アラビアのロレンスのレビュー・感想・評価
全24件中、1~20件目を表示
若い時TVで見ていたのは、この映画の前編だった。
米国からの帰国便で、レストア版を鑑賞、発色がきれいだった。
1916年、第一次世界大戦下の中東。オスマン・トルコ帝国が枢軸国(ドイツ・オーストリア)側についたことから、英国はアラブの後ろ盾となるべく、詳しい知識を持つロレンス中尉を抜擢し、アラブ側に派遣する。
前編はヨルダンやモロッコでロケした映像が、際立って美しい。砂漠に太陽が昇る、水平線の向こうから蜃気楼のようにラクダに乗った男が現れる、砂嵐の中の行軍。
ロレンスは、ハリト族の理解を得てラクダ隊の50騎と、利にさといハウェイタット族の騎馬隊も味方に引き入れ、誰も考えていなかった内陸から、トルコ側の要衝である港町、アカバを攻めて占領する。カイロの英国陸軍司令部に辿り着いて、2階級特進、少佐に昇進する。
ところが一転、後編に入ると、彼の苦悩が語られる。確かに後編でも、彼はヘジャーズ鉄道爆破を指揮し、一度は、本務地へ戻ることを願い出るが翻意し、アラブの人びとに歓呼の声で迎えられて、ダマスカスを目指す。英国陸軍の本隊よりも先にダマスカスに辿り着き、占領を果たす。またも2階級特進して、大佐に。
ただ、彼の苦悩には、三つの背景があった。それまでの戦いで、彼は自分にきわめて近い部下を失い、指揮官として味方を処刑せざるを得ない場面もあった。Coup de grace(とどめの一撃)を与えたことも。さぞや、苦しかったろう。
彼は、幾多の戦功によりカリスマとなるが、恥ずかしがりやで、人見知りする一方で、物事に打ち込む。そうした人によくあるように、閾値を超えると、突然身勝手にふるまい、誤解されやすく、外観と内面のギャップに傷つきやすい。
さらに、中東では第二次世界大戦後、英仏の二大国が協議して、イスラエルを建国したように、国の間の政治バランスが全てを決める。ロレンスは、結局現場の人。これは当時、映画を観た欧米のビジネスマンたちの共感をうんだことだろう。
しかし、決して現在の日本の社会からロレンスやアラブの人たちの行動を理解しようとしてはいけない。アラブの人たちは、喫煙はするが、原則飲酒はしない。特に、中世スペインを支配していた時に、ギリシア・ローマ文明を継承していたのは彼らだった。いったん、イスラム語に翻訳された後、ヨーロッパに拡がっていった。しかも彼らは寛容で、キリスト教徒もユダヤ教徒も許していた。ただし、自分の文明に自信を持っていた分、近代文明(電気・水道・医療など)を受け入れるのに時間を要した。しかし、ロレンスは、Oxfordで学んでいたので、それらの経緯をよく知っていて、なかんずくコーランを諳んじていた。だから、アラブの人たちに慕われたのだ。
それにしても不思議だったのは、この映画には、一部のアラブ人以外女性が出てこなかったこと。やはり、ロレンスは当時の英国では犯罪であったある種の性癖を持っていたのだろう。ダルアーで、いったん捕まったとき受けた暴行に、それが示唆されていた。
この映画こそ、一度は大スクリーンで見るべき。しかし、その後編を見ることはつらいことも事実である。
ロレンスの人物像を多面的に捉えている
オスマン帝国に対するアラブ人の反乱に、強国のイギリスが手を貸してやろうという上から目線な態度では、一連の作戦は上手くいかなかっただろう。それがロレンスの言動から分かる。ロレンスはアラブ人に対等な仲間として接し、国家や人種の垣根を越えて彼らに溶け込もうとした。アカバを攻める際の行軍中にはぐれたアラブ人をただ一人助けに行くことで、アラブ人はロレンスを真の仲間として認め、彼らの人望を得ることができた。そうでなければ、民族間の対立もあるアラブ人を束ねて作戦遂行するのは難しかったことだろう。このように人格と能力を備えたロレンスだが、彼もまた一人の人間。やむを得ないとはいえアラブ人を処刑したり、オスマン帝国軍の拷問によって味方の情報を話しそうになる状況に苦悩し、自己嫌悪に陥る。ロレンスという人間を単純に英雄として描いていないのが、ストーリーに奥深さをもたらしている。
今作は映像美と壮大なテーマ曲も素晴らしい。これが視聴者をストーリーに引き込む。青空の元に広大な砂漠が広がる。夕焼けに染まったアカバの海に赤く輝く太陽が反射し、浜辺にいるロレンスのシルエットが浮かび上がる。このような映像にテーマ曲が合わさって、ストーリーのスケールを感じさせる。
総合的には素晴らしい映画だと思う。人物描写の奥深さや音楽を効果的に使用したストーリーは、『ライアンの娘』『戦場にかける橋』のデビッド・リーン監督らしさを感じられた。しかしストーリー後半からは長い割にやや散漫な印象。前半の方がロレンスの魅力を感じられるし、アカバ攻略の行軍に焦点が絞られていて面白みを感じた。
二枚舌外交
オスマントルコからの独立を目指すアラブ民族を助けるイギリス人将校の活躍を描く物語。
1962年製作の映画史に残る大作ということもあり、後学の為に鑑賞。
とにかくスケール大きさに驚きます。特にアカバ攻防戦。CGも何もない時代。海辺の街に突入する騎馬隊を、丘の上から俯瞰で撮影したシーンは、爽快で素晴らしいシーンでした。
Wikiにも記載があった砂漠のシーン、海辺での夕日のシーン等も含めて、視覚的に印象に残るシーンが多く、名作の評価は伊達ではない・・・と思わせるものがありました。
物語はトマス・エドワード・ロレンスの自伝小説の映画化。
前半からアカバ攻防戦迄は、豪快で不遜なトマスの行動を爽快に描写。中盤から終盤にかけては、凄惨な殺戮戦や戦線の行き詰まり等が描かれ陰鬱な気持ちにさせられます。
心理描写等に特筆すべき点があるのは事実ですが、207分という長丁場でそれを観せられるのは、正直厳しく感じました。
私的評価は普通にしました。
どうにもモヤモヤ
砂漠の渇きと蜃気楼がロレンスの、またイギリスの迷妄と重なる演出は見事。もうああいった壮大なロケ映画というのは作れないのだろうかと思うと、映画というものへの郷愁もある。
だが、二枚舌が3枚集まって6枚だね、みたいなところもちゃんと描かれているんだが、なんだかモヤモヤするのだ。西部劇的オリエンタリズム(?)を感じるからだろうか。オスマン・トルコはダレにとっても敵であるということが自明であるかのように描かれているからだろうか。
【”アラブ人にアラブの誇りを取り戻させるために。”若きピーター・オトゥール演じる”エル・オレンス”の姿を、故伊丹十三氏のエッセイを絡めて記す。】
◆詳細は、完全版のレビューに記してあります。
■1916年。イギリス陸軍少尉・ロレンス(ピーター・オトゥール)は、オスマントルコ帝国からの独立を目指すアラブ民族の情勢を確かめるため現地へ向かう。
反乱軍の現状を目の当たりにした彼は、アラブの種族をまとめ上げてゲリラ戦を展開。
拠点をめぐる激戦に勝利するまでになるが…。
・ご存じの通り、今作はオリジナ版(207分)と、1995年に公開された227分の完全版がある。私が学生時代に名画座で観たのは、年代的にもオリジナル版である。
ー インター・ミッションて何々??と言いながら、WCに駆け込んだなあ・・。
それにしても、私がコロナ禍以降に劇場で観た「ベン・ハー」「風と共に去りぬ」などは、皆3時間を超える長尺である。ー
インド映画ではないが、1960年代の傑作映画は皆、インターミッションがあったのかなあ・・。更に言えば、今作同様「ベン・ハー」でも、本編がナカナカ始まらない・・。
“放置プレイか!と思ってしまったぞ!”-
・ロレンスを演じた当時30歳のピーター・オトゥールの金髪、碧眼の美しさには、今でも惹かれる。
ー 因みに、ピーター・オトゥール氏はアイルランド人である。この辺りも、是非、伊丹十三氏のエッセイで、お楽しみ願いたいところである。-
<勿論、今作の砂漠の彼方に沈む数々の夕日のシーンや、ロレンスの想いがアラブの部族を越えた民に認められ、彼が”エル・オレンス”と呼ばれ、慕われて行く姿や、彼の理念が大英帝国の思惑に会わずに、彼が失意の中、事故死する冒頭のシーンとの連想性も見事なる作品である。>
狂気の中で変わりゆくもの
制作は今から60年ほど前の1962年。
固定キャメラで延々と捉えた灼熱の砂漠は
天国のように美しく、地獄のように過酷さを映す。
また物静かなイギリス将校のロレンス役の
ピーター・オトゥールの演技は
次第に狂人のようになっていく。
それは国への裏切りなのか
友情への裏切りなのか
自身への裏切りなのか
分かっているのは
静寂と変貌、激震と静寂だけ。
ロレンスとは一体何者だったのか。
答えは無い。無くていい。
そんな風に思っている。
※
Lawrence of Arabia は古さを感じさせない。
モーリス・ジャーナルの雄大な曲が美しい。
スティーブン・スピルバーグは
自身の映画を制作する前に
「この映画を観る」と語っていた。
※
現代につながる中東の政治史
小さい頃にテレビのロードショー番組で放映されていたのをチラッと見たことがあるような気がするが、本編はとても長かった。
画面いっぱいに広がる空と砂漠。地平線上の小さな陽炎が、近づいてくると人。乗り物は駱駝。大量のエキストラ。見ものだった。
そして物語で描かれているのは、アラブ人と一括りにはできない部族対立しやすい事情、イギリス、フランスの中東政策、ファイサル王子の対応、何より、夢見がちなアラビアオタク、ロレンス少佐の成功と挫折で、なるほどなぁ、ととても良い歴史の勉強になった。
列車爆破のシーンは見事
というより、それ以外のシーンがほとんど記憶に残らない文芸作品系の実在した人物の映画化。
ゆったりとしたテンポの、情感溢れるテーマ曲や、主演のピーター・オトゥールの一世一代の名演技。スケール感溢れる映像など、間違いなく映画史に名を残した作品ですが、個人的には何の思い入れもありませんでした。
完全版じゃない編集との、違いや、映像のリファインなどは、オリジナルと見比べたわけではないので、分かりません。
2017.6.3
初めての休憩体験
自分も、40年前に吉祥寺だかの名画座で観た。
映画好きな友人のTくんが、「大長編も観ておかないと」と誘ってくれたんだと思う。
4時間に迫る大大大長編!
映画館で初めて、"上映中の休憩" を体験した。大人になった気がした。素晴らしい映画だったのだが、残念ながら当時の俺では、背景も知らず、半分もわかっていなかったと思う。寝てたし。
これから観る人は、少しだけ時代背景を知って観ると、3倍くらい面白いですよ!
というわけで、レビューにも何もならないが、郷愁を込めて書いておく。
名画座で何でも300〜500円で観られた当時。俺、今、歳いってから映画観られているのは、当時、ちょうど留年して、かつ名画座があったから入り浸れた、ってことが大きかったなあ、とあらためて思う。
T君、あらためて、ありがとう。
ラクダは従順で強し!
評価の高い名画と知り、DVDを入手して視聴しました。1962年、ワタクシが2歳の時の映画で、ここまで壮大に作り上げたことには驚嘆しつつ、いっぽうで英国人のかたくなな紳士ぶりに違和感を覚えたのも事実です。砂漠における主人公は、持久力に優れたラクダであるということですね。
何度見ても最高だね。
今はないシネラマで、リバイバルを見た。
その後10回ぐらい見た。
こんな映画は見たことがない。哲学がふんだんに入ってる。しかも、美しい。もう作れない時代になった。
デビットリーンは映像が美しい。
砂嵐
横長の大スクリーンで観賞。
見終わって、
広大な砂漠を渡り終えたような疲労感があって、
・・・耳から砂が出てきた。
40年前に観たけど
あの砂漠とピーター・オトゥールの目の美しさには吸い込まれたなー
NHKニュースで「ダマスカス」とか「アカバ」とか聞くと、心は一気にあの映画に飛んでいく。
フレグランスの「デューン・プール・オム」はお気に入り。
壮大
ベドウィン族、ハリス族、ハジミ族と部族抗争の激しい地域。果てしなく続く砂漠のどこに境界線があるのかさっぱりわからないというのに、アラブ人はかなり地理に詳しい。アリと再会してからはハイフェットの首領アウダをも味方につけ、トルコ軍の構えるアカバへ向う。
仲間を増やしていっても部族間での争いがある。仲裁するためロレンスがかつて助けた男ガシムを処刑することに・・・かなり苦悩するシーンではあるが、ちょっとスピーディ。
功績が認められ少佐に昇進したロレンスは戦地に戻り、アラブ人からは英雄と崇められトルコ軍との攻防を続けていた。人を殺したことや、自分がアラブが好きなことでアイデンティティに疑問を持ち始め、やがてはアラブ国民会議として独立するまでに至る。後半には“オレンス”と呼ばれていて、なんだか愛着が沸いてきました。
劇場で観ていたら満点つけてたかもしれないけど、テレビじゃストーリーを追ってしまいがち。見たかったなぁ。
●英雄の強さと弱さ。
まさにスペクタクル巨編。広大な砂漠。鉄道爆破。なにしろその尺の長さ。映画界の全盛期を感じる。
さらに、これが史実に基づいた物語だってのがスゴイ。
若さゆえ。敵の敵は味方というが、思ってもなかなか実行できないもんだ。
信念を貫き、自ら道を切り開く一方で、弱さとズルさが見え隠れ。
人間臭くて良い。
そしていい映画はいい音楽が引き立てる。
冒頭のオートバイ事故は、T.E.ロレンス本人の再現なのだね。
史実の実在の人物ロレンス・・
冒頭でロレンスのバイク事故死の場面から始まる。ロレンスは実在したイギリス陸軍将校だ。第一次世界大戦中のサイクス・ピコ協定の成立に尽力した・・当時、アラビア半島で強大だったオスマン帝国を英仏露で解体した史実。不安定な中東問題は現代まで続く。映画ではアラビア半島のヒジャーズ鉄道の爆破などロレンスの作戦を克明に描く。またアラブに溶け込もうとラクダを砂漠で乗りこなした目の青いイギリス人の将校の困難は絶えない。大空の下に広がる広大な砂漠の風景など映像が続く。ロレンスの一生が作品では226分余りの長編となっている。途中に休憩がある(笑)。また「アメリカ映画ベスト100」では5本の指に必ず入る名作・・1962年のイギリス映画。
人生の不思議を思わせる映画。壮大なスケールの人間ドラマでその挫折や...
人生の不思議を思わせる映画。壮大なスケールの人間ドラマでその挫折や苦悩は深く胸打つものがある。アラビアの太陽と砂漠の映像が素晴らしい。3時間の長さを感じない名作映画。
全24件中、1~20件目を表示