妖星ゴラスのレビュー・感想・評価
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奇想天外・驚天動地、宇宙船地球号発進!
巨大隕石が地球に衝突しそうになるとアメリカ映画では、核ミサイルを撃ち込んだり相手をねじ伏せるやり方が多いけど、それが無理なら地球ごとお引越しと言う奇想天外ぶりが楽しいSF作品です。国連での日本の呼びかけで各国が最先端技術を共有し、南極に巨大ロケット噴射基地を建設するのは、まさに国境を超えて地球と言う同じ舟に乗り合わせている実感が湧き感動します。また、荒唐無稽なドラマであっても、ミニチュアの特撮技術は今観ても素晴らしく、基地の建設現場やゴラスの禍々しいデザイン、ゴラス接近による災害シーンは迫力があります。役者では、群像劇的な作りだけど、あえていぶし銀の志村喬推しですね。
巨大彗星衝突の危機!じゃあ地球を動かそう!最高っす!ミニチュア特撮の贅沢!
時に1980年(公開時の18年後の近未来)。
各国は、宇宙船や宇宙ステーションを飛ばし、調査の手は太陽系の各惑星に及んでいた。
ある日、質量が地球の6,000倍あるという黒色矮星・ゴラスが太陽系に接近。
このままだと、地球と衝突することがわかる。
その時、果たして人類は?
彗星が地球に激突!という話は昔から数あれど、「じゃあ、地球の軌道をずらして、よけましょう」という奇抜で明快なアイディアが抜群の作品!
まさか、40年後、2000年にこのアイディアを真面目にパクった小説「流転の地球」(彗星は来ないけど…)を書く人が出るなんて。(2019年に映画化)
さらに本作では、ちゃんと、彗星爆破計画も並行進行していて、平田明彦艇長、久保明らが乗る鳳号が調査した結果、大きさが地球の4分の3なのに、質量が6,200倍もあり、爆破不可能という結論に至ったことも描いていて、さすが。
監督:本多猪四郎×特技監督:円谷英二、東宝特撮映画の常連俳優陣からなる傑作SF特撮映画です。
ただし今回、音楽はゴジラの伊福部昭ではなくて、石井歓(伊福部昭が尊敬した舞踊家、石井漠の長男だが直接接点があるわけではないというネットカキコミあり)ですが、伊福部先生そっくりのフレーズもあるので、チェックしてみてください。
次々に繰り広げられる特撮シーンは、宇宙を進む妖星ゴラス、宇宙ステーションと宇宙船、南極ロケット基地の建設、そしたら南極の地底にセイウチ怪獣が出現し、工事の邪魔を!と見所満載。
一大宇宙災害特撮絵巻になってます。
(それにしてもマグマの出現が突然すぎ。地面を崩して登場のカットとかまったくなく、地震かと思ったら、ジェットパイプを踏みつけてる!)
その怪獣マグマの着ぐるみは後に、ウルトラQのトドラに流用、マグマを攻撃する国連のVTOL機のミニチュアは、ウルトラマンのビートルに流用(wikiによると同じ金型使用)、ウルトラマンのイデ隊員を演じた二瓶正也、ウルトラQの主演・佐原健二、西條康彦 も本作に出演していて、東宝と円谷の関係を垣間見れます。
そして、大災害から水没した東京のシーンは、多摩川にミニチュアを沈めての、オープン撮影など、さまざまに工夫された特撮シーンが楽しめます。
冒頭では政治家たちが、ゴラスの危機より隼号の艇長の責任問題に終始していたりする点は、現代的。
しかし、途中から政治家たちは出番がないと悟り、そこからは全編、政治家や軍隊ではなく、国連の科学者たち主導になるのがいい。
国連では各国のエゴを捨て、技術の機密も公開しようと決議。
アナウンサーは世界の団結を高らかに伝え、勝利を歌うクライマックス!
さあ、これから軌道を戻すのが大変、ってもう最高です!!
驚天動地の作戦に真実味を持たせる
東宝特撮映画50本記念作品。
DVDで2回目の鑑賞。
地球に迫り来る怪彗星ゴラスは、赤色に煌々と輝いていて、人類に災厄を齎そうとする凶々しい雰囲気が堪らない。
土星の輪や月を吸収しながら、地球を目指してまっしぐらに進行していく様を描いた特撮が素晴らしい限りだった。
ジェット・パイプ敷設シーンでは、広大な南極のセットでスケール感を演出。南極の大地から吹き上がるジェット噴射の火力を見ていると、「もしかしたら本当に地球は移動出来るのではないか」と納得させられるほどの説得力があった。
クライマックス、大津波のスペクタクルに目を見張る。全てを押し流す津波の猛威に大自然の怖さを実感させられた。
自然法則を人工的に曲げる行為は大いなる代償を伴ったが、無事ゴラスを回避することに成功し、見事な大団円だ。
突如出現したトド怪獣マグマははっきり言って蛇足感が否めないが、スタッフのサービス精神として個人的には好きだ。
マグマを退治したVTOLの模型は、後に「ウルトラマン」に登場するジェットビートルへと改造されたそうである。
ゴラス衝突までの時間的余裕が無い中、見舞われる数々のトラブルにハラハラ、ヒヤヒヤした。度重なる困難を乗り越えようと決死の覚悟で奮闘する人々の物語が胸に迫って来た。
本作は特撮作品にしては珍しく時間の経過が年単位であるから、東宝特撮ユニバースから外した方が良いかもしれない。それとも、ここは流行りのマルチバース理論を持って来るか。
[余談]
荒唐無稽な作戦に真実味を持たせるため、エンタメ性を残しながらも、出来得る限り科学考証にこだわって映像化されているところが、本作が名作足る所以のひとつであろう。
本多猪四郎監督は撮影前、必要な知識を身につけるため東大理学部に1ヶ月間、助監督と一緒に通ったそうだ。ドキュメンタリー・タッチを成し遂げるための努力に驚嘆である。
[以降の鑑賞記録]
2020/09/16:Amazon Prime Video
※修正(2025/01/12)
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