あゝ予科練

劇場公開日:1968年6月1日

解説

「あゝ同期の桜」の須崎勝弥がシナリオを執筆し、「旅路(1967)」の村山新治が監督した東映戦記シリーズの第三弾。撮影は「夜の手配師」の仲沢半次郎が当った。

1968年製作/110分/日本
原題または英題:The Young Eagles of the Kamikaze
配給:東映
劇場公開日:1968年6月1日

あらすじ

昭和十八年春、日本海軍は米軍物量作戦の前に苦戦をしていた。そんな折、土浦海軍航空隊では、七つボタンに身を固めた健気な新入隊員が、厳しい日夜の規律と訓練に入っていた。和久一郎庄司、藤井、秋山、村田、並木は十一分隊一班に配属され、早速宮本上曹の精神注入捧の雨を浴び、全員ちぢみ上ってしまった。数日後、歴戦の勇士桂大尉が十一分隊に着任。体育に学業に、さらに厳しい練磨の日が続いた。そんな中で、最初の落伍者が出た。小心な並木が自らの命を絶ったのだ。折しも戦局は緊迫の度を加え、幕僚の松本少佐から訓練のすべてを短縮するとの命令が出された。隊員が指折り教える外出許可の日が来た。ところが、和久の許に届いた学友川崎素子の手紙が宮本に見つかり、総員外出禁止。和久は皆から責められたが、児玉分隊士の行なった高度な通信テストを、キャッチし再び外出許可が出た。しかし、藤井が姉の美恵子に、庄司が母菊江に再会している時、和久は兵舎に残され、出征の日を一人寂しく回想していた。そんな和久が鉄条網越しに弟妹たちと再会できたのは桂の温情からだった。やがて、一班から秋山が脱落し、隊員から尊敬されている桂大尉は南方の戦線へ発った。明けて十九年。ますます戦況は悪化。出陣を前に最後の休暇が訪れた。藤井は姉の美恵子と奈良薬師寺にいこい、和久家では素子と共に和久と庄司を迎え和気藹々の団らん。夜が明けると、零戦十五機が編隊を組んで、桂の待つフィリピンに向って飛びたった。桂の援護銃撃に守られて和久らは、無事初陣突破に成功した。やがて基地上空を飛行中の藤井がP38に急襲された。美恵子に遺骨を届けたのは桂だった。そして藤井の最後の手紙には、桂大尉が美恵子の結婚相手として理想的だと、書かれていた。一方和久は、肉親のすべてを失ったが悲嘆に暮れる間もなく、庄司、村田の三人と九州鹿屋基地に転属された。侍攻出撃の日が遂に来た。爆音を轟かせて目標の沖縄北方に向う桂の手には、美恵子から送られた月光菩薩像が握られていた。南へ去る十六機。それを追うかのように、海辺を駈ける美恵子と素子の姿があった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5 逆説的に本作は反戦映画になっていると言えるのかも知れません

2025年9月1日
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鑑賞方法:VOD

あゝ予科練
1968年6月1日公開

東映の60年代戦記映画三部作の第3作です

第1作が大ヒットしたので第2作が製作され半年後に公開されたのですが配給成績は第1作の9割程度に終わりました
第1作の公開は年間で一番客入りの低調な6月の始めにたいして、第2作は正月第二弾であったのにこの成績では見劣りがします
とは言えそこそこの成績ですからもう1作と言うことかと思います
第2作は人間魚雷回天というちょっと地味な題材だったとの反省があったのか、第1作の戦闘機による特攻隊の映画に回帰します
また、第2作には、第1作の主題歌「同期の桜」のようなものが無かったので、ここも改善点として主題歌「若鷲の歌」を冒頭から入れています
この歌は、もともとは戦時中の戦意高揚映画「決戦の大空へ」の主題歌として作られたもので、戦時中に大ヒットしたものを、西郷輝彦の歌唱で新たにしたものです

予科練とは、映画の冒頭で説明されるとおり、海軍飛行予科練習生のことです
海軍の航空機搭乗員養成のため、設置された教育機関を指します
入隊年齢は、ほぼ今の高校生と同じくらい
選抜試験は非常に厳しく、合格倍率は70倍を超えることもあったそうですから、今の超難関進学校以上だったでしょう
しかも、体力も目も良くないとなりません
日本全国各地の最優秀な青年が集まったものと思われます

しかし、戦争は激烈で大変な消耗戦となり、いくらパイロットを養成しても足らない状況でした
そのような将来の日本を背負って立つような最優秀な青年達を次から次に失い、大戦末期の本作が描く1944年の秋頃には、折角養成した搭乗員を特攻隊にして、たった一度の出撃で死なせてすり潰すしか無くなってしまいます
そのことの異常さは鶴田浩二の演じる桂分隊長自身が一番分かっていて、部下を特攻にだすことを拒否するほどです
しかし上層部に押し切られてしまうのです

鶴田浩二は昭和20年代最大のアイドルで任侠映画のスターとなるのは、そのもっとあとのこと
彼は戦時中、学徒出陣で海軍飛行予備学生となった人で、まかり間違えば特攻隊員となっていた人でしただけに説得力のあるシーンとなっています

前半は予科練の度を越した激しいスパルタ教育がこれでもかと描かれます
遂に自殺者も出すほどです

今の世の中では絶対に許されないことです
厳しく指導することが戦場で生き残る為にしてやれる最上のことなのかも知れません
それでも行き過ぎです
戦う前に自殺させてしまうなんて本末転倒です
今の時代ならば一人どころか何十人も自殺者をだすことでしょう
特攻隊以前にすでに、この段階で異常なのです
これを異常と思えない時点で日本は戦争に負けていたのだと思います

本作には第1作の「ああ同期の桜」にあった戦後生まれの子供達に、戦争中の同じ年代の青年達はこの様に苦しんだのだと伝えようとした反戦のメッセージは本作からは少しも感じられません
ひたすら、気持ち悪いアナクロさに耐えなければならないのです
鶴田浩二が演じる桂大尉と
藤純子の演じる藤井の姉美恵子との淡いロマンス、薬師寺の月光菩薩ととても似ているというエピソードだけが救いです

それだからこそ、逆に本作を観てこんな時代を二度と繰り返してはならないと強く感じることでしょう
果たして、団塊世代の人達にその思いは強く刷り込まれたと思います
その意味では逆説的に本作は反戦映画になっていると言えるのかも知れません

その反面、戦争を考えることすら嫌だという風潮が団塊世代に強く成りすぎて、60年も経過して21世紀になり、日本をめぐる安全保障環境が様変わりしているのに、いまだに、日本が戦争できない国でいるだけで、それだけで戦争は無いという底の浅い考えに凝り固まらせた原因になったのかもしれません
私達はウクライナ戦争で、勝手に戦争をふっかけられることもあることを知ってしまったにも関わらず

蛇足
2025年の夏の高校野球
本作の予科練の生徒達と同じ年齢の高校生が甲子園で熱戦を繰り広げました
ある強豪校が一回戦を勝ったにもかかわらず二回戦以降を出場辞退するという異常事態が起こりました
まさに、本作のような暴力事件が野球部寮で起きたことが世の中に波紋を広げたことによるものだそうです
自分は、この予科練の異常を異常と思わない体質が戦後80年を経っても未だに残っていたとおもいました
こういう体質が戦争への道を作るのだとも思いました

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あき240

3.0 予科練の〜

2025年7月6日
iPhoneアプリから投稿

これはどういう気持ちでみたらいいのだろう。68年にしては古くさくないか。
60年代、こういう映画をみて、この人たちの分も真面目に生きなきゃなあと思って働いたことが高度経済成長期の日本を支えたのかもしれない。整備士になった秋山が心を込めて整備したように。

藤純子がきれい。春川ますみかわいい。

主役の鶴田浩二の出番は少ない。

予科練の歌は覚えた。

室田日出男が活躍。

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hyvaayota26

2.0 海軍航空隊予科

2020年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

昭和18年の海軍航空隊予科にやって来た若者たちはそれぞれの思いを抱えていた。
彼らは戦局の悪化とともに特攻への道へと進むことになる。
主演の鶴田浩二は存在感が薄く、藤純子の美しさと大原麗子の可愛さが際立っていた。

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いやよセブン