またの日の知華

劇場公開日:

解説

激動の70年代を背景に、ヒロイン知華と4人の男とたちとの愛を描いた物語。ドキュメンタリー映画の鬼才・原一男が、4人の女優がひとりのヒロインを演じるという試みに挑戦する。監督にとって初めての劇映画という点でも注目を集めた。ヒロイン・知華を演じるのは、「皆月」の吉本多香美、「M/OTHER」の渡辺真起子、金久美子、桃井かおり。相手役は、田中実、田辺誠一、夏八木勲ら。

2004年製作/114分/日本
配給:ユーロスペース
劇場公開日:2005年1月15日

ストーリー

「第一章 知華と良雄」元機動隊員の良雄(田中実)は、60年安保闘争時に身も心も傷付いていた。そんな良雄にとって従妹の知華(吉本多香美)は、いつも眩しい存在だった。知華は、自分が母の不義の子であることから、自分と良雄は実の兄弟ではないかという幻想にとらわれていた。大会中の事故がもとで体操選手となる夢を断念し、中学校の体育教師となった知華と、良雄は結婚する。東京での新生活が始まり、1969年1月、全共闘運動で揺れる東京で、知華は純一を出産する。教師として、母として、妻として、懸命に生きようとする知華。そんな矢先、良雄が結核と診断され、入院を余儀なくされる。「第二章 知華と和也」良雄が療養所に入院中、郷里の母校に勤めるようになった知華(渡辺真起子)に、新任体育教師、和也(田辺誠一)が接近してくる。和也の亡父は少女時代の知華の後援者であり、父の遺した8ミリフィルムに映る知華の映像に、和也は焦がれつづけていた。和也に求められ、知華は夫の留守に耐える妻の殻を脱ぎ捨てて、性の悦びに浸る。1972年正月、自宅療養を許された良雄が帰ってくる。和也との仲が噂になり、退職届を出した日の夜、知華は嫉妬に駆られた和也に呼び出され、モーテルへ行く。良雄は無言で送り出し、テレビを点ける。連合赤軍あさま山荘事件が映し出されていた。「第三章 知華と幸次」知華の教え子、幸次(小谷嘉一)は、姉の率いるアナーキーなゲリラグループに属していた。アジトが内ゲバで襲われた夜、幸次は知華(金久美子)と再会する。かつて、生意気な転校生だった幸次を、暴力的な男性教師からかばったのも知華だった。教職を辞した後、知華は借金取りに追われるように単身で上京していた。レズビアンの姉に複雑な思いを抱きつつ、知華を慕うようになる幸次。和也から手切金を受け取った知華は、アジトを襲撃されて行き場のなくなった幸次を連れて、豊川に住む幸次の祖母の元に身を寄せる。1974年8月、手筒花火の大役をやり遂げた幸次は、東京丸の内での過激派による爆破事件に衝撃を受ける。その夜、知華と幸次は結ばれる。しかし、ふたりで南の島に旅立とうとしたとき、姉が迎えにくる。「第三章 知華と瀬川」流れ者の瀬川は、場末のスタンドバーでの売春の客として、知華(桃井かおり)と出会う。女を刺した前科をもつ瀬川と、知華は深い仲になってゆく。その一方で、和也との生活も続いていた。小学生になった純一が新潟から訪ねてくる度に、知華はどちらかの男性と束の間の親子の時を過ごした。瀬川は、自分が預けていた金を使い込んでしまった知華を、遠い旅に誘う。たどり着いたのは、瀬川の故郷・飛鳥。瀬川が朽ち果てた生家を訪れている間に、知華は純一に電話をかけ、「いっしょに暮らそう」と言う。しかし、電話の向こうからは、つれない返事が返ってくる。岸壁の上で瀬川とたわむれる知華。海には、真っ赤な夕焼けが燃え落ちる。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0主人公の谷口知華を4人の女優が演ずるという4章立ての映画

2020年10月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 事件など時代を象徴する重大ニュースの映像が所々映し出される。『ゆきゆきて、神軍』や『全身小説家』などのドキュメンタリー映画の鬼才原一男監督初の劇映画です。監督が60年代に青春時代を過ごしたことを考慮に入れると、彼自身が全共闘に参加できなかったとか、ノンポリの傍観者的立場であったことも想像できるくらいに、70年代を回顧し憧憬を抱いていると感じました。  男が変われば女性の印象も変わるといった手法らしいのですが、見終わってしばらくすると違和感がまったくなくなります。新婚・教師時代、不倫した時代、過激派に加わったかつての生徒との再会、前科者の男にのめり込んだ時代と、一挙に転落していく波乱万丈人生。そして、平和を目指した全共闘から過激派へと変貌を遂げた若者とがオーバーラップし、4つのストーリーが見事に絡み合っていった。  田辺誠一が2、3、4章と登場したため、男からの視点というよりも人生の浮き沈みそのものが違った女性を感じさせてしまうのが難点だろうか。そして、細かな台詞もリアリティが無く、生きた会話じゃないと感じ、。むしろ、それぞれの女優の表情や仕草の演出の方が冴えていて、裏の背景を想像させるほど説明的な部分は少なくなっています。  正直言って、ラストは眠ってしまって、吉岡秀隆を見ていません・・・いいエピローグだという噂なのですが・・・無念。 【2005年4月映画館にて】

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kossy