劇場公開日 2002年3月9日

「それではみなさんさようなら。」自殺サークル kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5それではみなさんさようなら。

2021年8月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 屋上の高校生たちの中に田中圭がいた。彼らの会話や自殺に至るまでの雰囲気が自然で、原因が何なのかさっぱりわからない雰囲気。冒頭の新宿プラットホームでの女子高生集団自殺は衝撃的だったし、54人の中でも学校がそれぞれ違っていて謎ばかりが残る。集団催眠?ローティーンのアイドルグループ“DESERT”の歌がサブリミナル効果のように挿入されている構成も不気味だった。

 警察(石橋凌、永瀬正敏、麿赤兒たち)の捜査や、石橋の家族がネット情報に踏み込んだ捜査をするサスペンス要素に加え、情報提供したコーモリ(嘉門洋子)や自殺した男の恋人ミツコといった視点で進む複合ミステリーとなっていた。

 しかし、様々な伏線、皮を繋ぎ合わせたロール状のグロい視覚効果や特に子どもの声による「あなたはあなたと関係してますか?」という謎のメッセージが耳に残るものの、それを回収し切れていない。死に至るのは個々の精神の不一致とでも言わんばかりの迫力。ではあるが、他人との関係性は否定していないところが難解だった。

 『紀子の食卓』(2005)を観てから、見たい見たいと思い続けて14年目にしてようやく鑑賞することができた(生きててよかった)。人間関係が希薄になっている現代社会において、自我の確立以降、自分と向き合えてない人が多いのだろう。それを自殺という衝撃シーンを断片的に散りばめることによって問題提起した形となったのかと思う。ただ、続編で解決しているかどうかは謎。

 また、ROLLYや彼の手下の存在は意味があったのかはわからないけど、名前が鈴木宗男だったことが笑える。まぁ、あの頃は映画の登場人物名で社会問題を風刺した作品が結構あったからな~その一つなのでしょう。その後の鉋で皮を削るシーンや観客席の子どもたちの映像がむちゃ怖い・・・

kossy