さらば夏の光

劇場公開日:

さらば夏の光

解説

山田正弘、長谷川竜生、吉田喜重が共同でシナリオの執筆にあたり、「樹氷のよろめき」を監督した吉田喜重が、ヨーロッパの自然を背景に、行きずりの男と人妻との恋を描いたもの。撮影は「初恋・地獄篇」の奥村祐治が担当したものでヨーロッパ各地にロケした日本航空との提携作品。

1968年製作/96分/日本
配給:ATG
劇場公開日:1968年12月31日

ストーリー

一九六八年の初夏。川村信は、明るい太陽の下、花の咲き乱れるリスボンの広場を歩いていた。学生の頃、長崎の博物館でみた寺院の写生図が、彼をヨーロッパの寺院に誘ったのだ。彼はこの地で、工芸品のバイヤー鳥羽直子とめぐり会った。直子は、ビジネスのかたわらに、寺院の案内をかって出た。スペインの街角で、二人は、厳しく口論しながら通抜けていった男女に会った。それは、姦通した妻を刺した男と義妹の争いだった。その争いを見ながら、「妻の不貞を許せない、真実は神が知っている」との男の叫びを、川村に伝える直子の表情は硬ばっていた。直子は米国籍の夫とパリで暮していた。母と弟を失った直子にとっての長崎は、終戦の夏と共になくなってしまったのだ。そう告白すると直子は、川村から離れていった。川村は、シャンゼリゼのカフェで、夫と話している直子と再びあった。家に招かれ、ロアール河畔の離宮に案内された。川村は、直子の義妹メアリに「姉さんを愛して上げて下さい」と言われ驚くのだった。やがて、川村は、直子に誘われてノルマンディに旅をした。岬にそびえたつ教会は、直子にとっては想い出の場所でもあった。直子は、夫と結婚した時訪れた所で、川村と別れようと思っていた。だが、その告白は川村のうでの中で呟きとなり、夜のとばりが教会の姿をかき消してしまった。ストックホルムを訪れた時、川村と直子は激しく燃え上がった。「ぼくが探求していた寺院は、あなただった。あなたの心の中にこそ、僕のさがしていた、愛があったのです」という川村の言葉は、愛の飾りではなかった。日本を発って、どれだけの時間がすぎたろう。そんな思いがよぎる。翌朝、直子は川村を残し、だまって去って行った。しかし、川村には淡い期待があった。直子が夫と別れると言っていたからだった。直子は離婚した。ローマにいるという直子を川村は追った。だが、直子を自分の心につなぎとめておく、何ものもないことを川村は知るのだった。そして、西に傾いた太陽が、トラヤヌス神殿の廃虚に佇む二人の姿を照らしていた。

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映画レビュー

1.0オープニングでは、まさに『さらば夏の光』だったのだが…

2023年7月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

1時間36分。いつもなら丁度いい頃合いの上映時間のはずなのだが… やけに長く感じた。 ヨーロッパの光と風景の中、あの鮮烈な構図のカメラワークが、どのように発揮されるのか?と期待していたのだが… オープニングは、相変わらずカッコよく、まさに『さらば夏の光』を予感。 しかし、その後、本編で前衛性などは殆ど見られず… カテドラルを探す旅だというのに、美しく装飾された聖堂建築も殆ど見られず… 割と凡庸なメロドラマが展開していた… そもそも探しているカテドラルが、地味すぎ。 脚本の上では、それなりの理由はあるが、観ているコチラ側は「そんなん、知らんがな」といった台詞が一瞬あるだけ。 やはり「何故そこまで惹かれるのか?」という提示がなければ、旅それ自体の必然性も薄れ、脆弱なフィクションへ陥ってしまう。 というか、あのゴージャスな岡田茉莉子と地味なカテドラル(を探している意図と目的)を、結果リンクさせるには無理があり、破綻してる事に気付かない訳も無いだろ?と思うのだが。 岡田茉莉子の夫役の愛に関する台詞は、如何にも吉田喜重らしく面白かったが…(愛は本来、神によるもの。人間の愛はそのコピー。つまりイミテーションだから長持ちできる。とか…) しかし、哲学的で観念的な台詞も随分と鳴りを潜めていた。 当時としては、日の丸を代表する大企業「日本航空」のPR的な映画だったこともあり、色々と忖度したか。 あるいは、日本航空から「あまり前衛的なのは、ちょっと…」と釘を刺されていたか。 ありふれたモン・サン=ミシェルも先方からのリクエストだったかもしれない。 そもそも、その日本航空から出費された製作費も限られていたらしいから、たぶんロケハンにも充分な時間はかけられず、本来の計算し尽くされた鋭利なカメラワークも難しかったのかもしれない。 岡田茉莉子じゃなかったら、だいぶキツかったと思う。 相手役の俳優もイマイチだったし。 せめてもの淡い期待として、海外ロケならではの解放感で、岡田茉莉子のフルヌードが見れるかな?なんて思ってもみたが… 全然、甘かった… 珍しく髪を下ろした腰まで伸びたロングヘアは、ちょっと良かったけどね。

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osmt

1.5ATGのやなとこ全部盛り映画

2022年5月14日
iPhoneアプリから投稿

ポーランドの美しい風景がさまざまな画角から切り取られている。しかしそれは絵はがきのようなものでしかない。綺麗な夕陽です、煉瓦の街を走る電車です、憂愁を湛えた砂浜です、終わり。しかもそのほとんどがうんざりするような長回しで撮られているのだから退屈で仕方ない。そしてその緩慢な映像の上を、登場人物たちのモノローグが冷たい風のように通り過ぎていく。映像と言葉はほとんど干渉し合わない。まるでカラオケの背景映像と歌詞のようだ。物語それ自体もあんまりパッとしない浮気話だったし、そういやATGってこういうハズレ枠もいっぱいあるよな…と再認させられた。

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因果

2.5吉田喜重作品にしてはつまらない。なので、吉田喜重作品の特徴を書くことにする。

2014年9月16日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

難しい

この作品は、一方的に女を愛する男が、女を追い求め、ヨーロッパを転々とする物語である。 だが、いつもの吉田喜重の切れ味はなく、絵もいつもの吉田らしいシュールさに欠けている。 なので、ブログ原案として、今まで観た吉田喜重作品の特徴を書くとする。 ・ヨーロッパ的雰囲気を醸し出した黒いサングラスの登場人物 ・あえて群衆を排し静けさを漂わせた登場人物のカット ・知的なモノローグ ・どこか映画全体からヨーロッパ映画を思わせる雰囲気 ・物静かで素敵でシュールな音楽 ・男が一方的に女を求め、対する岡田茉莉子が知的な対応を見せる。 今のところ、思いつくのは、こんなところでしょうか^^

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トグサ

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