劇場公開日 1963年6月8日

「高潔さと勇気」アラバマ物語 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5高潔さと勇気

2013年3月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

難しい

総合:70点
ストーリー: 70
キャスト: 75
演出: 70
ビジュアル: 65
音楽: 65

 今では差別問題を扱うことは当たり前になっているし他にも差別問題を扱った映画はあるが、それでもこの時期に原作が書かれこの映画が作られ当時から評価されていることは意義がある。原作者の子供のころの体験を基に作られた映画であるため、子供の視点から見た社会というのも悪くない。黒人の弁護をするというだけで自分や家族にまで危害が加えられるかもしれないという覚悟を決めて仕事に取り組むグレゴリー・ペック演じるアティカスの高潔さと勇気に感服する。
 だがそのためにあくまでも正義を重んじる白人の立場から見た差別と社会ということになっており、黒人の立場から見た社会や差別というのが描ききれていないことは残念である。黒人は南部で白人に差別される弱くて可哀想な被害者でしかなくて、ここで被害者である黒人のトムの人格も人生も詳しく紹介されることはない。トムの家族とかが黒人の身でありながら白人に危害を加えた容疑をかけられたという理由でそのような目にあったかどうか、あるいはそもそも彼はどんな家族構成なのかすらはっきりと知らされない。黒人差別のことを描きながら、トムのことはちょっと外から見た他人事のような気にさせられる。あくまで主役は黒人を助ける勇気ある高潔な白人なのだ。
 それでも作者の幼き時代の体験からきた物語であるし、そこまで踏み込んだことを描く時代ではなかったのかもしれない。製作された時代を考えれば充分評価できる映画ではある。

 のどかな田舎の雰囲気は良かったので、白黒映像で美しさが削がれているのは残念。60年代ならばそろそろ天然色で撮影して欲しかった。

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Cape God