて思いを寄せる人を口説いても、嬉しいとは思えない。
ただ、最後の最後でマリオは詩人になったと思う。島の海や風、息子の心音を録音するという発想に感動した。彼の感じる島の美しさを、自分の声とともに残すという姿勢は正真正銘詩人。実際に島の風景や音、島民たちは様々な美しさを備えていたと思う。
悲しいラストだったが、海岸を歩くパブロの姿に深い余韻を感じる。
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