「完全にオトナ向けに作られた、『クレヨンしんちゃん』映画の異色作!」映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
完全にオトナ向けに作られた、『クレヨンしんちゃん』映画の異色作!
国民的ギャグアニメ『クレヨンしんちゃん』の劇場版第9作。
オトナだけの帝国を築くことを企む組織「イエスタディ・ワンスモア」の野望を打ち砕くため、しんのすけたちが立ち向かう。
監督/脚本は原恵一。
『クレヨンしんちゃん』シリーズ最高傑作とも名高い本作を初鑑賞。
2001年公開。ひろしの様に子供時代に万博に参加した人は当時35〜40歳くらいな訳ですから、この映画は完全に子供に連れられて映画を観に来ている親をターゲットにしています。
『クレヨンしんちゃん』らしいギャグはありますが、全体としてはどこか寂しさを感じる暗さを携えた映画。
だからこそラストシーンのしんのすけのど根性に涙します。
ひろしの回想シーンはまるで催涙ガスの様に涙腺をぶっ壊します。
足が臭いという定番のギャグを物語の鍵として見事に利用しており、映画としてのうまさに舌を巻きました。
しかし、完全にオトナ向けな構成になっているなか、中盤だけは『クレしん』お馴染みのドタバタギャグが展開されており、それが映画全体の流れを悪くしてしまっているようにも思う。
『クレヨンしんちゃん』映画で『クレヨンしんちゃん』的ギャグを封印するというのも本末転倒のような気がするが、あえて今回はお馴染みのドタバタアクションは封印し、悪役サイドのケン&チャコの深掘りをして欲しかったですね。
20世紀vs21世紀、つまりオトナvs子供という構図が映画における重要なポイントである以上、かすかべ防衛隊はもっと活躍しても良かったのでは?
野原一家が世界の危機に立ち向かうというのはお馴染みの構図ですが、21世紀を築いてゆく子供達がケン&チャコと立ち向かい、オトナ達の目を覚まさせるという方が、映画としては筋が通っている様な気がしなくもないです。
使用されている楽曲はノスタルジアを感じさせる素晴らしいものばかりでしたが、エンディングテーマが小林幸子というのはちょっとやり過ぎな気もします。
ノスタルジーに後ろ髪を引かれながらも、それを乗り越えて先に進むというテーマなので、エンディングは『クレしん』らしい明るく楽しい楽曲にした方が良かったのでは?
21世紀初の『クレヨンしんちゃん』映画ということで、これまでとは違う層をターゲットにしたのだろうし、その意欲は十分に伝わるのだが、国民的アニメであるが故に、一定の枠組みに収まらなくてはならないという制約が、映画としての完成度にキズをつけてしまっているかも。
色々と言いましたが、気軽に観れるし、笑えるし、めちゃくちゃ泣けるシーンもあるし、観た後のノスタルジーで寂しくなるし、とにかく良い映画であることは間違いないです!
> ノスタルジーに後ろ髪を引かれながらも、それを乗り越えて先に進むというテーマなので
タイトルはオトナ帝国だけれど、最後は...というのが、この映画をただのノスタルジーではなくしていて、素晴らしいですよね。
子育て中子供達を連れてみにいってたんですがただの子供映画ではないのがクレヨンしんちゃん!私いつも感心します!子供映画の中でもクレヨンしんちゃんは一級品です!よね?