劇場公開日 2003年12月13日

「哭く」ジョゼと虎と魚たち(2003) Kjさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0哭く

2021年11月7日
iPhoneアプリから投稿

おいおいと哭くラストが印象的である。果たせなかった悔悟と解き放たれた不安か。男の恋愛心が話の軸になり、妻夫木聡の表情にでる不足と充足の変化の機微に目がいく。水族館閉鎖の後の重たい疲れ感、サービスエリアで何気に将来を約し、その保証のなさに確かめるように縋り付く姿。犬のようでもある。
ジョゼを演じる池脇千鶴は、やはり自我が崩れず周囲に安定をもたらす。むしろ男の方が不安定で振り回されている。障がい者像を覆す演出は特筆すべきもの。助けを求めて縋るのではなく、心を埋めることを求めて男を欲する。そして、ふたりの関係を悟り、自ら決裁する。貝殻のベッドにあって、回る魚のイルミネーションが身体に映り込むシーンが美しい。
新井浩文のキャラは、天涯孤独との縁を切る要素となり、ジョゼの自立性を高めている。あまりの無茶苦茶に苦笑い。初々しい上野樹里はジーンズがよく似合う。張り手の応酬に背を向ける少女との構図が楽しい。そして、冒頭から圧巻の婆役の新屋英子。この舞台設定を一目で表現する。

Kj