たそがれ清兵衛のレビュー・感想・評価
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日本の時代劇の流れを変えた作品では?
わたしにとっては「時代劇」と言えば「水戸黄門」を思い出す。
しかし、この映画を機に、形式美の整った「時代劇」に限らない作品が増えてきたように思う。
「超高速参勤交代」「雨あがる」など、時代劇おもしろいなあ、と思うようになった。
納得の「日本アカデミー賞12冠作品」
多分4回目の鑑賞
初鑑賞は、運良く、試写会に当選してカミさんと見た
日本アカデミー賞12冠というのも納得の作品
舞台は庄内地方の(架空の)海坂藩
主人公は下級武士の井口清兵衛
清兵衛の妻は長患いの末に他界
その間の治療費と葬式代で多額の借金を抱えてしまい、
金に余裕のない清兵衛は、仕事が終わると、同僚の誘いを断り帰宅
内職をする生活をしている
ついたあだ名は「たそがれ清兵衛」
という物語
酒乱の夫と別れ、出戻った親友の妹ととのかかわりで
思いがけず果たし合いとなる
その果たし合いに勝利したことで、藩の内部抗争に巻き込まれてしまう・・・
藤沢作品の定番のストーリーで
身分違いの恋に悩む主人公
「そんなこと考えなくていいんだよ!」
と、ついつい、突っ込んでしまう
評価には少し悩む
4.5でも良いのだが
自分としては「隠し剣・鬼の爪」を高く評価したいので
とりあえず4にした
今週末は「隠し剣」を鑑賞しようと思う
7月9日 追記
☆4では評価が低いと思い
☆4.5に変更しました
【真の漢の生き様を描いた近代邦画が誇る時代劇の傑作の一品。真田広之の清貧な凛々しさ、宮沢りえの美しさ。そして田中泯の凄さを世に知らしめた作品。良いモノは良いと言う事を三度鑑賞して思った作品でもある。】
■内容は、巷間に流布していると思われるが簡単に。
幕末期、庄内・海坂藩の下級藩士・井口清兵衛(真田広之)は、妻を病気で亡くし、ふたりの娘と年老いた痴呆症の母の世話に明け暮れていた。
仕事の終わりになると酒席の誘いを断ることから「たそがれ清兵衛」と呼ばれながらも、慎ましく生きていた彼は、幼馴染の朋江(宮沢りえ)の酒癖の悪い元夫甲田(なんと、大杉連!)が、朋江の実家に因縁を付けてきた事で、真剣に対し棒きれで軽く倒したことで、剣の腕が立つことを知られ、上意討ちの討ち手に選ばれてしまう。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
ー シンプルに記す。良いモノは良いと言う事を三度鑑賞して思った作品。清貧な生き方をブレなく生きる漢、井口。そして、両想いながら、当時の慣習でお互いの立場を気遣う清兵衛と朋江の姿が美しき庄内三山を背景に描き出されている。-
・井口の女性でも論語を学ぶ娘の姿を、”良い”と言い、褒める姿。
ー 彼が、近代的な思想を持っていた事が分かるシーンである。旧弊的な叔父に対する言葉も良い。ー
・とは言え、身分違いの妻に苦労を掛け、病で亡くした事に悔いを持つ姿。
ー 井口の、屈託を表現している。-
・そこに現れた、幼馴染の朋江。彼女が来ると、明るい雰囲気に包まれる井口家。
ー 岸恵子さんの、気品あるナレーションが、私はこの作品の気品を上げていると思う。-
・甲田を軽く打ち負かした井口の元にフラリと訪れた、余吾善右衛門(田中泯)。彼は、甲田を”所詮、あの程度の男だ”と言いつつ、”いつか、御主と剣を・・”と言う姿。
ー 作品構成の妙である。-
・余吾は仕えていた主君が、藩の後継者争いに敗れた事で、追われる立場に。だが、切腹を命じられた藩一流の剣の使い手である彼はその命に従わず、自宅に籠り、刺客を返り討ちにする。
■余吾と、清兵衛との一騎打ちは今作の一番の見所であろう。
清兵衛が一騎打ちに行く前に身なりを整える事をお願いした朋江に対し、死を感じていたからこそ、幼き頃からの想いを伝えるシーン。
そして、余吾の家を訪れた際に、余吾から聞かされた彼の娘を亡くした哀しき人生。
この長廻しのシーンの余吾を演じた、田中泯の演技は凄い。
彼が今作後、邦画界になくてはならない人物になった事が良く分かる。
キャスティングの素晴らしさよ。現代舞踏家が、映画でも第一級の演者である事を見せつけたシーンである。
<他のレビューでも記載したが、私は藤沢周平の作品はほぼ総て読んでいる。理由は名もなき市井の人々の生きる姿を見事に描き出した短編集の魅力であり、貧しき武家の姿を今までにない視点で描き出した作品集の魅力である。
私が、短期間であるが海坂藩のモデルになった、庄内藩の都市に住んでいた事も、その一因かもしれない。”・・であるのう。”という柔らかい方言の中には、冬、雪深い都市に住む市井の人々の逞しき生活が含まれているのである。>
ハッピーエンドで良かった
宮沢りえさんか出てきて、きっとすんなり結婚まで行くのかな、と思ったらそんな簡単にはいかず、えぇ〜切ない〜!と思っているうちに、
やはり、絆があったんでしょうね。無事に清兵衛さんとともえさんが結婚出来て良かったです。
普段は武芸なんて無いと思われていた下級武士が実は凄い立ち回りの出来る剣客だったとは、日本人が好きな設定で、王道で、最高でした!
最高だ
ずいぶん前にDVDレンタルで見て以来2回目だけど、やっぱり最高だ。打ち取りに行った武士が、清兵衛が竹光であると知って勝負を挑んでくるのがひどい。2回しかないのだけど殺陣がリアルでスリリングでかっこいい。宮沢りえは全然好きではなかったけど、すごくいい。特に娘たちと遊んでくれるところがいい。
真田広之の最高傑作
理不尽な役目でも、命を賭して努めなければならない侍の宿命。 若い頃から芸能の世界で生きてきた真田氏自身も、清兵衛の負った役目に深く感じるところがあったのかもしれない。 清兵衛という人物が、映画の中で命を宿し、見事に息づいていた。 彼が本来持つ真面目で優しそうな人柄が、良い形で役に投影されたのではないだろうか。 真田広之のはまり役であると同時に、最高傑作だと思う。
主役の真田広之の存在なくして、ここまで魅力的な作品になることはあり得なかったとさえ思う。 もちろん山田洋二監督の見事な演出があってのことではある。 様々な賞を獲っているように、あらゆる面で素晴らしいが、それでもやはり、真田演じる清兵衛のリアルな存在感こそが、この映画の軸になっていると感じる。
その後、さまざまな俳優を主役に据えて時代劇が乱発気味に制作されたが、この作品を越えるものはなかった。 役に魂が宿るとは、こういうことをいうのだろう。
激動の時代に生きた人たち
時代劇ではあるが、江戸時代のまま終わるのではなく、ラストシーンに汽笛が鳴る。
庄内地方にも鉄道が来ているので、以登が墓参りに来たのは1915年頃だということがわかる。
近代化以前と近代化以後がつながっているのが、藤沢周平の原作とは違うこの映画のひとつの見どころである。
1865年の海坂藩のお家騒動という前近代的な出来事から、たった50年で日本は津々浦々に鉄道が走る近代化が進んだんだなあということが、この汽笛の効果音ひとつで感じることができる。
朋江が以登と萱野を立派に育てたように、日本全国に激動の時代を生きた人たちがたくさんいたはずである。
そして明治を生き抜いた朋江と新しい時代を見ることができなかった清兵衛とが、一つのお墓で仲良く眠っているなんて、涙が出るじゃありませんか。
陽水の名曲「決められたリズム」がその涙の量を増やす。
これまでに見た良い映画五本指に入る。
ひとから命令されたことをしぶしぶ受け入れた結果、幸せになるというのはちょっと納得できない
予め映画のあらすじを読んでから本編をみたが、あらすじに書かれている内容がほぼすべて。最期の殺陣が少し長かったが、話しの流れ的に、そこで死ぬような流れではないので、結論はわかっているようなもの。朋江(宮沢りえ)を好きでいながら自分の稼ぎでは幸せにできないと、いう気持ちは理解できるし現代でもよくある話。納得いかないのは、たてもった武士を打ち取るという藩命があり、それは収入を増やすチャンスでありながら、それを拒否した挙句、結局は命令だといって、しぶしぶ受け入れたところ。結果的に生きてかえってこれて、禄も多くなり、幸せになったというハッピーエンド話になったが、自分で幸せをつかみとるという意味では、自分で志願してほしかった。ひとから命令されたことをしぶしぶ受け入れた結果、幸せになるというのは、ストーリーとしてどうなのかと思った次第。
武士の妻と子供達に魅了された
家族愛がとてもよくでていて、さすが山田洋次という感じ。電気のない江戸時代の家の中の様子を、照明をあえて暗くしていい雰囲気を醸し出している。主演は真田広之だけど、主役は岸恵子だと思う。最後のナレーションで清兵衛が幸福だったのか、不幸だったのか、人によって感じ方が違うかもしれない。
トワイライトサムライ
「隠し剣 鬼の爪」の前作で、きょうだいのような作品。何度か見ているが、なぜか途中からしか見てない。いつも果たし合いの前あたりからで、田中泯が「たそがれ〜」と言うのが好き。このシーンを動画に上げてる人がいて、英語の字幕をつけているんだけど、たそがれをトワイライトと訳していて、なかなかウケる。
真田広之はどんなに汚くしても、美男オーラがにじみ出る。宮沢りえも、辛い経験にふと影をよぎる場面もあるが、生来の闊達さを失わない明るい笑顔がかわいい。丹波哲郎、大杉漣、懐かしい〜。
「たそがれ清兵衛」では、家格が女の方が上、「隠し剣」では男の方が上、侍を続けて死ぬか、侍を辞めて生きるか、対照的な設定にしている。筋自体はそっくりだが、微妙に違いを出して、2作品でセットといった感じ。
とにかく田中泯がいい。狂気を感じさせるあの鋭い眼差し、隙のない動き。致命傷を負った後、息絶えるまでが、まるで場踊りのよう。一つの短い舞台だなと思った。最近は映像作品に多く出ているが、NHKドラマ「妻は、くの一」での松浦静山役が、個人的にハマってると思う。できたらまたやって欲しいなー。静山の娘、静湖を主人公にした「姫は、三十一」という小説でぜひ。縁談話が進む前になぜか相手が死んでしまい、嫁にいかぬまま30歳になる静湖姫、謎解きを仕事にすると宣言。さらに遅ればせながらモテ期突入、という、アラサー女子に刺さるであろうお話。面白いんだけどなー。だれかお願い、企画して。
BS日テレで鑑賞。
下級武士のささやかな幸せ。
DVD&動画配信でーたのアクション映画特集で出ていた作品で、気になったので鑑賞しました。真田正之さんってアクション俳優 としてデビューしてたんですね。
ストーリーは大きく清兵衛という人間を描くパート、望まぬ討手の命令の受けるパート、決闘のパートに分かれていて、展開は複雑でなく、むしろシンプルで、かつ、時間をかけて登場人物たちの日常を映しているので、彼らの心情や、感情に深く入り込める作品だったのが非常に良かったです。下級武士の地味なありふれた日常がしっかり描写されてたのも、いいですね♪
にしても、なぜここまで、清兵衛に感情移入できるのか。個人的には、等身大(悪く言えば平凡)で今の私たちにも分かる幸せを望み、そのために努力をしているからかなと思いました。
母親が必要か?という問いに首をふる萱野と以登。父親冥利に尽きるじゃないですか。羨ましいぞ、清兵衛!また、この二人の娘さんが健気でかわいらしい!羨ましいぞ、清兵衛!!
お母さんのボケにからませて、ちょこっと笑わせてくれるのも微笑ましい演出でした。
そして、討手命令を受けるシーン。決断したのか、むしろ、諦めたのかという表現が正しいのか、清兵衛の決意の中に悲しみが混じった表情は、見事でした。グッと刺さりました。準備をするシーンで漂う哀愁感というか、悲壮感というか、この雰囲気も素晴らしかった。
最後の田中泯さんとの決闘シーン、個人的には今まで展開でかなり気持ちが盛り上がっていたので、逃げるとか、逃がすような展開とか、思ったほど殺陣シーンがインパクトがなかったとか、若干トーンダウンしたかな。まあ、実際の室内での刀の勝負ってあのような戦いなんでしょうね。。
いずれにせよ、それでも素晴らしい作品でした。バリバリのアクション映画として見るつもりでしたが、思わずヒューマン作品を堪能できました!
流石は、藤沢、山田洋次に陽水ざんす。
良く練られた脚本に巧さを感じさせない職人芸の凄みある演出
貧乏の為武士の命?の刀まで売ってしまった冴えない真田広之が最後は爽快に達人芸を示すのかと思ったら、そうでも無く、相手に騙され、しかもあちこち斬られて、なんとか生きながらえるというストーリーはとても良い。
愛する幼馴染の宮沢理恵にやっと結婚申し込むも、既に嫁ぎ先決めていて手遅れ。でも死闘の後には一緒になって、出世こそなかったが、また幕軍として戦死したが、幸せで誇りあったと、娘の語りで明かすのも、抑えが効いた見事なアイデア。
時代劇の中に、松竹伝統の家族劇を持ち込み、さらに真田の達人的なアクションを最大限に活かした傑作と感じた。さすが、山田洋次監督、凄い。
黄昏時と聞くと常に思い出す名作
まず見所ですが、真田広之氏演じるたそがれ清兵衛と宮沢りえ氏演じる朋江との身分を超えた恋の行方です^ ^
結論として、最も演技が光っていたのは宮沢りえ氏でした。たそがれ清兵衛の幼なじみ役であった彼女がフレームインするとなぜか明るくなる現場の雰囲気、少し映像が出ただけで彼女が映画に必要不可欠な存在だと感じさせられる。
演技のポイント
・真田広之氏: 下級侍として生きながら、認知症になった母親の看病や家族を食わせる為、ひたむきかつ保守的に仕事へと励む姿がとても惹きつけられます。また、〜だす、わたすは、〜でがんすなど侍時代の言葉遣いなど表現されていました。一点だけ気になったのは、現代の言葉も混じっているような台詞回しがいくつかあった点です。これは演技というより脚本に原因があるかもしれないですね。
・宮沢りえ氏: たそがれ清兵衛より少し位の高かった家の出身の朋江は、位に関係なく交流すべきだど分け隔てなく誰とでも平等に接する姿に引き寄せられます。たそがれ清兵衛が一騎討ちに赴く前、たそがれから好意を寄せられていたことを聞かせられた時の反応もまさに幼なじみで好意を寄せていた人からの思いに感動しながらも他の人との婚約を受けてしまったことを表現する姿はまさに女優でした。
世界観がハマる
山田洋次監督の最高傑作かも
なるほど素晴らしい。
実生活の運命の流転が刻まれた宮沢りえの全存在と、ヒロインの境遇が激しく共振しており、深い感動と余韻をもたらされました
始まっていきなり感情を鷲掴みにされました
まだ物語も始まってもおらず、感動的なシーンでもありません
何のことのない、山、河、田畑その光景
日本の原風景です
そこに巨匠中の巨匠冨田勲の格調高い音楽が流れる
それだけで涙腺か緩みました
後はもう泣かされ放しです
そして宮沢りえの登場
29歳の姿です
12歳でぼくらの七日間戦争に出演してから、17年後の姿です
実生活の凄まじいほどの流転が、姿形、美貌、立ち振る舞いにと、その全存在に苦労が刻まれているのがまざまざと感じられます
それが劇中のヒロインの境遇と激しく共振しています
彼女の出演が本作を成功に導いたのは疑いようもありません
劇中、たそがれと朋江はわずか3年しか夫婦として暮らせなかったとラストシーンで語られます
しかしその3年が無ければこの二人に何の生きていた値打ちがあったと言えるのでしょうか
それもまた宮沢りえの運命とともに共振して深い余韻をもたらしました
永遠の名作です
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