「平成ガメラ監督作品と聞いて期待したがなんか評価に困る…逆説的にシン・ゴジラの完成度に気づかされた」ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃 閑さんの映画レビュー(感想・評価)
平成ガメラ監督作品と聞いて期待したがなんか評価に困る…逆説的にシン・ゴジラの完成度に気づかされた
監督は平成ガメラシリーズで有名な金子監督。だいぶ前だけど平成ガメラシリーズは3つとも見たし、わりかし面白かった記憶があるので期待していたが、今作はなんとも評価に困る。
平成ゴジラシリーズあたりからCG技術が向上して適宜取り入れられていく一方で、特撮とCGはどちらがより優れているか対立軸として取り上げられいろんな映画で色んな試行錯誤がされる。本作は90年代初頭のゴジラシリーズに比べればかなりCGを取り入れ特撮の割合が低くなったものと感じる。CGを多くしたせいで飛翔するモスラ、力強く登場するキングギドラなどがかっこよく表現できる一方で、当時としては最新鋭でも流石に2020年代から見ると境目がはっきり見えてしまうCGはリアルさを欠いてしまう印象。CGと特撮は共存するのか、それとも特撮が捨てられCGへ移行していくのか、その在り方を探る混迷期の作品に見える。これから見るとシン・ゴジラは精巧な特撮模型をふんだんに使用して実写かと見間違うようなリアルな画を作りつつ、境目や違和感を感じさせないCGでビームなどをリアルに表現する、という完璧な回答を示して見せたんだなあと気づかされた。
ストーリー面では今作は初代ゴジラとつながりがあるうえで、ゴジラが太平洋戦争の英霊が平和ボケした日本に喝を入れるためゴジラになって現れた、そしてそれを護国を守る聖獣3匹(+人間)が倒すというもの。あわせて監督個人の政治的主張なんだろうか有事に備えた軍備の必要性の主張、軍・軍人への称揚といったメッセージが随所に登場。これまでにないゴジラの新解釈はまあいいとして、太平洋戦争の英霊がゴジラとして日本を滅茶苦茶に破壊したうえで自衛隊と対決するってストーリー…それでいいのか?右の人にも怒られない?といらん心配をしてしまう笑。そのうえで自衛隊がゴジラにとどめを刺す方法が勝算があるかないか微妙な個人による特攻作戦…。旧軍のダメなとこ引き継いでません?なんか色々設定が迷走している感じ…。
あと「(ゴジラという)過去の悲劇を忘れている」というメッセージ・セリフは何度も登場する。これは多くの民間人・自衛隊員がゴジラの被害にあい無残に死んでいくという風なとこでも表現されるが、その一方で報道の使命として危険な現場に突っ込んでいく女性主人公…。報道が災害現場に突っ込んでいって二次災害起こした雲仙普賢岳の火砕流はこの映画の10年前だよね。過去の悲劇をもう忘れたの…?これまた設定が迷走してません??メッセージ自体はいいんだが矛盾する内容が随所に出てくると白ける…(まあそれをおいても女性主人公の人間ドラマパートはイライラさせられっぱなしだったけど)。
この点シン・ゴジラはセリフではなく映像で東日本大震災・原発事故という観客の記憶を呼び起こし恐怖を感じさせ、自衛隊はあくまで組織戦を展開するストーリーで、広げた風呂敷をきちんと畳みきり伝えるべきメッセージもきちっと伝えた感があり完成度が高かったんだなと思った。
各怪獣については豪華な顔ぶれのわりにあんまり印象に残ってない。まず白目のゴジラが怖い。バラゴンは完全サンドバックなうえ、タイトルに載せてもらえないの可哀そう笑。モスラは登場時間短かったな。定番の鱗粉攻撃もなく、ボコボコにされても這ってでも立ち上がるのがモスラのいいとこだが、それもあまりなく…。キングギドラだけ2回も復活してずるい。
なんか色々書いたが、シン・ゴジラが本作品含めこれまでのゴジラ作品をよく咀嚼しよく練ったうえで作られたことがよくわかる、というこの映画の評価なのかなんなのかよくわからない結論になってしまった。