北帰行より 渡り鳥北へ帰る
劇場公開日:1962年1月3日
解説
山野良夫の原作を「紅の銃帯」の山崎巌が脚色。「母ぁちゃん海が知ってるよ」の斎藤武市が監督した渡り鳥もの。撮影もコンビの高村倉太郎。
1962年製作/79分/日本
配給:日活
劇場公開日:1962年1月3日
ストーリー
ギターと親友浩一の遺骨を抱えた渡り鳥の伸次が、函館に着いた。浩一の故郷がこの港町なのだ。二人は東京のナイトクラブの楽団員だが、麻薬中毒の浩一は何者かに殺されたのである。浩一の実家である岡野造船所を訪ねた伸次に、父の治五郎が剣もホロロだったのは、造船所の経営が思わしくないからだ。妹の由美だけは伸次に好意をもち、兄は幸江という女と結婚していると告げた。伸次はキャバレ・ロキシーに出かけて幸江を指名したが、ボスの黒川はその伸次をただの流れ者でないと見破った。事実、伸次が探しているのは浩一を殺した男だ。右手にサポータをはめた政としか判っていない。翌日、函館に着いたとき自動車事故でケガをした良太坊やを病院に見舞った伸次は、その母が幸江と知って驚いた。そのころ、黒川のもとに漢栄昌の使いと称するハジキの政が流れ着いた。黒川は五百万円の抵当に岡野造船所を乗ッとり、倉庫に改造して大儲けしようと企んでいた。漁業会社に勤める由美は銀行からの帰途、会社の金八十万円を黒川一味に強奪された。会社では由美と治五郎が仕組んだ狂言で、造船所の資金に流用したものと思い込んだ。これを知った伸次はロキシーに乗り込み、犯人のシゲから八十万円を取り返してやった。ある日、幸江が紫班病で入院、手術代を稼ぐため、伸次は夜の酒場でギターを流すうち、幸江は死んだ。その後、伸次はハジキの政と山頂で対決した。「待て、おれはハジキの政じゃない」と政が叫んだとたん、シゲの銃口が火を吐き、二人は谷底に転落した。漢栄昌の秘書が本物の政だと知った黒川の仕業であった。ロキシーで取り引きを済ませた漢栄昌と黒川を、伸次が襲うが、黒川の子分山岸は伸次の背後から拳銃を向けた。本物のハジキの政の指が引き金にかかった瞬間、その拳銃はすッ飛んだ。いつきたのか、--ニセの政--実は麻楽取締官立野が立っていた。数日後、函館港を出た連絡船の甲板から、伸次は町の灯を見やっていた。由美への慕情を胸に秘めて--。