「中島哲也、入魂の1本」下妻物語 ダース平太さんの映画レビュー(感想・評価)
中島哲也、入魂の1本
中島監督の最新作「パコと魔法の絵本」は、“策士策に溺れる”という一言に尽きて、映像ならびに演出のトリックや技巧と、肝心の物語が乖離してしまっていて、映画の世界に素直に入っていくことができなかった。これは「嫌われ松子の一生」にも、その予兆は多少あったけれども。。
でも、久々の劇場長編作であり、実質的に映画デビューと言ってもいいであろう「下妻物語」は、素直に素晴らしかったと思う。何が素晴らしいって、石橋を叩いて、それでも渡らないような作品が並ぶ東宝のラインナップの中において、テレビの観客にも通じる大衆性を残しつつも、しっかりと自分の世界観や作家性を盛り込んだ作品を撮りあげ、しかもそれがヒットしたのだから素晴らしい。他の東宝作品の興行収入に比べたら、小さい、本当に小さいヒットではあるけども、こういう映画が作ら、ヒットしたという実績は見逃せない。
役者陣もそれまでのイメージを打ち破って、監督の胸に飛び込んだ深田恭子と、鮮烈な印象を残す土屋アンナが素晴らしい。2人の熱演もあって、終盤のシーンでは思わず涙腺が緩んでしまった。こういう作品がもっと増えて、もっとヒットしてくれたらいいなぁ、と切に思う。
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