「ちゃんとミステリーしてる」名探偵コナン 水平線上の陰謀(ストラテジー) といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
ちゃんとミステリーしてる
「ミステリー映画を期待して観てはいけない」と個人的に思っている劇場版名探偵コナンですが、本作『水平線上の陰謀(ストラテジー)』に関しては、珍しくちゃんとミステリーしているコナン映画です。
コナンについて知らなくても楽しめると思いますし、コナンを知っている人は後半のどんでん返しで感じるカタルシスがより強くなると思います。
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八代グループが建造した大型の豪華客船”アフロディーテ号”。毛利蘭(山崎和佳奈)の親友である鈴木園子(松井菜桜子)の招待で、江戸川コナン(高山みなみ)を含めた少年探偵団たちも、アフロディーテ号の処女航海に乗船することとなった。その船内で、八代グループの会長と社長が殺害される事件が発生する。船に乗り合わせていた毛利蘭の父親で私立探偵である小五郎(神谷明)とコナンは捜査を開始する。
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コナン映画には珍しく、最初から犯人が誰か分かっている倒叙式のミステリー。取材のために乗船していたシナリオライターの日下が犯人であることが最初から明かされた状態でストーリーが進み、コナンたちがどうやって犯人の日下まで辿り着くかを楽しむ形になります。
しかし本作はただの倒叙式ミステリーだけでなく、劇場版の名探偵コナンを鑑賞したことがある人ほど引っ掛かる、とあるトラップが仕掛けられているんです。
名探偵コナンに登場する私立探偵毛利小五郎は、いつも的外れな推理を繰り返すキャラクターです。素っ頓狂な推理をして周りのキャラクターに「オイオイ」と突っ込まれるのがお約束のギャグになっているんですが、本作においてはその推理が的を射ており、日下の裏にいる真犯人が発覚するというどんでん返しが待っています。
コナンに慣れ親しんだ人ほど、「小五郎の推理は外れる」というイメージが強いです。そのため、本作のような「お約束崩し」の展開はコナンのファンほど引っ掛かる見事なトラップだったと思います。私も見事に引っ掛かり、どんでん返しの醍醐味である気持ちいい裏切りを体験することができました。
しかしながら、他の方々のレビューでも挙げられていますが、ラストの蘭の行動に関してはかなり違和感と不満を感じました。具体的に言えば、沈みゆく船の中で一度は救命艇に乗ったのに、プレゼントとしてもらった貝殻で作った金メダルを回収するために再び客船に戻ると言う展開ですね。蘭の身勝手な行動で多くの人たちの命が危険に晒されます。「私にとっては大切なものなの」と蘭は言っていますが、それは自分を含めた乗客たちの命を危険に晒してまで回収しに行く理由にはなりません。絶対に。
ここが無ければ、間違いなくコナン映画史上最高傑作になっていましたね。
ミステリー100点ストーリー20点で平均60点って感じの映画でした。