「苛烈な戦い」アルジェの戦い 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
苛烈な戦い
テロリスト対策の参考書として扱われているほどリアルな本作。
アルジェリアの10年に及ぶ、フランスからの独立戦争を、ドキュメンタリーかと見まがうほどの迫真の映像で描く。
フランス側の攻撃、また独立側の自爆テロなどで、多くの人が死んでいく。その描写は、痛ましいなどというありきたりな感想は撥ね付けてしまうほど苛烈を極める。100年にも及ぶフランス植民地支配に対するアルジェリア人の憎悪が怒濤のごとく押し寄せてくる。
映画製作国がアルジェリアとイタリアであり、フランス側から描いたらまた違う様相を呈するのかもしれない。複雑な史実を一本の映画が説明しきれるものではないと思う。それでも、いまだ無くならない武力闘争を考察する上で一助となる作品だと思う。
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観たのは今から10年ほど前だった。
その当時、フランスは、米国の対アルカイダ戦略を批判していた。
アルジェリア独立戦争ではフランスも同じような事をしていたのにと思った。イスラム圏混乱の一端は、長らく植民地支配していたフランスにも当然あるだろうにと思った。
現状は、過去の歴史と連綿と繋がっているのだと思った。
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独立戦争後のアルジェリアの道程も決して平坦なものではない。
イスラム教原理主義とアルジェリア軍部の対立により国家非常事態宣言が20年近く続いた時期もあった。2010年に漸く解除されたと思った矢先、
2013年1月16日、アルジェリア人質事件が起きた。
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苛烈な残酷さはいまだに続いているのか。
現状は、過去の歴史と連綿と繋がっているのか。
公開から半世紀近く経った今なお、本作は凄惨な問いを我々に投げかけている。
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アルジェリア人質事件に関して:日本人技術者の方々はじめ多くの方が亡くなった。このような映画感想の場で記すること自体不謹慎なのかもしれない。謹んでお詫び申し上げます。また犠牲になった方々のご冥福を心より祈念致します。