劇場公開日 2002年11月2日

たそがれ清兵衛のレビュー・感想・評価

全39件中、1~20件目を表示

5.03つの短編を1本の長編に再構成した見事な脚本による、“人間のプロとしての優しさ”に…

2023年9月22日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

未読だった藤沢周平の
原作短編の一つ「竹光始末」を
読むことが出来、改めて映画鑑賞した。

この作品、
勤めを終えると家族のために早々に帰宅する
主人公は、原作「たそがれ清兵衛」から、
みすぼらしい風体や、
幼馴染みの女性とのお互いの秘めた想いは
「祝い人助八」から、
戦いに臨んだ二人の心が
通じ始めていたはずが、
清兵衛が竹光であると打ち明けてから
上意討ちの相手との死闘に転ずるのは
「竹光始末」から、
と、3つの短編を上手く組み合わせ、
ある意味、藤沢周平の別の長編小説に
仕立て上げたかのような脚本は
全く見事と言うしかない。

また、今回改めて気付いたのは、
清兵衛が上意討ちに臨んだ相手は、
「竹光始末」での家族との放浪の果てに
海坂藩に仕官出来た主人公と似ている。
また、その上意討ちの相手が、
清兵衛の大刀が竹光と知って
彼を倒そうとする意思を、
勝てるから、では無く、
武士としての誇りに変換する等、
この3原作を上手く組み合わせ、更には
高尚化するという脚本の上手さだった。

そんな中、映画「たそがれ…」の
清兵衛家の家族像はオリジナルだった。
妻だけの「たそがれ…」、
妻に先立たれ現在は独身の「祝い人…」、
妻子のある「竹光…」、
とは異なり、
妻が亡くなり、老いた母と二人の子供
の設定は、
3つの短編原作には無い設定だった。

今回、改めての鑑賞では、
冒頭の娘のナレーション
「家族のために“たそがれ”下城する父」
を耳にしては、初めから溢れる涙を
押し止めることは出来なかった。
そして、最後の最後まで、
家族を大切に思う想い、
憧れの幼なじみの女性に好意を寄せながらも
貧しい生活に巻き込むことへの葛藤等、
人間としての優しさに溢れた
“たそがれ清兵衛”像には、全編、
涙が途切れることのない鑑賞となった。

ラストシーンでの岸惠子の
「父は…充足した思いで短い人生を過ごしたに違いありません」には、
清兵衛的“人間のプロとしての優しさ”を
伝えたい山田洋次監督のそんな想いが
込められているような気がした。

私には、この映画は、「おくりびと」と並ぶ
故郷山形県庄内を舞台にした名作だが、
また、山田洋次監督作品としても、
「息子」と並ぶ私の中での代表作でもある。

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KENZO一級建築士事務所

3.5美しい暮らし方

2023年9月16日
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悲しい

知的

幸せ

とてもいい映画だったと思う。貧しい侍の暮らしをそのまま貧しく描き、自然に、なんというか、王道、正統派っていうかんじだ。
それでいてきたならしくは決してない。おかゆを食べて、そのあと白湯と漬物で一緒に箸で茶碗をぬぐって飲み、茶碗をそのまま伏せる。洗うなんてことはしないのだ。でもそんな習慣は無駄なく美しく見える。私がすきなのは、朋江の兄と清兵衛が釣りをするシーンだ。映像がすごく美しいし、二人のかぶった笠にはしっかり貧富があらわれていて、こまかいな~と思う。そこで朋江の兄に朋江をもらってくれないかと言われる清兵衛。憎からず思っているが断る。愛だけでは食べていけないからというわけだ。この暮らしが一生続くのかとおもったら、きっと彼女は後悔するだろうと。なんかああ人間は弱いものだものなあなんて思ってしまってとてもかなしかったのだった。
丁寧な、静かな映画で、日本の映画はこういうかんじがいいなあと思わせてくれる。最近韓国の映画がずいぶんもてはやされたけれど、これなら日本映画としていけるんじゃないかなあ。脇役では殿様のとぼけた感じがマル。小林稔侍もいいね。あとは岸惠子の役は、私としては倍賞千恵子のほうがよかったなあ~やっぱり(笑)
山田監督の言葉をHPで読むと「現代と違って画一的で映像にははなはだ向かないが、主君の命令とあらば命を捨てる、という不気味さがある・・平凡で静かな暮らしの裏の刀に象徴された激しさを表現したい」というようなことを語っていました。平凡な外見の裏に激しい一面、っていうのカッコいいね。今は個性個性って外見飾ることばっかりだけど、実はみんな画一的なことにあまり気付いていないかもしれない。

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らいぴゅう

3.0身分違いの恋

2023年7月6日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

アルアル話なのに、清貧の切なさが見応え十分でした。
エリちゃん可愛らしい🥰

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jiemom

5.0ナレーション‼️

2023年5月14日
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泣ける

悲しい

興奮

たそがれ清兵衛のキャラクターと物語の全てを言いつくした岸恵子さんのナレーション
" 「たそがれ清兵衛は不運な男だった」とおっしゃるのをよく聞きましたが、私はそんなふうには思いません。父は出世などを望むような人ではなく、自分のことを不運だなどとは思っていなかったはずです。私たち娘を愛し、美しい朋江さんに愛され、充足した思いで短い人生を過ごしたに違いありません。そんな父のことを、私は誇りに思っております・・・"

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活動写真愛好家

4.5武家の厳しさ、身分、悲哀と幸福感の残る物語。

2023年4月28日
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藤沢周平の短編小説を山田洋次監督が味付け。
現代風に近づけず、それでいて難解さはない。

何度観ても監督の意図するところがそこに見え
映画作りを大切にしている人の作品だと感じる。
武家の宿命が全編にわたり語られていて
どんな形であったにせよ「しあわせであった」
そのひとことに尽きる。

ナレーションもいい。

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星組

4.0藩命での立ち合い

2023年1月25日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

真田広之扮する井口清兵衛は、着物はボロボロで務めを終えて同僚から誘われてもすぐ帰るのでたそがれ清兵衛と呼ばれ笑われていた。そんな清兵衛のところへ宮沢りえ扮する出戻りの友人の妹飯沼朋江が訪ねて来た。

宮沢りえが明るくて素敵だね。こんな女性がそばにいてくれたらありがたいね。また清兵衛も貧しくてボロボロでも隠し足る爪で剣の腕が立つのはいいね。しかしながら藩命で立ち合いをせざるを得なくなりいざ勝負へ。侍とは厳しいものだね。

劇場で観て以来3回目くらいかな。真田広之の代表作たり得るかな。

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重

5.0素晴らしい

2023年1月16日
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この映画を真田広之と宮沢りえでつくってくれてありがとうと言いたい。

真田広之が斬る相手が田中泯というのも、他の人では考えられない。

貧しくてぼろぼろで、でも必死にささやかな幸せをきちんと握りしめて生きる。同僚たちにたそがれと呼ばれ(馬鹿にされている)のもたぶん承知で、それでも、ふてくされたりせず、自分にとって一番大切な家族と真っ当に生きてるのが愛おしい。

岸惠子が最後に言ってたように、たそがれ清兵衛は幸せだったと思う。

たそがれ清兵衛が幸せだと思うようなことを幸せと感じる人間でいたい。

最高の邦画の一本。

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くー

4.0つい自己投影して応援したくなる映画

2022年10月18日
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鑑賞方法:DVD/BD

武士の階級にも上下があり、俸禄が乏しいものには好きな嫁を娶ることも叶わないという、現代にも通じるような人間の悩みを浮き彫りにしたドラマ。

真田広之の映画では最高傑作だと思う。相手役に宮沢りえというのも、いかにも過去のありそうなキャリアにぴったりのキャスティングで、芝居を超えた感情が見えた気がした。

さらには、太刀のさばき方が経験者っぽくて、チャンバラのように派手な展開はないものの、そこにリアルさと緊張感が生まれ、最後まで目が離せなくなった。さりげなく、日本の風景も美しく撮影してあり、およそ考えられる最高の演出を施してある。この時点で山田洋二は他の追随を許さない日本では最高の映画監督に上り詰めていたであろう。

この座組で、藤沢周平作品の映画かが続き、それなりに成功を収めたパイオニアになった作品。とにかく素晴らしい感動を味わえた。

2018.6.26

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うそつきカモメ

5.0日本の時代劇の流れを変えた作品では?

Mさん
2022年10月2日
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わたしにとっては「時代劇」と言えば「水戸黄門」を思い出す。
しかし、この映画を機に、形式美の整った「時代劇」に限らない作品が増えてきたように思う。
「超高速参勤交代」「雨あがる」など、時代劇おもしろいなあ、と思うようになった。

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M

5.0真田広之の最高傑作

2022年1月31日
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鑑賞方法:DVD/BD

 理不尽な役目でも、命を賭して努めなければならない侍の宿命。 若い頃から芸能の世界で生きてきた真田氏自身も、清兵衛の負った役目に深く感じるところがあったのかもしれない。 清兵衛という人物が、映画の中で命を宿し、見事に息づいていた。 彼が本来持つ真面目で優しそうな人柄が、良い形で役に投影されたのではないだろうか。 真田広之のはまり役であると同時に、最高傑作だと思う。

 主役の真田広之の存在なくして、ここまで魅力的な作品になることはあり得なかったとさえ思う。 もちろん山田洋二監督の見事な演出があってのことではある。 様々な賞を獲っているように、あらゆる面で素晴らしいが、それでもやはり、真田演じる清兵衛のリアルな存在感こそが、この映画の軸になっていると感じる。

 その後、さまざまな俳優を主役に据えて時代劇が乱発気味に制作されたが、この作品を越えるものはなかった。 役に魂が宿るとは、こういうことをいうのだろう。

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Garu

4.0トワイライトサムライ

2021年6月16日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

「隠し剣 鬼の爪」の前作で、きょうだいのような作品。何度か見ているが、なぜか途中からしか見てない。いつも果たし合いの前あたりからで、田中泯が「たそがれ〜」と言うのが好き。このシーンを動画に上げてる人がいて、英語の字幕をつけているんだけど、たそがれをトワイライトと訳していて、なかなかウケる。

真田広之はどんなに汚くしても、美男オーラがにじみ出る。宮沢りえも、辛い経験にふと影をよぎる場面もあるが、生来の闊達さを失わない明るい笑顔がかわいい。丹波哲郎、大杉漣、懐かしい〜。

「たそがれ清兵衛」では、家格が女の方が上、「隠し剣」では男の方が上、侍を続けて死ぬか、侍を辞めて生きるか、対照的な設定にしている。筋自体はそっくりだが、微妙に違いを出して、2作品でセットといった感じ。

とにかく田中泯がいい。狂気を感じさせるあの鋭い眼差し、隙のない動き。致命傷を負った後、息絶えるまでが、まるで場踊りのよう。一つの短い舞台だなと思った。最近は映像作品に多く出ているが、NHKドラマ「妻は、くの一」での松浦静山役が、個人的にハマってると思う。できたらまたやって欲しいなー。静山の娘、静湖を主人公にした「姫は、三十一」という小説でぜひ。縁談話が進む前になぜか相手が死んでしまい、嫁にいかぬまま30歳になる静湖姫、謎解きを仕事にすると宣言。さらに遅ればせながらモテ期突入、という、アラサー女子に刺さるであろうお話。面白いんだけどなー。だれかお願い、企画して。

BS日テレで鑑賞。

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ぷにゃぷにゃ

4.5流石は、藤沢、山田洋次に陽水ざんす。

2021年3月19日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

単純

厳しい生活環境の中で、
飄々と流れていく平侍家族。

世の中が激流に流れていても平侍生活は変わらない。

変わらない、変えたくないと思いながら流されていく平侍が目覚めた時。

どっぷり浸かって抗えないほど流されていた。

小さな珠玉の幸せが美しく儚い。

所詮、武力団体の一兵卒の惨めな話が、
美しく見えるのは日本人なのかも知れない。

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カールのおっちゃん

5.0下級武士

2021年3月18日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

主人公(真田広之)は下級武士で、内職をしないとやっていけないほど貧乏だ。
妻を亡くし、娘二人とボケた母親の面倒を見ている。
そんな時、近くに住む幼なじみの出戻り女性(宮沢りえ)が訪ねてくる。
僅かな禄しか与えず、困ったら剣の腕を頼る上層部には腹が立つが、適役の田中泯には悲哀を感じてしまう。

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いやよセブン

4.5世界観がハマる

2020年6月23日
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 細かい作り込みと演者の会心の演技が相まって、地味ながらも味深い作品と思った。
 宮沢りえさんが取り沙汰された本作だが、俺は真田広之に衝撃を覚えた。
 一つ一つの目配りから抑揚ある台詞回しと、どこをどう抜きあげても最高の演技と思った。
 脚本の妙に現代らしさもちらりと取り入れる監督の手腕も流石だし、ヒリヒリとした武士の気迫を体現した田中泯さんの演技も、もう言うことない出来だった。
 寅さんも大好きだが、日本映画界の至宝、山田洋次さん、いつまでも応援しています。
と、読み返して全くもってレビューになってないけど、つまりは邦画を好きになるキッカケになる作品だと思います。

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4.5山田洋次監督の最高傑作かも

2020年5月7日
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私ははっきり言うと山田洋次が嫌いである.彼の作る映画は映画ではない.お正月映画だ.寅さんシリーズのような派手さのないお茶の間的なものは映画館という特別な空間では見たくない.だから映画監督とは認めないと言いたいくらいだ.しかしそんな中この作品だけはどうしても認めないわけにはいかないと思った. 完璧なストーリーで文句の言いようがないから.まああえて文句を言うのならいつものように撮影した写真が美しくない.最高に才能のあるカメラマンが最高に金をかけてこの映画を撮っていたら本当に歴史に残るくらい素晴らしいものになっていただろう.

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タンバラライ

5.0なるほど素晴らしい。

2020年2月16日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

幸せ

日本の数々の映画賞を受賞、そして海外でも高く評価された作品ですが、今頃はじめて観ました。
ふむ、なるほど素晴らしい。
ストーリーや脚本はけして面白いというわけではありませんが、不思議とすごく映画の世界に引き込まれました。
これはきっと山田洋次監督の演出技量の凄さなのでしょう。
そして真田広之さんの演技が素晴らしい。宮沢えりさんの演技が素晴らしい。
あらためて映画は出演者の演技が上手いといい作品になるということを体感しました。

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光陽

5.0実生活の運命の流転が刻まれた宮沢りえの全存在と、ヒロインの境遇が激しく共振しており、深い感動と余韻をもたらされました

2020年1月9日
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鑑賞方法:VOD

始まっていきなり感情を鷲掴みにされました
まだ物語も始まってもおらず、感動的なシーンでもありません
何のことのない、山、河、田畑その光景
日本の原風景です
そこに巨匠中の巨匠冨田勲の格調高い音楽が流れる
それだけで涙腺か緩みました
後はもう泣かされ放しです

そして宮沢りえの登場
29歳の姿です
12歳でぼくらの七日間戦争に出演してから、17年後の姿です

実生活の凄まじいほどの流転が、姿形、美貌、立ち振る舞いにと、その全存在に苦労が刻まれているのがまざまざと感じられます
それが劇中のヒロインの境遇と激しく共振しています
彼女の出演が本作を成功に導いたのは疑いようもありません

劇中、たそがれと朋江はわずか3年しか夫婦として暮らせなかったとラストシーンで語られます
しかしその3年が無ければこの二人に何の生きていた値打ちがあったと言えるのでしょうか

それもまた宮沢りえの運命とともに共振して深い余韻をもたらしました

永遠の名作です

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あき240

0.5真田広之以外はアクションできません

2019年9月25日
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そうゆうことで、剣の立会は無残です。
他の演技も、なぜか真田広之以外は、大根ぞろいでした。
残念

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アサシンⅡ

4.5ってか、真田と宮沢が演じたら下手な脚本でも最高の時代劇になるでしょ? 笑

2019年9月1日
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ってか、真田と宮沢が演じたら下手な脚本でも最高の時代劇になるでしょ? 笑

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Daichi Kitakata