「クライマックス。ドラマが一気に収束、一堂に会してセッションされていく様は鳥肌が立つ感動」愛と哀しみのボレロ 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
クライマックス。ドラマが一気に収束、一堂に会してセッションされていく様は鳥肌が立つ感動
『男と女』(1966)のクロード・ルルーシュ監督の代表作『愛と哀しみのボレロ』(1981)がデジタルリマスター版に生まれ変わりBunkamura ル・シネマ 渋谷宮下さんにて上映中。
半世紀近くずっと食わず嫌いで「観たふり」をしていた同作品を初鑑賞。
『愛と哀しみのボレロ』(1981)
ポスタービジュアルからずっと男性バレリーナ(バレリーノ)の話と思っていましたが、然に非ず、1930年代から第2次世界大戦で引き裂かれた1940年代、そして1980年代までの50年間をアメリカ(ジャズのビッグバンド)、フランス(キャバレーで知り合うユダヤ人カップル)、ドイツ(ヒトラーに認められるピアニスト)、ロシア(「ボレロ」を課題曲としたオーディションに挑むバレリーナと審査員)のそれぞれ音楽芸術に携わる4家族の2世代、3世代に渡る艱難辛苦のドラマが並行して描かれるグランド・ホテル形式を採用した3時間超えの超大河ドラマ。
例えば、アメリカでは『ゴッドファーザー』で豪放なソニー役を演じたジェームズ・カーンとチャップリンの長女ジェラルディン・チャップリンが最初は夫婦役(親)を演じ、さらに長男、長女役(子ども)の二役も演じるなどかなり混乱。4家族のそれぞれのドラマもドンドン広がっていって、一瞬たりとも気が抜けず、上映中頭はとにかくフル回転。
しかし並行に進んで交わることのなかった4家族のドラマがクライマックスのフランスの赤十字チャリティ公演で一気に収束、一堂に会して、それぞれの家族の音楽芸術の素養(バレエ、クラシック指揮者、歌手)がセッションされていく様は鳥肌が立つ感動でしたね。
フランシス・レイとミシェル・ルグラン両氏合作の音楽も抜群でしたね。
途中はどうなることかと思いましたが、やはり不朽の名作、チャレンジして良かったです。