「名作は色褪せない。」千年女優 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
名作は色褪せない。
10年ほど前に一度鑑賞し、物凄い強烈な印象が残っていた本作。当時は今敏監督という有名監督のことも知らず、単純に「友人に勧められたアニメ映画」として鑑賞していました。時が経ち、映画の知識も深まった今になって、地元の映画館でリバイバル上映されると聞きつけて鑑賞いたしました。
結論、やっぱり面白かった!!!
現実と回想と作品の境界が無くなっていくような不思議な世界観で描かれる、藤原千代子という女優の生涯。最後には温かい気持ちになって終わる。本当に良かった。
今は亡き今敏監督の作品が、2024年に映画館で鑑賞できるなんて夢のようでした。おそらく私以外の観客も今敏監督のファンのようで、半分以上の座席が埋まるくらいの観客がいたのに、スタッフロールで席を立つ人が一人もおらず、上映終了後に誰一人として会話せずに黙って劇場から退出するのが印象的でした。
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かつて一世を風靡したが、人気絶頂の30年前に突然芸能界から姿を消した人気女優・藤原千代子。彼女の行方を突き止めた小さな映像制作会社社長の立花は、ドキュメンタリー作品を製作するために、彼女が隠居生活を送る山奥の屋敷まで取材に訪れた。今まで取材を全て断ってきた千代子が立花の取材を認めたきっかけが、立花の持参した一本の古びた鍵。立花から鍵を受け取った千代子は、彼女の半生と、その鍵にまつわる思い出を語り始める。
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とにかく展開が目まぐるしく、今自分は藤原千代子の回想を観ているのか、現代の話を観ているのか、映画の情景を観ているのか、分からなくなります。鍵にまつわる思い出話を語っていたと思ったらいつの間にか彼女が演じた映画のワンシーンの描写になってたり、過去の回想の話をしていたと思ったらいつの間にか現代のインタビューシーンに変わっていたり。今敏監督の作品『パプリカ』を観た時に感じたような、夢と現実の狭間が曖昧になっていく不思議な感覚を味わいました。
かつて一度だけ会った名前も知らない画家の男から預かった鍵。再び彼に出会うために奔走する一途な千代子の描写は胸を打たれます。ずっとずっと彼を追い続けてはいたけど、長い時を経て彼の顔も思い出せなくなってしまうシーンの何とも切ないこと。
今敏監督の独特な世界観にマッチした平沢進氏の楽曲群も素晴らしい。主題歌の『ロタティオン(LOTUS-2)』だけじゃなくて劇伴も彼が担当しているそうですが、劇中の要所要所で彼の音楽が聞こえてくるとテンションが上がりますね。私がファンだからという贔屓目もありますが。
とにかく本作は言葉で表現するのが非常に難しい作品です。「とりあえず観てくれ」としか言いようがないですよね。
オススメです。名作です。ぜひご覧ください。