ユニットバス・シンドローム
劇場公開日:2005年7月16日
解説
別れた彼女のことが忘れられない男が、この世に未練を残す少女の幽霊との奇妙な交流をする。短編「きれいにするとこからはじめよう。」で注目された山口智の初長編監督作。日常に消えてしまいそうなせつなさをすくい取る感覚を評価され、ドイツのハンブルグ国際短編映画祭招待をはじめ、国内外で数々の評価をうけた。
2004年製作/75分/日本
配給:リュックサックマン
劇場公開日:2005年7月16日
ストーリー
別れた彼女を忘れられないフジモト(山中崇)は、ユニットバスの天井裏に彼女との思い出を大切に隠し持っている。そんなフジモトを見かねた友人たちは、彼を励ますために友人ダイスケ宅で“失恋サプライズパーティー”を企画していた。本当はフジモトの為のパーティーだが、友人たちはダイスケのサプライズパーティーだと偽って、秘密のゲストであるフジモトをバスルームへと隠す。彼はそこでも、ついユニットバスの天井裏を覗き込んでしまう。するとそこには、別れた彼女にそっくりなシノハラ(勝俣幸子)という女の子が座っていた。彼女はなんと、数年前にその部屋で自殺した幽霊で、成仏できずに住み着いていたのだ。「忘れられたくない、だからここに居るの」。過去に今なお思いを残すシノハラの言葉に、別れた彼女への思いを重ねていくフジモト。形は違っても、二人が求めているものは同じだった。それは、自分という存在の意味。自分のいない世界でも、自分は生き続けているのだろうか。それを確認するかのように、ふたりはある行動にでる。何かに突き動かされるように、シノハラを連れて彼女の実家へと向かうフジモト。まるで、自分が別れた彼女に忘れられてない事を確かめるように。そして、憶えていてほしいという希望を胸に秘めて。車を持つケンジを誘い出し、シノハラの実家へと向かう3人。久しぶりに実家に帰ったシノハラは、自分のいない日常をおくる父、母、弟、友人を静かにみつめ続けた。そこには、薄れていく記憶の中でも自分のことを忘れていない人たちがいた。しかしその一方で、自分がいないことで成立している家族の姿がそこにはあった。喜びと悲しみがこみ上げる中で一つ確かなことは、もうここにはいられないという現実。すべてを確認したシノハラの心は平安で満たされていた。「私は忘れられていない」。帰路につくフジモトは、そんなシノハラに自分を重ねていく。そして居場所を探すシノハラを、自分の家に招くのだった。