EUREKA ユリイカのレビュー・感想・評価
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またバスに乗って
青山真治監督作品。
凄い作品をみました…。
とにかく凄い。物語が、語られ方が、カメラワークが、省略が、、、凄い。
大きな物語が失墜してしまったポストモダンで私たちはどう生きるか。
私たちは沢井がバスの運転をするように、取るに足らない日常を往還して生きている。そんな日常にバスジャックという〈出来事〉が到来しても、バスジャック犯を撃退するようなヒーローにはなれず、トラウマを抱えて「以後」を生きざるを得ない。しかも家族には疎まれ、古き良き共同体の中で生きることもできない。私たちはあまりにも孤独に一人で生きないといけない。
そんな生き方は、バスジャック事件を生き残った兄妹のように、死へと放棄されていく。しかしそれでも生きなければいけない。ではそれはどのようにか。それが沢井と梢、直樹の邂逅と生への営み、バスでの旅によって「発見」されていく。
その「発見」について言うには、全てのショットについて言葉で語らなければならない。だがそれは不可能な営みだ。だから〈私〉が〈私〉自身で本作をみて、〈私〉の仕方で「発見」をしなくてはいけない。とにかくみなければならない。
ひとつ言えるとしたら、「哀悼すること」だろう。絶えず哀悼する旅に出向くこと。けれど日常に帰る道筋はあるのだろうか。そしてどのような日常に帰るのだろうか。
その答えにはたどり着けていない。私の「発見」の旅は往路の途中でしかないのかもしれない。
小説を映像で読む
2023
89本目
長いので心を委ねて観る作品。
編集すれば2時間に収まるだろう。
しかしそれでは意味がない。
これは見た人しかわからないだろう。
3時間半を超える作品にほとんど台詞は無く、役者の表情と音だけ。
故に役者は物凄く大変だっただろう。
宮崎あおいさることながら、ナオキ演じる宮崎将さんの目が本当にすごかった。
バスジャックに巻き込まれて生き残った3人を軸に再生物語だが、まあ台詞が少ない分、頭で考える時間が非常に疲れてしまった笑
セピアカラーなので、エモショーナルな印象だが他に目がいかないので役者の演技にどっぷり集中できる。
最後まで見切るも、満足感などは無い。
あの後、幸せになれるのだろうか??
おそらく、沢井さんは遠からず…
彼女を信じるしかない。
と色々と考える作品でした。
映像が醸し出し時間に身を委ねる。
「北九州サーガ」
秋彦を演じる斉藤陽一郎が登場しカメラでパシャり、同じような経験を忘れた頃に語り始め『Helpless』で感じた無機質な雰囲気が漂いながら光石研は新たな役で、必要が無くなったみたいに感情を捨てたような兄妹に寄り添い自分を取り戻す旅なのか、奇妙に思える三人の関係性が良い方向へと進んでいるのかすら半信半疑のまま。
善悪の判断がつかない、全てを黙認しながら微かな表情や行動で意思表示をしている宮崎あおい、あの兄妹を見ていると原因となったバスジャックが本当に致命的だったのか、全てを投げ出した役所広司の行動は大人だから、まだ子供である兄が逃げ出す術はあの方法しかなかったのかもしれない。
純粋無垢だからこそ見え隠れする狂気性と変な方向で観てしまう、自分の人生を振り出しに全てをやり直す為には兄妹の側にいる事と、何かしらの責任感では無いように、わかり合うことはないにしろ、強く引かれあっている三人に思える。
余白たっぷりの最長映画体験
評判が良かったのは聞いていたので、早稲田松竹にて上映されるとあり、映画館で鑑賞。
3時間半を超える映画鑑賞は過去最長。
フィルムでの上映だったので、乱れがあるも、久々すぎて懐かしいと共に心地いい。
作品全体の雰囲気は、セピア色調なのもあいまって終始暗い雰囲気である。
登場人物がひたすら話さなかったり、引きの長回しが多かったりと、鑑賞者の感じる余白がたっぷり。
流石にウトウトしたタイミングがあったが、あれこれ考えながら観ると自然と頭が冴えてくる。
セリフが少ないからこそ、兄妹ふたりの演技はさすが。
宮崎あおいは小さい頃から不思議と吸い込まれる表情である。
秋彦が浮いてはいるが、思い返すと暗くなりすぎないようにアクセントになっていたか。
再生の物語、ということはわかるものの、一度見ただけでは到底理解できないものではあるので、考えを深め、干渉を重ねたい。、
キング・オブ・ムービー
コンコン コンコン
無言で、心へのノック
文中にURLを貼ったために(=当サイト規則違反) レビューが削除されてしまいました、
共感とコメントを下さっていた皆さん、ごめんなさい。
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言葉を失う凄惨な事件を共有した、中年のバスの運転手と、乗客だった遺児たちのロード・ムービーです。
事件から受けたPTSDをば、お互いに言葉にして話し合うとか、慰め合うとか、それさえも出来ないあの3人が、虚ろな視線ながら、3人を繭のように包むバスの車内で、窓辺をコンコンと叩きます。
モールス信号のように小さくノックをし、心臓にパルスを与え、命に心マを加えるあのシーン、
見ているこちらの胸をも激しく揺さぶり動かしました。
「扉を叩くひと」を思い出しました。
ノックは打楽器。
魂に直接響く原始の鼓動。
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ジョルジュ・ルオーの絵に「郊外のキリスト」という作品があります。
誰もいない村の通り。月が出ていますが逆光です。表情はよく見えません、
立ち尽くしている、子供だろうか 2つの小さな影に、いつの間にか後ろからそっと誰かが寄り添って立っている絵。
でもお互い顔も見ず、同じ方向を向いて、うつ向いたまま3人のシルエットが並んでいる絵。
この映画を見ながら思い出していました。
(2018年頃鑑賞)
コン、コン。・・・コン、コン。 コン、コン。・・・コン、コン。(生きてるか?生きてるよ。大丈夫か?大丈夫よ。)
あどけない宮崎あおいのアップから映画は始まる。22年前かあ。そりゃあまだ少女だものな。とにかく、ストーリーよりも出てくる役者を鑑賞する喜びが先にたった。肌も若々しい役所広司、すらりとした松重豊、ちょっとやんちゃそうな光石研、なんか印象が変わらない塩見三省とでんでん、おニャン子からどれだけ経ったのか国生さゆり、途中で気が付いた尾野真千子、、、。みんな若いなあ。と、そっちの楽しみを味わいながら。
話は、バスジャックに遭って、生き残った三人のその後狂わされた人生。ちょっと設定に無理あるも、無理があるからこその奇妙な人生なのだともとれる。ラスト、大観峰のショットは、どこか行き止まりの、最果てを感じた。この三人は(いや四人か)、この先どんな人生を歩むのだろうか。セピア色した世界に色がついて、それはせめてもの希望の証なのだろうか。
ただ、ちょっと長い。だけどこの長さがなければ伝わってこないものもある。
ユリイカ、、我発見せり。
最近はアニメのせいかついついエウレカと読んでしまいます。
題材がPTSDで興味が有った事と若い頃の宮崎あおいを見たかったと言う理由で2001年公開の3時間以上ある本作に挑みました。その他キャストも今見ると超豪華で皆んなキラキラしてて若いです、光石、松重、椎名、小野、、それだけでも観る価値あるかもしれません。
バスジャック事件の生き残り3人が物理的、精神的にも崩壊した状態から這い上がろうとする結構重い内容ですが張り詰めた緊張感、リアルな演技。色を失った世界に取り残されたようなロングショット。手足の長い宮崎あおいが可愛いし、カッコいい。どれをとっても素晴らしくて全く退屈せずに最後まで観れました。
エンドクレジット後拍手があり、ようやく青山真治監督の追悼上映である事に気付くほど、自分は彼の作品を見たことがありませんでした。まあ、あの当時は本当に日本映画に興味が無かったんです、、最後の方の海のシーンも「ベニスに死す」思い出して、かってに脳内で役所広司殺してました、すいません。
タイトル、、そして彼らが発見したのは何だったんでしょうか?コツコツと響く壁の音が孤立した自分が誰かと繋がっている、この世界に繋ぎ止めてくれている、自分独りではない安心感、あのシーンがそれだったのかなぁ、、、
個人的には青山真治と言う素晴らしい監督を発見した事でした、、、いささか遅過ぎましたが、、、南無。
テアトル新宿でデジタル・マスター完全版を鑑賞しました。以前レンタル...
みずみずしい14歳の宮崎あおい
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