劇場公開日 2006年3月11日

「一度は入って観たくなる食堂の映画」かもめ食堂 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0一度は入って観たくなる食堂の映画

2012年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

幸せ

港町ヘルシンキ ロケ地のフィンランドの美しい事!白夜の国は訪れたことがないけれど、
物語の主人公サチエが日本から遠いこの北欧の地で、食堂を営むと言う理由がハッキリとは描かれてはいないけれど、「ううん~」この街なら惹きつけられるかもしれないと彼女の食堂開店物語に、スローテンポで引き込まれて行く感じがした。このユルユル感がとっても心地良いのだ。
海外で女性が一人でお店を開店する自己資金は?商売を始める認可はどうやったの?などなどの法律の話しなど、現実的な事はこの際脇へ置く事にして、海外の何処かの国で、日本食が、特に未だ馴染みの少ないところで、その国の人に少しずつ食べてもらえて、食を通じて日本文化に触れてもらえて、お互いの国について少しずつ理解してもらう事が可能なら、こんなに素晴らしい文化交流はないだろうか?
「食堂、レストランじゃなくって、もっと気軽で、」と言うサチエの心が観客にも伝わって来る気がした。
何でこんな不思議な映画を撮ろうと荻上監督が考え付いたのかは解らないけれど、映画も自国の文化を他国の人達に伝えるには、食同様にとっても、身近で理解するには、最も適したツールの一つであるのは確かなことだ。そこに何か共通点を監督が見出したのかもしれない。
ヘルシンキに実際この「かもめ食堂」のモデルの店が存在しているかどうかは解らないけれども、海外で開店している日本食レストランにも、それぞれの物語がきっとあるのだろうと思うと、海外で和食も食べてみたくなるし、日本は世界中のグルメ食が楽しめる国と言われているけれど、本当に沢山の外国料理のレストランが存在している。勿論本場の食材や、味付けとも異なっている事もあるだろうが、それらも異文化の入口と考えるとまた違った新たな一面が見えて来る気がする。
映画の中で登場する、おにぎりも、トナカイ肉を使ったもの、ザリガニ、ニシンのおにぎりを作ってみようと試してみるのだが、結局、おにぎりは梅、鮭、おかかの3種で落ち着いた。そこで思い付いたのが、シナモンロールを焼くと言うものだった。何かここにヒントがあるような気がした。人間関係など新しく出会う人と関わる時には、まず相手を先に受け入れること、そーしてから、ソウルフードであるおにぎりと言う自分の大切な部分を理解してもらうようにして、これは決して譲らないと言うポイントも大切に持ち続ける事も忘れてはならないって、教えてくれた気がする。
どこの国でも、人々の気持ちの基本の喜怒哀楽は変わらないこと、そして美味しい食を誰かとテーブルを囲んで頂くことは、幸せの基本なのかもしれない。改めて日々の、ごはんって凄いって納得しましたよ。おふくろの味、父の作る味、ばあちゃんの味、誰が、作っても誰か自分の大切な人に、食べて貰いたいと願って作られる、家庭料理は素朴で、愛情が一杯詰まっているんだね。きっと家族はその、愛情を食べているのかもしれないな。
たとえ一人暮らしの人でも、自分で楽しんで何か一品でも料理すると、きっと心が癒やされるかもしれない。恐いけどザリガニ、トナカイ、ニシンのおにぎり食べてみたいものだ。

ryuu topiann