ラブレター(1981)
劇場公開日:1981年8月7日
解説
三十歳も年上の詩人の女弟子、妹、愛人としてつくし、棄てられ、ついには発狂する女を描く。詩人、金子光晴との三十年に渡る愛の生活を過ごした大河内令子の話を聞き書きした江森陽弘の原作「金子光晴のラブレター」の映画化で、脚本は「仕掛人梅安」の田中陽造、監督は「四季・奈津子」の東陽一、撮影も同作の川上昭一がそれぞれ担当。
1981年製作/83分/日本
配給:にっかつ
劇場公開日:1981年8月7日
ストーリー
詩人の小田都志春が有子を愛人としてかこってから、もう六年がたっていた。“トシ兄いちやん”“ウサギ”と呼び合う二人が愛欲に耽けるのは長くて二日、短い時は数時間余りだ。都市春が来る日は決っておらず有子が待ちぼうけをくわされるのはしょっちゅう。寂しさが極に達したころ、決って彼は姿を見せるが、生活費だけは定期的に届けられている。奥さんの病気の看護に彼がつきっきりと聞いて、有子は寂しさで倒れてしまう。駆けつけた都志春は、畳の上にビニールを敷きつめ、行水で有子を洗ってやった。ある日、隣のアパートの女主人タヨの別れた夫、村井と近くの公園で話していた。都市春はそれを誤解して、「ウサギ、浮気したな!」と興奮して、彼女の内股に“とし”と刺青を彫ってしまった。都志春は、突然、有子を入籍して正式な妻にしたかと思うと、すぐに籍を抜いたりもした。有子はそんな彼の気紛れを全て許した。彼女の願いは、いつも都志春がそばにいてくれること、それだけだった。タヨのアパートの学生たちが酔っぱらって、家の庭にゴミを投げ捨て、有子と都志春の関係に嫌がらせをしてもジッと耐えた。やがて有子は身篭るが、都市春の反対で堕ろしてしまった。その頃から有子は、あらぬ妄想に取り憑かれ、精神が不安定になっていく。ついに、有子は入院させられた。経過は順調で、退院の日が迫った頃、都志春の急死を知らされた。有子の頭は一瞬、空白になった。通夜の日、有子は小田家を訪れ、慌てる弟子たちを尻目に線香をあげたが、死顔は最後まで見せてもらえなかった。「どうしてこんなに早く、地獄へ行っちやったの」とつぶやき、都志春の写真を見ると、有子はとめどなく涙をこぽすのだった。