映画ドラえもん のび太の創世日記のレビュー・感想・評価
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今回は冒険というより観察日記
夏休みの自由研究に困っていたのび太はドラえもんに、太陽系を創造する創世セットを買って貰う。新世界の地球の神様となったのび太はその地球の観察日記を付けることに。なかなか生物が進化しないことにしびれを切らせたのび太は、ドラえもんに頼んで進化退化放射線源を魚に当てて貰う。ところがその光が無視にもあたっており、この地球では裏で昆虫人間が繁栄して行くこととなった。まぁこうでもしないと、ただ地球の歴史をなぞるだけになっちゃうからなぁ。
いつものメンバーも参加し、スネ夫が絵を、しずかちゃんが文章を担当する。エンディングでその観察日記が公開されるのだが、のび太の書いたものとの差が結構面白い。一時停止して全て読んだが、先生が普通に論評しているのも笑える。こんな自由研究出されたら誰も勝てない。ちなみにジャイアンはマジで何もしていない。
各時代でのび太達に似た登場人物が度々登場する。石器時代ではノンビ、スモ、ジモが登場。ノンビの声聞いたことあるなぁと思ったら、まさかの林原めぐみである。道に迷ったノンビ達の前に現れ、神様としてふる舞うのび太。神様として人類を手助けするようになる。
翌日、なんとスネ夫とジャイアンがスネ夫の別荘がある四丈半島へ急遽行ってしまい、ドラえもん、のび太、しずかちゃんの3人になってしまう。しかもこの後本当に終盤まで二人はほとんど出て来ない。まさかの二作連続での仲間はずれである。無理矢理フェードアウトさせる上に、させた意味もよく分からないという散々な扱いである。
時代は農耕が始まっており、弥生時代になっていた。神への生贄を捧げることになり、馬鹿らしいと考えていたドラえもん達の前に本当に化け物が現れる。巨大な双頭のムカデを撃退するのび太たち。リアルにいてもおかしくなさそうなデザインで普通に怖い。ちなみにこの時代はノビ彦、スネ若隊長、ジャイ女が登場。しずかちゃんのそっくりさんは出て来ず、ジャイアンそっくりの生贄がノビ彦に求婚するという形で幕を閉じる。これはこれでホラーである。ジャイアンが見ていたらどんな反応をしたのだろうか。
ノビ彦の子孫が気になったのび太は一人で野比奈を観察する。野比奈は既に老齢であり、貧乏な暮らしをしていた上に冬も越せ無さそうな有様であった。見かねたのび太はスペアポケットから道具を取り出し影から支援する。野比奈はチュン子という昆虫人間のような生物を保護する。ハッキリ言って結構怖い見た目であり、これを保護しようという野比奈の気が知れない。そのことによってチュン子のお宿に招かれることとなった野比奈は、チュン子の両親に歓待される。舌切り雀のような展開となり、野比奈の子孫も繁栄することとなるのだが、実はチュン子の両親は昆虫人間で人間に擬態していたことが分かる。見た目も合わさって結構怖い。
ドラえもんとしずかちゃんは外国に行っており、女神様として崇められる。宗教戦争について語っているが、子供には絶対分からない内容である。現代に置いても宗教戦争としてパレスチナ問題などがあり、今でも戦争が起こっている。なんとも考えさせられることだ。文明開化した世界は一気に第一次世界大戦前後くらいまで進む。野比奈の子孫である野美のび秀は野美コンツェルンの社長となっており、南極にある大穴の探索をしたいという出木杉と似た出木松博士、しずかちゃんに似た秘書である源しず代と共に飛行船で南極へ向けて出発する。
まさかの出木杉君大抜擢である。まぁ正確には出木杉君では無いのだが、ドラえもん映画を見渡してもここまで登場するのはこの作品だけである。大穴の中は昆虫人間が暮らす地底世界であり、UFOが飛ぶなど非常に科学が発達していた。更には環境破壊を繰り返す人間に対して戦争を仕掛けるつもりであることをのび秀に宣言する。一向に敵が出て来ずどうやって話を畳むんだろうかと思っていたところにこの爆弾発言である。逆に風呂敷が広げられてしまい、もう時間も無いのにどうなるのだろうと変なハラハラドキドキをさせられる。
一方のドラえもん、のび太、しずかちゃんは地底世界に拉致されていたスネ夫、ジャイアンと出会い驚く。なんとのび太に似た昆虫人間のビタノがタイムマシンでのび太達の暮らす地球まで進出していたことが判明するのだ。しかも密航船としてタイムパトロールに追われていたにも関わらず、タイムパトロールすらしらない超空間の支流に飛び込んで逃げていた。いやいやタイムパトロール大丈夫か?これまで圧倒的な強さを見せていたタイムパトロールの敗北である。
ドラえもんとのび太は地球を作った神様として、複製した創世セットを使って第三の地球を昆虫人間に提供することとなる。ここで一つ謎が解決する。ビタノの元に現れていた未来から来たロボット、エモドランは第三の地球の未来から来ていたのだ。そのエモドランは第三の地球から第二の地球の過去にタイムマシンで来ている。つまりこれが超空間の支流に飛び込むという技術なのだろう。のび太達のいる第一の地球の22世紀よりも優れた次元移動技術に納得出来るようになっている。まぁそこまで考えての設定かは分からないが、解釈としてはこんな感じだろうか。
全体としてはタイトルにも書いた通り冒険ではない上に敵として退治するものではなく、共存でも無い。新たな場を提供して矛を収めさせるという斬新なものだった。ひみつ道具が便利過ぎるから出来る力業での解決法である。この作品を代表するゲストキャラと呼べるキャラもおらず、一番出番が多いのが野比奈かな?というくらいだ。かなりの挑戦作であり他のドラえもん映画とは一線を画している。
こちら、世界を作った神様!
2025年2月2日、Amazonプライムにて視聴。
とうとう創世神にまで至った映画第16作目。
これまでの不思議な体験に巻き込まれる系の作品とは違いのび太が秘密道具で作った世界を神様視点で見学するスタンスのちょっと変わった作品、前作「夢幻三剣士」に続きジャイアンとスネ夫が途中離脱、最後に復帰はするものの活躍は無くちょっと扱いが不遇。
知的生命体のルーツがドラえもん一向というスタンスや地球空洞説や地底人を扱うあたりは「竜の騎士」に似ているが現実世界に干渉した挙句、あのタイムパトロールすら煙に巻くレベルの高度な人類を生み出してしまう「神様セット」はぶっ飛んでる劇場版秘密道具の中でもトップクラスにヤバい。
基本的には秘密道具の中で完結する上にジャイアンとスネ夫が昆虫人間に拉致られる以外には傍観&異世界住民の手助け位しかしないためあまり冒険感が無く作品としては大人しめ、海援隊の「さよならにさよなら」と本作の出来事を綴た絵日記が流れるエンディングロールはなんとなく懐かしさを感じて凄く好き。
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