「ぶっとんだ映像演出だが意外と王道友情映画」下妻物語 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
ぶっとんだ映像演出だが意外と王道友情映画
中島哲也監督作品の中でも特に有名な一作。原作は未読の状態での鑑賞でした。
中島哲也監督作品は「告白」「来る」「渇き。」に続いて4作品目です。「告白」はこれまで観てきた映画の中でもベスト5に入るくらい好きな作品ですので中島監督はとても好きなんですが、世間的には結構「賛否両論」って感じの監督らしいですね。CM監督出身ということで、かなりエッジの効いた映像演出を使うのが特徴で、そこが好き嫌いを分けているような気がします。
ただ個人的にはそういう映像演出も結構好きですし、「来る」では原作小説を映画向けにアレンジしており、映像にすると分かりづらいような複雑な設定を無くしたり簡略化したり、逆に映画的に盛り上がりそうな部分をより誇張するなどの工夫を凝らしているのを観て、「原作のある作品を映画向けに改変するのが上手いな」と、私は非常に高く評価している映画監督さんでもあります。
今作「下妻物語」でも中島監督の持ち味である奇抜な映像演出が他の作品以上にふんだんに盛り込まれておりましたので、「告白」の序盤のミュージカルシーンとか「来る」の霊媒師だらけの除霊大会シーンとかオムライスシーンとかが苦手な人は観るのがキツいかもしれませんね。
個人的な評価ですが、私はめちゃくちゃ面白かったです。原作未読なので、どこまでが原作の良さでどこまでが中島監督の手腕なのかは分からない部分が多いですが、中島監督の映像演出と淡々と流れる深田恭子の語りが上手くマッチングしているように私は感じました。どの俳優さんもキャラが立っていて、この人はこのキャラに合うなという見事なキャスティングだったと思います。演出や設定が奇抜なので色物かと思いきや、中身は田舎の町で育ったロリータファッションの不思議ちゃんと友情に厚いおバカなヤンキー少女の不思議な友情を描いた王道ストーリーで最後にはちゃんと感動しました。
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舞台は茨城県下妻市。田んぼが広がる町に住む桃子(深田恭子)はロココ時代のフランスに憧れるゆるふわ系女子。田舎町には似合つかわしくないロリータファッションに身を包み、定期的に代官山の崇拝する店に服を買いに訪れていた。ある日、ロリータ衣装を購入するための小遣い稼ぎとして、父親の持っていた偽物のブランド服を売り始めたのだが、地元の暴走族であるイチゴ(土屋アンナ)が服を購入するために桃子の自宅に訪れた。桃子の独特の雰囲気を気に入ったイチゴはその後も足しげく桃子の自宅を訪れるようになり、二人の間には不思議な友情が芽生えていった。
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まずキャストがとにかく素晴らしいんですよね。現在でも第一線で活躍している俳優さんが登場します。俳優陣の実力もありますし、中島監督は演技に厳しい監督として有名ですので、演技面は本当に非の打ち所がないクオリティでした。
完全に個人的な評価を言うならば、私は深田恭子さんが昔から好きですので若かりし頃の深キョンが見られるというだけでも100点です。ご結婚おめでとうございます。
もう16年も前の作品ということで、出演者全員がものすごく若い。深キョンも土屋アンナも若い。でも荒川良々は全く今と変わらん。そこが逆に凄い。「若かりし頃のあの人」が見られる作品としても面白かったですよ。
あと、中島監督の得意とする独特な映像演出ですね。つるべ打ちのように繰り出される映像演出の数々。映画開始数分の間に深キョンが事故ったり宙を舞ったりスローモーションにいきなり切り替わったかと思いきや時間は巻き戻る。今まで中島監督の作品はいくつか観てきましたが、本作が一番映像演出が強いと思いますね。中島監督の他の作品の映像演出を観て「苦手だな」って思った人は要注意かもしれませんね。私は大好きなんですけど。
また、深キョンの淡々としたナレーションが続くのも良かったと思います。主人公の桃子の無気力感や人生悟った雰囲気がナレーションから伝わってきましたし、「映像がうるさい」ので静かなナレーションはバランス取れて良かったと思いますね。
公開から17年経った今でも名前を目にする機会が多いのも頷けます。ただただ「観ていて楽しい」映画でした。オススメです。