「恋の始まり 千年の終わり」千年女優 マスゾーさんの映画レビュー(感想・評価)
恋の始まり 千年の終わり
原節子(1920-2015)
その可憐さで「永遠の処女」と呼ばれた
戦前・戦後の日本を代表する女優
小津安二郎監督が大変重用し
「青い山脈(1949)」「東京物語(1953)」などの
名作に多数出演も
1963年早世した小津安二郎監督を
弔うと突然女優業を引退し鎌倉に隠居
その理由は
「老いた姿を見せたくなかった」
「健康上の理由」
「戦中に戦争参加した責任感から」
など色々言われたが
最後まで明かされなかった
公の場には映画関係者の葬儀にひっそりと
姿を見せるのみだったという
その美貌に生涯独身を貫いたことから
「日本のグレタ・ガルボ」とも言われている
千年女優はこの原節子
(厳密には昭和の名女優のエピソードと
含まれるが)をモデルにした
藤原千代子が一人の男性「鍵の君」
を追い続けた女優人生を入れ子構造で
継ぎ目なく追った作品
この作品は5年前に特別上映で観て
今回久しぶりにまたやるので
観に行ってきました
やはり面白い
ホントこの作品一度始まったら
最初から最後まで一気に突っ走る
金曜ロードショーでCM挟んだら
絶対ダメな絶妙のテンポ
いちいち止まらない
千代子の映画の中に
立花と井田が入り込んでしまう構造
負傷した政治犯「鍵の君」が
落としていった鍵を握りしめ
彼を追いかけて女優となり逃亡先の
満州の撮影に向かうひたすら
彼を追いかけ走り続けるキャリア
そして焼け落ちる城で捕らわれた
彼に必ず会うために老婆から
千年長寿酒をあおり受けた千年の呪い
5年ぶりに観るとそれらは
すべて千代子の内面として
表現されてるんだなと思いました
男と千代子を結びつける「鍵」
生きているかどうかもわからない
鍵の君を追いかけ続ける「呪縛」
作品の中でも追いかけ続け
次第に年老いていく自分
どんどん入ってきます
そして物議をかもしたラストのセリフ
"だってあたし
あの人を追いかけているあたしが
好きなんだもの"
一途に追いかけていた
と思っていた人は肩透かし食らった
そうですが自分は
女優も自分を客観的に映像として
観れてしまう仕事でしょうから
何の違和感も感じませんでした
それをやる自分が好きでなければ
それは続けられない
鍵の君を追いかけることだけが
生きがいではなかった
これほど力強い前向きな終わりは
なかったのではないでしょうか
今敏監督作品一通り好きですが
やっぱりこれが最高傑作かなぁ
タイトル、『旅のおわり世界のはじまり』を思い出しました。
仰るとおり、CM挟んじゃダメですね。
一途なだけだと、ロマンチックではあってもリアリティはなくなります。
幻惑的な世界観からの急転換も、本作の魅力でしょうか。