「教師と生徒の熱い絆を描いた、一名編の詩のような映画の美しさと想い」いまを生きる Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)
教師と生徒の熱い絆を描いた、一名編の詩のような映画の美しさと想い
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「刑事ジョン・ブック 目撃者」は感心しなかったが、こちらはピーター・ウィアー監督の最高傑作といいたいくらいの名作。名優ロビン・ウイリアムズ演じる詩を愛する教師と悩み多き青春期の生徒たちの熱い絆が生む、感動のラストシーンが素晴らしい。全寮制学院がステイタスとする校則と詰め込み教育の問題点は、時代と場所を選ばない普遍的な課題であり、その解決の最大の端緒は人間性豊かな教師にかかっている。だが映画では、自由と自立を唱える”キャプテン”教師の敗北で終わる。役者志願の生徒が父の期待に逆らう形で自殺してしまうエピソードに、そんな教師にも限界があることを再認識してしまうもどかしさ。学院と同じく、その父親の頑固さと利己主義は他人の意見が通用しないもので、本来は母親が救いの手を差し伸べなければならない。1950年代の終わり頃の時代とキリスト教の価値観が反映された母親の弱い立場を少なからず感じるが、教育のあるべき姿を模索する映画の問題提起になっている。
悲劇による教師の敗北で終わりながら、詩をテーマに生きる素晴らしさを讃えた映画として訴え掛けるラストシーン。そこに込められたウィアー監督の確信に満ちた想いが、映画の美しさになっている。モーリス・ジャールの音楽の使い方の巧さ、自然の風景の美しさが際立つジョン・シールの撮影も詩的なイメージを創造している。ウィリアムズ同様に、ロバート・ショーン・レナードの繊細な演技も印象に残る。映画そのものが、一名編の詩のような作品だった。
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