エドワード・サイード OUT OF PLACE

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エドワード・サイード OUT OF PLACE

解説

「阿賀に生きる」「まひるのほし」など数々の傑作を生みながらも2007年に49歳で急逝したドキュメンタリー作家・佐藤真が、パレスチナの窮状と真実を世界に伝え続けた知識人エドワード・サイードの意志と記憶をたどったドキュメンタリー。

2003年9月、パレスチナ出身の世界的知識人エドワード・サイードが白血病でこの世を去った。ポストコロニアル研究の第一人者であるサイードは、パレスチナの窮状を全世界に伝え、権力に対して真実を語り続けた。

中東諸国を巡って彼の不在を見つめ、イスラエルとアラブ双方の知識人たちの証言を交えながら、サイードが求め続けた和解と共生の地平を探る。2024年5月24日より開催の特集上映企画「暮らしの思想 佐藤真 RETROSPECTIVE」にて4Kレストア版を上映。

2005年製作/137分/日本
配給:ALFAZBET、パラブラ
劇場公開日:2024年5月24日

その他の公開日:2006年5月16日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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(C)2005 シグロ

映画レビュー

現在のガザを照射する

2024年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 エルサレム生れのアメリカ人思想家で、コロンビア大学で長年教鞭を取り、パレスチナ問題にも積極的に発言を続けたサイードの半生を辿るドキュメンタリーです。佐藤監督が中東問題までも撮っていた事は今回初めて知りました。サイードが主張するのは、パレスチナを孤立させ関心を逸らそうとする西欧の欺瞞であり、事態は何十年も前から現在まで何も変わっていないのだと改めて感じます。

 ただ、イスラエル人まで含めた多くの声を集めたせいか、映画の方向性と言うか深みが曖昧になったとも感じました。「中東問題は複雑過ぎて訳が分からない」と諦め気味の僕は、何かしっかりした指針が欲しいのです。でも、その曖昧さこそが混迷せる問題の反映であり、「それはあなたの頭で考えろ」と言うメッセージなのでしょう。そこで、まずは勉強をと彼の著書を読み始めた。ますます頭が混迷しそうです。

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La Strada

3.0Gazaの惨状を嘆く方に

2024年6月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

多くの著名な専門家へのインタビューが出てきますが、わずかな時間かつ安易な質問に落胆しました。例えばイスラエルのパぺに数十秒はないでしょう。別の取材テープを借りたのか、質問の準備が不十分だったのだろうか。
「シオニズム=植民地主義」を、政治的に批判し解きほぐす試みが垣間見られたのが良かった。
「アイデンティテーは自分で選びとるもの」、安住の地を求めるのではなく「境界に身を置く」決意に、強い印象を受けました。
イスラエル在住のパレスチナの老人の言葉「恨んでなんかいない、仲良く生きるしかない」が参考になりました。ハマスの冒険主義への痛烈な批判でしょう。
19年前の作品とは言え、Gazaの惨状、イスラエルの極悪非道を嘆く方にはお勧めしたいとおもいます。
しかし、19年前と同じ構図で、より悪化した現状を嘆かずにはいられません。

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QuantumGR

5.0自分の場所を決めて安住する思いは持ち過ぎない位がちょうどいい

2024年6月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

サイードは、ほぼ積ん読だった『オリエンタリズム』の著者でもあるからずっと気になっていた。未だ積ん読なのでせめて映画を見ようと思った。

ドキュメンタリーにはある時期から用心深くなっているが、この作品は大丈夫だった。今の世界状況に胸が苦しくなり、これまでのアラブ人=パレスチナ人、ユダヤ人に関しての自分の無知を恥じた。それでも希望を貰えた気持ちになった。サイードが生前、いかに身の危険にさらされながら語り執筆し行動してきたか。チョムスキー自身ですらそうなのに、自分とは話にならないほどだったとのチョムスキーの言葉に胸が痛んだ。

批判されつつ自分の立ち位置を「喪失礼讃」にして命を懸けた(もっともっと長生きしたかったろう)サイードを知った。ポスト・コロニアル研究の先駆者、自分と世界を織り込みながら思考を続けた論者であり学者であり学生を育てた教授、エルサレムで生まれ父の仕事の関係でエジプトのカイロでも暮らしたキリスト教徒であるパレスチナ人。アメリカのコロンビア大学で長く教鞭をとっていたサイードは、妻の出身でもあるレバノンを愛しレバノン料理を愛した。サイードの墓はレバノンにある。

ユダヤ人指揮者のバレンボイムと共に、イスラエルとパレスチナの若き才能ある演奏者が共にクラシック音楽を奏でるウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団を作った。このオーケストラの名称は、18世紀から19世紀にかけてありとあらゆる知的活動をおこなった作家ゲーテの晩年の詩集『西東詩集』から。映画「クレッシェンド」を思い出す。

あれかこれかでなく、あれもこれも可能な世界を作れないだろうか?あるいは別の解決策を見つけることは?あるべき所からあえて外れ、自分はこうだ、と決めつけない。他者との交渉無くして誰も生きていけない。対話をやめない。あえてさまよい続ける生き方を選ぶ。人種、民族、宗教、言語で私達を分離・分断しないで欲しい。ユダヤ人もアラブ人=パレスチナ人も、みんな仲良く同じ町で暮らしていた。

映画を見終わって泣けて仕方なかった。「やっぱり○○が一番」(○○は日本、我が家など色々・・・)とどうしても言えない自分でいい。どこかに所属してる感(帰属意識)が乏しい自分でいい。根っこがない感じでいい。サイードは学生に厳しかったようだから私がもし学生だったら一瞥もされなかったろう。でもそういう先生に会えたことを宝物にする学生もいる。

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talisman