たそがれ清兵衛のレビュー・感想・評価
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真田広之の最高傑作
理不尽な役目でも、命を賭して努めなければならない侍の宿命。 若い頃から芸能の世界で生きてきた真田氏自身も、清兵衛の負った役目に深く感じるところがあったのかもしれない。 清兵衛という人物が、映画の中で命を宿し、見事に息づいていた。 彼が本来持つ真面目で優しそうな人柄が、良い形で役に投影されたのではないだろうか。 真田広之のはまり役であると同時に、最高傑作だと思う。
主役の真田広之の存在なくして、ここまで魅力的な作品になることはあり得なかったとさえ思う。 もちろん山田洋二監督の見事な演出があってのことではある。 様々な賞を獲っているように、あらゆる面で素晴らしいが、それでもやはり、真田演じる清兵衛のリアルな存在感こそが、この映画の軸になっていると感じる。
その後、さまざまな俳優を主役に据えて時代劇が乱発気味に制作されたが、この作品を越えるものはなかった。 役に魂が宿るとは、こういうことをいうのだろう。
激動の時代に生きた人たち
時代劇ではあるが、江戸時代のまま終わるのではなく、ラストシーンに汽笛が鳴る。
庄内地方にも鉄道が来ているので、以登が墓参りに来たのは1915年頃だということがわかる。
近代化以前と近代化以後がつながっているのが、藤沢周平の原作とは違うこの映画のひとつの見どころである。
1865年の海坂藩のお家騒動という前近代的な出来事から、たった50年で日本は津々浦々に鉄道が走る近代化が進んだんだなあということが、この汽笛の効果音ひとつで感じることができる。
朋江が以登と萱野を立派に育てたように、日本全国に激動の時代を生きた人たちがたくさんいたはずである。
そして明治を生き抜いた朋江と新しい時代を見ることができなかった清兵衛とが、一つのお墓で仲良く眠っているなんて、涙が出るじゃありませんか。
陽水の名曲「決められたリズム」がその涙の量を増やす。
これまでに見た良い映画五本指に入る。
ひとから命令されたことをしぶしぶ受け入れた結果、幸せになるというのはちょっと納得できない
予め映画のあらすじを読んでから本編をみたが、あらすじに書かれている内容がほぼすべて。最期の殺陣が少し長かったが、話しの流れ的に、そこで死ぬような流れではないので、結論はわかっているようなもの。朋江(宮沢りえ)を好きでいながら自分の稼ぎでは幸せにできないと、いう気持ちは理解できるし現代でもよくある話。納得いかないのは、たてもった武士を打ち取るという藩命があり、それは収入を増やすチャンスでありながら、それを拒否した挙句、結局は命令だといって、しぶしぶ受け入れたところ。結果的に生きてかえってこれて、禄も多くなり、幸せになったというハッピーエンド話になったが、自分で幸せをつかみとるという意味では、自分で志願してほしかった。ひとから命令されたことをしぶしぶ受け入れた結果、幸せになるというのは、ストーリーとしてどうなのかと思った次第。
武士の妻と子供達に魅了された
家族愛がとてもよくでていて、さすが山田洋次という感じ。電気のない江戸時代の家の中の様子を、照明をあえて暗くしていい雰囲気を醸し出している。主演は真田広之だけど、主役は岸恵子だと思う。最後のナレーションで清兵衛が幸福だったのか、不幸だったのか、人によって感じ方が違うかもしれない。
トワイライトサムライ
「隠し剣 鬼の爪」の前作で、きょうだいのような作品。何度か見ているが、なぜか途中からしか見てない。いつも果たし合いの前あたりからで、田中泯が「たそがれ〜」と言うのが好き。このシーンを動画に上げてる人がいて、英語の字幕をつけているんだけど、たそがれをトワイライトと訳していて、なかなかウケる。
真田広之はどんなに汚くしても、美男オーラがにじみ出る。宮沢りえも、辛い経験にふと影をよぎる場面もあるが、生来の闊達さを失わない明るい笑顔がかわいい。丹波哲郎、大杉漣、懐かしい〜。
「たそがれ清兵衛」では、家格が女の方が上、「隠し剣」では男の方が上、侍を続けて死ぬか、侍を辞めて生きるか、対照的な設定にしている。筋自体はそっくりだが、微妙に違いを出して、2作品でセットといった感じ。
とにかく田中泯がいい。狂気を感じさせるあの鋭い眼差し、隙のない動き。致命傷を負った後、息絶えるまでが、まるで場踊りのよう。一つの短い舞台だなと思った。最近は映像作品に多く出ているが、NHKドラマ「妻は、くの一」での松浦静山役が、個人的にハマってると思う。できたらまたやって欲しいなー。静山の娘、静湖を主人公にした「姫は、三十一」という小説でぜひ。縁談話が進む前になぜか相手が死んでしまい、嫁にいかぬまま30歳になる静湖姫、謎解きを仕事にすると宣言。さらに遅ればせながらモテ期突入、という、アラサー女子に刺さるであろうお話。面白いんだけどなー。だれかお願い、企画して。
BS日テレで鑑賞。
下級武士のささやかな幸せ。
DVD&動画配信でーたのアクション映画特集で出ていた作品で、気になったので鑑賞しました。真田正之さんってアクション俳優 としてデビューしてたんですね。
ストーリーは大きく清兵衛という人間を描くパート、望まぬ討手の命令の受けるパート、決闘のパートに分かれていて、展開は複雑でなく、むしろシンプルで、かつ、時間をかけて登場人物たちの日常を映しているので、彼らの心情や、感情に深く入り込める作品だったのが非常に良かったです。下級武士の地味なありふれた日常がしっかり描写されてたのも、いいですね♪
にしても、なぜここまで、清兵衛に感情移入できるのか。個人的には、等身大(悪く言えば平凡)で今の私たちにも分かる幸せを望み、そのために努力をしているからかなと思いました。
母親が必要か?という問いに首をふる萱野と以登。父親冥利に尽きるじゃないですか。羨ましいぞ、清兵衛!また、この二人の娘さんが健気でかわいらしい!羨ましいぞ、清兵衛!!
お母さんのボケにからませて、ちょこっと笑わせてくれるのも微笑ましい演出でした。
そして、討手命令を受けるシーン。決断したのか、むしろ、諦めたのかという表現が正しいのか、清兵衛の決意の中に悲しみが混じった表情は、見事でした。グッと刺さりました。準備をするシーンで漂う哀愁感というか、悲壮感というか、この雰囲気も素晴らしかった。
最後の田中泯さんとの決闘シーン、個人的には今まで展開でかなり気持ちが盛り上がっていたので、逃げるとか、逃がすような展開とか、思ったほど殺陣シーンがインパクトがなかったとか、若干トーンダウンしたかな。まあ、実際の室内での刀の勝負ってあのような戦いなんでしょうね。。
いずれにせよ、それでも素晴らしい作品でした。バリバリのアクション映画として見るつもりでしたが、思わずヒューマン作品を堪能できました!
流石は、藤沢、山田洋次に陽水ざんす。
厳しい生活環境の中で、
飄々と流れていく平侍家族。
世の中が激流に流れていても平侍生活は変わらない。
変わらない、変えたくないと思いながら流されていく平侍が目覚めた時。
どっぷり浸かって抗えないほど流されていた。
小さな珠玉の幸せが美しく儚い。
所詮、武力団体の一兵卒の惨めな話が、
美しく見えるのは日本人なのかも知れない。
良く練られた脚本に巧さを感じさせない職人芸の凄みある演出
貧乏の為武士の命?の刀まで売ってしまった冴えない真田広之が最後は爽快に達人芸を示すのかと思ったら、そうでも無く、相手に騙され、しかもあちこち斬られて、なんとか生きながらえるというストーリーはとても良い。
愛する幼馴染の宮沢理恵にやっと結婚申し込むも、既に嫁ぎ先決めていて手遅れ。でも死闘の後には一緒になって、出世こそなかったが、また幕軍として戦死したが、幸せで誇りあったと、娘の語りで明かすのも、抑えが効いた見事なアイデア。
時代劇の中に、松竹伝統の家族劇を持ち込み、さらに真田の達人的なアクションを最大限に活かした傑作と感じた。さすが、山田洋次監督、凄い。
黄昏時と聞くと常に思い出す名作
まず見所ですが、真田広之氏演じるたそがれ清兵衛と宮沢りえ氏演じる朋江との身分を超えた恋の行方です^ ^
結論として、最も演技が光っていたのは宮沢りえ氏でした。たそがれ清兵衛の幼なじみ役であった彼女がフレームインするとなぜか明るくなる現場の雰囲気、少し映像が出ただけで彼女が映画に必要不可欠な存在だと感じさせられる。
演技のポイント
・真田広之氏: 下級侍として生きながら、認知症になった母親の看病や家族を食わせる為、ひたむきかつ保守的に仕事へと励む姿がとても惹きつけられます。また、〜だす、わたすは、〜でがんすなど侍時代の言葉遣いなど表現されていました。一点だけ気になったのは、現代の言葉も混じっているような台詞回しがいくつかあった点です。これは演技というより脚本に原因があるかもしれないですね。
・宮沢りえ氏: たそがれ清兵衛より少し位の高かった家の出身の朋江は、位に関係なく交流すべきだど分け隔てなく誰とでも平等に接する姿に引き寄せられます。たそがれ清兵衛が一騎討ちに赴く前、たそがれから好意を寄せられていたことを聞かせられた時の反応もまさに幼なじみで好意を寄せていた人からの思いに感動しながらも他の人との婚約を受けてしまったことを表現する姿はまさに女優でした。
世界観がハマる
細かい作り込みと演者の会心の演技が相まって、地味ながらも味深い作品と思った。
宮沢りえさんが取り沙汰された本作だが、俺は真田広之に衝撃を覚えた。
一つ一つの目配りから抑揚ある台詞回しと、どこをどう抜きあげても最高の演技と思った。
脚本の妙に現代らしさもちらりと取り入れる監督の手腕も流石だし、ヒリヒリとした武士の気迫を体現した田中泯さんの演技も、もう言うことない出来だった。
寅さんも大好きだが、日本映画界の至宝、山田洋次さん、いつまでも応援しています。
と、読み返して全くもってレビューになってないけど、つまりは邦画を好きになるキッカケになる作品だと思います。
山田洋次監督の最高傑作かも
私ははっきり言うと山田洋次が嫌いである.彼の作る映画は映画ではない.お正月映画だ.寅さんシリーズのような派手さのないお茶の間的なものは映画館という特別な空間では見たくない.だから映画監督とは認めないと言いたいくらいだ.しかしそんな中この作品だけはどうしても認めないわけにはいかないと思った. 完璧なストーリーで文句の言いようがないから.まああえて文句を言うのならいつものように撮影した写真が美しくない.最高に才能のあるカメラマンが最高に金をかけてこの映画を撮っていたら本当に歴史に残るくらい素晴らしいものになっていただろう.
なるほど素晴らしい。
日本の数々の映画賞を受賞、そして海外でも高く評価された作品ですが、今頃はじめて観ました。
ふむ、なるほど素晴らしい。
ストーリーや脚本はけして面白いというわけではありませんが、不思議とすごく映画の世界に引き込まれました。
これはきっと山田洋次監督の演出技量の凄さなのでしょう。
そして真田広之さんの演技が素晴らしい。宮沢えりさんの演技が素晴らしい。
あらためて映画は出演者の演技が上手いといい作品になるということを体感しました。
実生活の運命の流転が刻まれた宮沢りえの全存在と、ヒロインの境遇が激しく共振しており、深い感動と余韻をもたらされました
始まっていきなり感情を鷲掴みにされました
まだ物語も始まってもおらず、感動的なシーンでもありません
何のことのない、山、河、田畑その光景
日本の原風景です
そこに巨匠中の巨匠冨田勲の格調高い音楽が流れる
それだけで涙腺か緩みました
後はもう泣かされ放しです
そして宮沢りえの登場
29歳の姿です
12歳でぼくらの七日間戦争に出演してから、17年後の姿です
実生活の凄まじいほどの流転が、姿形、美貌、立ち振る舞いにと、その全存在に苦労が刻まれているのがまざまざと感じられます
それが劇中のヒロインの境遇と激しく共振しています
彼女の出演が本作を成功に導いたのは疑いようもありません
劇中、たそがれと朋江はわずか3年しか夫婦として暮らせなかったとラストシーンで語られます
しかしその3年が無ければこの二人に何の生きていた値打ちがあったと言えるのでしょうか
それもまた宮沢りえの運命とともに共振して深い余韻をもたらしました
永遠の名作です
友人の妹
同じ藤沢周平さんの「必死剣鳥刺し」「蝉しぐれ」を観た後では。
正直物足りませんでした。
子供や実母を養い・育てるために、今でいう定時退庁する清兵衛。妻の長患いや葬儀で家計が圧迫され、内職までしても楽にならない暮らし。
だけど娘たちは「お父はんがいれば、さみしくね」。そんな”家族愛”もあったし。
友人の妹との、微妙な関係のもどかしさも切ないというか。
いずれも末娘の語りで進んでいく所が、目新しかった(なぜそうなるのかは、最後にびっくり!)。
真田さんの終盤からみせるきりっとした刀さばきや、りえさんの哀し気な表情に胸ズキン。
だけどクライマックス、藩の命令で出陣した「殺陣」の場面が、しまってない。だらだらした感や、そんなに喋んなくていいんじゃ?。
これが私はがっくりでした。いくつかの短編集を併せて作られたそうなので仕方ないのですが。勢いにかけてました。
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