自殺サークルのレビュー・感想・評価
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あの俳優も、ぽぽぽぽーん
「愛のむきだし」などの作品で知られる園子温監督が、石橋凌を主演に迎えて描く、サスペンス作品。 それまで徹底して抽象的な描写を積み重ねる作風で、観客の想像力と嫌悪感を親切丁寧に刺激する作品を作り上げてきた作り手が初めて、劇場映画を意識して娯楽色を打ち出して制作したのが本作である。強面の刑事に石橋凌、電波な犯罪者に、当時注目を集めていたROLLYと、観客の正統な評価を考えたキャスティング、改めて作り手の本作への強い意欲と覚悟を感じさせてくれる。 が・・・やはり、映画作りに対する姿勢はそう簡単には変わらない。54人の女子高生が集団自殺という冒頭から観客を平手打ちするような導入部。ここからサスペンスは静かに、じわじわと観客を追い詰めていくのが常套手段というものだが、本作はこの視点からも不親切である。じわじわどころが、各場面が総力を挙げて観客を残酷劇場へと全力で突き飛ばしていく。 相撲で言えば、駆け引き無しの突っ張り、突っ張り、なぎ倒し。陰湿な空気感の中で、現在の作り手の代名詞ともいえる鮮血、残酷、アングラ人間が所狭しと大暴れし、見事にサスペンスを通り越してイヤラシイコメディ空間が観客の思考を支配していく。 現代社会への風刺と、「生と、死」の曖昧な境界線への違和感を軸に、ドラマは展開されているはずだが、もう作り手の妄想と興奮の独壇場。恐らく、観る者は優しい眼差しで見守ってあげるのが人情というものだろう。社会派の味付けは、建前ぐらいに考えた方が良い。 今、様々な映画作品やバラエティで人気を獲得している田中圭、金子貴俊も悲しいほどにチョイ役で、ぽぽぽぽーんとやっている。良く目を凝らして、探していただきたい。とにかく、馬鹿馬鹿しい不条理物語に対して、素直に「いやいや・・」と一人突っ込みを入れて楽しむのが賢明の一本だ。 一人で、と敢えて限定したのは意図的だ。恋人とまったり観るのは・・・その後の料理が不味くなるので止めた方が正解と思われる。
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