愛と喝采の日々

劇場公開日:

解説

プリマ・バレリーナとして成功した女性と、結婚してバレエ界を引退した女性2人の対照的な人生を中心に、女の幸福は結婚か、それとも仕事をもった自立した人生を生きることか?と問いかけ、親と子の情愛を盛りこみながら展開される人生ドラマ。製作総指揮はバレリーナとしても知られるノラ・ケイ。監督はノラの夫君で「ファニー・レディ」のハーバート・ロス、オリジナル脚本はアーサー・ローレンツ(サンリオ刊)でロスと共同で製作も兼ねている。撮影はロバート・サーティース、編集はウィリアム・レイノルズ、美術はアルバート・ブレナーが各々担当。なお、バレエ・シーンはアメリカン・バレエ・シアターが全面的に協力している。出演はアン・バンクロフト、シャーリー・マクレーン、ミハイル・バリシニコフ、レスリー・ブラウン、トム・スケリット、マーサ・スコット、アレクサンドラ・ダニロワ、アントワネット・シブリー、スター・デニアス、マーシャル・トンプスン、ユルゲン・シュナイダーなど。

1977年製作/120分/アメリカ
原題または英題:The Turning Point
配給:20世紀フォックス
劇場公開日:1978年4月29日

ストーリー

オクラホマ・シティ。ウェイン・ロジャース(トム・スケリット)と妻のディーディー(シャーリー・マクレーン)との間には長女エミリア(レスリー・ブラウン)、長男イーサン、二女ジャニナがある。この2人は元アメリカン・バレエ団のダンサーであったが、ディーディーがウェインとの恋愛中に妊娠したために正式に結婚し、バレエ団から身を退いたのだった。エミリアは容姿も美しく、父母の血をひき、バレリーナになる才能を充分に具えていた。オクラホマ・シティにアメリカン・バレエ団が2日間の公演を行なうためにやってくることになった。アデレイド(マーサ・スコット)をオーナーとするこのバレエ団の1人エマ(アン・バンクロフト)はディーディーの親友であり、ディーディーがプリマ・バレリーナをやめたのはエマに勧められてエミリアを生んだからであった。エマはディーディーに代って舞台でアンナ・カレーニナの役をやり、プリマ・バレリーナの地位にのぼることができたのだった。ロジャース一家は、この公演をこぞって見に行き、ディーディーは久方ぶりのエマの舞台姿に感激するが、内心には複雑な思いが交錯していた。エミリアがエマに勧められ、ニューヨークに滞在するアメリカン・バレエ団に入ったのはそれから間もなくであった。夏のシーズンを控え、エミリアは「ジゼル」で初舞台を踏むことになった。そして団員の1人で、ソ連生まれのユリを知り、愛するようになるが、キャロリンというバレリーナといい仲になったということを知り、失望する。エマはそんなエミリアをやさしく慰め、だんだんと2人の仲は深まっていく。やがてバレエ団が4年毎に行なうギャラ公演の日が近づく。エマはこれに出演するエミリアに衣裳を贈るが、このことでエミリアとディーディーの間に微妙な亀裂ができてしまう。ディーディーはエミリアをエマにとられたくない気持でいっぱいだったのだ。そして、第25回ギャラ公演でエマは「アンナ・カレーニナ」に、エミリアは「ボーテックス」に出演し喝采を浴びた。公演が終り、ホテルのバーでディーディーがエマに会った時、2人が互いに抱いていたライバル意識があからさまに爆発する。ディーディーは、エマが20年前、自分とウェインを結びつけることにより「アンナ・カレーニナ」に出演できたのだと言い、それに対してエマは自分の方がまさっていたからだと答え、ついには、ハンドバッグでの殴り合いがはじまるが、それもやがては笑いに代わる。一方、エミリアは念願のユリとの共演が大成功に終り、ユリも気持もとりもどし、プリマ・バレリーナとなる第一歩を踏み出すのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第2回 日本アカデミー賞(1979年)

ノミネート

外国作品賞  

第35回 ゴールデングローブ賞(1978年)

受賞

最優秀作品賞(ドラマ)  
最優秀監督賞 ハーバート・ロス

ノミネート

最優秀主演女優賞(ドラマ) アン・バンクロフト
最優秀助演男優賞 ミハイル・バリシニコフ
最優秀助演女優賞 レスリー・ブラウン
最優秀脚本賞 アーサー・ローレンツ
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映画レビュー

3.5女性の人生の選択を真摯に見詰めた美しいバレエ映画

2022年6月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

奇麗に纏った作品で、見所もバレエシーンとシャーリー・マクレーン、アン・バンクロフトの二大女優共演の魅力十分の女性映画である。原題の『The Turning Point』とは分岐点の意味だが、ここでは中年を迎えた二人の過去の選択を振り返ることから、もう一度人生を見なおし、前向きに生きて行く未来を見据えている。マクレーンはプリマ・バレリーナの華やかな職を辞めて結婚し、三人の子供に恵まれ幸せな家庭生活を送ってきたが、バレエを途中で諦めたことには今でも後悔の念がある。片やバンクロフトはバレエ人生を続け名声を得たが、肉体的には若い頃のダンスは出来なくなっている。仕事が結婚かの選択に迫られる女性の対照的な生き方の、そのどちらにも満足の行く答えはない。仕事人間で家庭を蔑ろにしても世間体では評価される男性には理解できない、女性だけの苦悩である。その二人の友情がお互いの嫉妬と羨望により、ぶつかるところがある。マクレーンの娘レスリー・ブラウンがバレエ公演で成功を収め喝采を浴びたあと、ホテルの屋上でマクレーンとバンクロフトが取っ組み合いの喧嘩をする。このシーンに女性たちが抱えた悩みや痛みが集約されていた。そして、若い世代へのメッセージとして、後悔のない人生などない、けれど納得できる人生を送るために悩み苦しむことは、人生の敵ではないことを教えてくれている。

ハーバート・ロス監督はバレエ出身の異色の監督であり、その演出は丁寧で正攻法である。ただし、人物のカットになると、アングルの単調さと均一的な配分が時に平坦な印象を与える。二人の衝突シーン以外にもドラマティックな演出を見せても良かったのではないかと思った。ロバート・サーティズの撮影は全体的に奇麗で、特にバレエシーンは素晴らしい。シャーリー・マクレーンは久し振りのカムバックで適役のいい演技を見せてくれ、バンクロフトは最適の役ではないが演技力でカバーしている。新人ブラウンは細い体で綺麗なダンスを披露するが、演技力に物足りなさを残す。ロシア人ダンサー、ミハイル・バリシニコフは身長は高くないが跳躍力が素晴らしく、流石にバレエは見事に尽きる。バレエを通して、女性の生き方を真摯に描いた正直な映画だった。

  1978年  10月25日  飯田橋佳作座

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Gustav

5.0圧倒的な感動に包まれて号泣しそうになりました

2022年3月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1977年の「愛と喝采の日々」と1983年の「愛と追憶の日々」
邦題が似ているし、どちらもシャーリー・マクレーンが主演なので混同されがちです
そして本作の方が忘れ去られがちの作品になってしまっています
でも本作は誰がなんと言おうと名作です!

アカデミー賞に10部門もノミネートされました
でも結局その年は「アニー・ホール」が圧倒的に強くて結局無冠でした
けれども本当なら何部門も受賞しておかしくない作品です

前半こそ、少し退屈するかも知れません
でも後半になるとその前半の伏線がどんどん活きはじめて終盤は圧巻の展開となります

特にパーカウンターでの口喧嘩から、表にでてパタパタと二人で叩きあって、大人の女二人の本音をぶつけあい、しまいには笑い合うシーンは名シーンとして、あなたの心に長く残るものになると思います

確かにバレイの映画です
でもそれだけがテーマではありません

女性の一生、人生の分かれ道、女どうしの友情、女としての自分、母としての自分、娘の大人への成長、母と娘の心情のすれ違い、夫婦の絆
そういったことが普遍的な物語となっているのです
だから胸を打つのだと思います

現代では仕事に真剣に打ち込んでいる女性は普通のことですですから、この物語はより多くの人の心に刺さるものになっていると思います

シャーリー・マクレーン 43歳
「アパートの鍵貸します」は26歳の時の出世作
それから17年ですから、劇中の彼女がプリマだった頃からの時間と同じくらいです

アン・バンクロフト 46歳
「ノックは無用」は21歳の時のデビュー作
シャーリー・マクレーンより年上なのに彼女の体型や美貌は、バレイの現役スターとしての説得力が十二分にある輝きです
しかし、中盤ともなると年齢相応の衰えもまた説得力があります
潮時を知り現役を去れと宣告され、そしてまた長年の金持ちのの後援者の初老の男との不倫も終わってしまうのです
懸命に働き続けてトップランナーでいたのに、一体自分には何が残ってるいるのか?と虚しさを味わう様は残酷です

劇中では田舎の地方都市でバレイ教室をしていても、3人もの母となりもう体型が崩れてしまって中年女性となったシャーリー・マクレーンとの対比が効いています

もちろんバレイシーンも、公演シーンや練習シーンまでどれも圧巻です
素人目でも物凄いものだと一目でわかります
肉体の芸術だと納得です
男前で女たらしのユーリ役はミハイル・バリシニコフという世界的な名ダンサーだそうです

娘のエミリア役のレスリー・ブラウンの美しさは特筆もの
透き通るような白い肌とはこのこと
幼少期からバレイの鍛錬をしてきた女性特有の細い均整のとれた骨格
大きな突き刺すような青い目
じっと見つめていたい磁力を発しています

記念公演で大成功をおさめ、なんどもカーテンコールに応える彼女

それを見守る彼女の母とその元ライバルにして一番の親友の女二人
自分たちの時代から、新しい世代へのバトンは受け渡され、新しいスターが誕生したのです

すべてが終わり客席もはけて、真っ暗なステージでその二人は真の友情を噛み締めて肩を抱き合うのです

原題はターニングポイント、人生の分かれ道
どちらが正解とはわからない
どちらが勝ったとも負けたとも言えない
それぞれの道を一生懸命に生きてきた
二人には友情だけが残り、次世代へのバトンが渡せたのです

ディーディーには、今はまだ野球に夢中な男の子も、こましゃくれた次女もいます
きっとこの子どもたちも期待に応えて育って行くに違いないのです

圧倒的な感動に包まれて号泣しそうになりました

名作です!

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あき240

3.5ミハイル・バリシニコフのバレエ

2019年8月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波

萌える

アメリカに住む叔母から「大好きな映画」と勧められていた。やっと観る機会を得た。

叔母と感想を言い合いたいけれど、今年アメリカの老人ホームに入所し、もう意思の疎通はできなくなってしまった。残念です。

ストーリーはともかく、ミハイル・バリシニコフのバレエをふんだんに観ることが出来て幸せ!

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共感した! 3件)
r_cacco

4.0今の時代では笑い話のようだが、当時は女性にとって「結婚を取るべきか...

2019年6月2日
Androidアプリから投稿

今の時代では笑い話のようだが、当時は女性にとって「結婚を取るべきかキャリアを取るべきか」をテーマとしたこのような映画が作られる時代であったのだ。

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もーさん