劇場公開日 2003年6月14日

「ゾルゲは狂言回し」スパイ・ゾルゲ バラージさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ゾルゲは狂言回し

2025年5月30日
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鑑賞方法:DVD/BD

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昭和戦前史総ざらいといった感じで有名な歴史上の人物が次々出てくる近年の日本映画には珍しいスケールの大きな作品で、CGを使った当時の壮大な街並みの再現にも目を見張るものがある。3時間の長さを全く飽きさせないのは見事なんだが、その一方で映画的な盛り上がりにはやや欠けていたような気もした。山場がないと言いますか。まあ面白かったのは確かなんだけど。

ゾルゲ事件についてはそれほどくわしくないんで、ゾルゲや尾崎とスメドレーが親密だったことなんかは興味深かった。あと、2・26事件をわりと突き放した視点から描いていて、見物のおっさんが戦車の登場で逃げ出す将校を見て「あ~あ、しめぇ(おしまい)だな」なんて言うのも印象的。ゾルゲの視点から描いたからこそできたことだろう。不況と絡めて篠田監督の松竹の大先輩・小津安二郎監督の『大学は出たけれど』が出てきたのも思わずニヤリとしてしまった。

俳優陣では、まず本木雅弘。個人的に90年代はこの人と永瀬正敏が好きな若手男優だった。また近衛文麿役の榎木孝明は歴代近衛役(といってもそれほど見てるわけではないが)で一番ハマってたんではないだろうか。特別出演?の竹中直人はこの頃はまだ東条英機にはちょっと若すぎるかな。

あと、この手の日本映画は外国人俳優のレベルがいまいちなことが多いんだが、主演のイアン・グレン以外にも名前こそあまり知らないもののきちんとしたレベルの俳優をそろえていた。ドイツ人やロシア人がみんな英語でしゃべってるのは確かに「あれ?」と思ったが、外見的には同じ欧米人(白人)なためか、中国人同士が英語でしゃべってた『ラスト・エンペラー』に比べれば違和感は少なく、後半にはほとんど慣れてしまった。それにしてもグレンとスメドレー役のミア・ユー以外はドイツやオーストリアやポーランドの俳優のようだが、みんな英語ができたんだろうか? それともわざわざ覚えたのか?

バラージ