「R.I.P.バギーちゃん」映画ドラえもん のび太の海底鬼岩城 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
R.I.P.バギーちゃん
白亜紀、遠い惑星、未開の大魔境の次は海底。まあ順当ではある。
人間が海底に行くとどうなるのか?という子供の素朴な疑問に科学的な解を与えたのちにあらゆる過酷な環境でも生存可能となる「テキオー灯」が登場するという教育アニメの名に恥じぬ手順を経てドラえもん一行は海底旅行に出かける。
海底生活の描写の細かさには瞠目させられた。海底に設営したテントアパートでは、トイレの際に必ず排水ボタンを押さなければいけないとドラえもんが忠告する。水で満たされたまま用を足すと汚物がそこらじゅうに漂ってしまうからだ。
また水中でも燃やせる焚き木設備をこさえ、消光電球で周囲を暗くすることで擬似的なキャンプファイヤーを実現。しかもそこで焼かれる肉はプランクトンを加工したもの。サバイバル描写はディテールが凝っていれば凝っているほど見応えがある。
本作を語る上で避けては通れないのが水中バギーの存在だ。高性能AIを搭載している彼は人間と対等に喋ることができる。生意気な使い手には敢然と歯向かい、可愛い女の子にはめっぽう弱いというあまりにも人間味のある性格しており、作中でも屈指で人気の高いキャラクターだ。
ドラえもん一行は気ままな海底旅行を楽しんでいたはずが、いつの間にか海底文明間に勃発した危機に巻き込まれていく。海底火山の影響で古代海底国家アトランティスが有する自動報復システム・ポセイドンが目覚めてしまったのだという。ポセイドンの「鬼角弾」が起動すれば、海底はおろか地上のあらゆる文明が滅亡してしまう。
というわけで地球の存亡をかけて立ち上がる我らがドラえもん一行。しかしMVPはやはり海底バギーだろう。彼はポセイドンの強大さの前に一度はドラえもんの四次元ポケットの中に隠れてしまったが、しずかちゃんの涙を感知して己を奮い立たせる。しずかさんのためならボクは何でもやる!と言ってポセイドンに自爆特攻を仕掛けるバギー。結果、ポセイドンはバギーもろとも大爆発。地球滅亡の危機は去った。
「自動報復」「鬼角弾」といった単語から推察できる通り、本作には東西冷戦への手痛い皮肉が込められている。とはいえそれを解決する最後の一手が大日本帝国さながらの自爆特攻というのはなんともアナクロな気もする。
R.I.P.バギーちゃん。