妖星ゴラスのレビュー・感想・評価
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史上初が多く世界の特撮映画に大きな影響を与えた重要作品
地球に隕石なりが衝突して大災害となる
そんなモチーフは今から考えれば、ありがちのお話しと思えるだろうが、1962年の公開時点では間違いなく世界初、誰も考えたこともないし、もちろん映画になったこともないものだ
本作がこのモチーフの開祖である証拠に、本作の次にこのテーマを取り上げた映画は、1979年のメテオまで17年も後のことになるのだ
誰もが知るアルマゲドンや、ディープインパクトになると更に19年後の1998年になる
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2020年11月加筆
1951年の米国映画「地球最後の日」が元祖です
全く失念していました
お詫びして訂正致します
その作品では地球は他天体と衝突して最後の日を迎えます
しかしその作品は極少数の選ばれた者だけが宇宙船で脱出すると言う物語です
本作のように地球そのものを動かして衝突を避けるという肝の部分は全く本作が史上初のものです
ですから本作の独自性は大きなものがあり、その価値が揺らぐものでは有りません
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劇中の台詞にあるように、地球が助かるには爆破するか、地球が逃げるか、二つにひとつしかない
どちらもできなければそのままぶつかるかしかない
先に挙げた作品も全てこの三つのバリエーションなのだ
その中でも最も映像化が難しく荒唐無稽な物語に、本作は挑戦しているのだから恐れ入る
しかも、このモチーフに史上初で取り組むのにだ
本作は特撮ファンなら良くご存知のとおり、後のウルトラQ や、ウルトラマンに継承されている点が幾つもある
俳優なら佐原さん、二瓶さん
メカなら科学特捜隊のビィートルになるVTOL機
怪獣ならウルトラQに登場するトドラ
これらは超有名なことだ
劇中歌「俺ら(おいら)宇宙のパイロット」は宇宙戦艦ヤマト2199の「銀河航路」の元ネタであることも有名だ
本作の中で予算が通らず計画が難航するというお話しも世界のSF 映画を見渡しても史上初だろう
予算問題を取り上げてくるのは、1966年のタイムトネル、1970年の謎の円盤UFOがある
特に後者は予算委員会と委員長がストレイカー司令官に立ちはだかって嫌みを言うシーンは本作が多大な影響を与えたものだと思われる
アンダーソン作品はこの時期はまだまだのレベルであり、本作はじめ日本の特撮映画の影響を真剣に吸収していたのは間違いない
本作の南極基地建設シーンはサンダーバードに確実に影響を与えたと感じられる
しかし本作で頂点に達したかもしれないミニチュアワークは21世紀でもまだ価値を放っている
妖星ゴラスの接近による潮汐作用で大規模な高潮が発生する
ラストシーンでは関東一円が水没している
津波としか思えない高さの急激な海面上昇が東京を襲うシーンは東日本大震災の記録映像のような迫真さを持っており、CGによるエメリッヒ監督作品の津波映像よりも現実感があるくらいだ
地球防衛軍、宇宙大戦争で欠陥だった科学考証はかなり力を入れて来てだいぶマシにはなった
東大の天文学の助教授の手ほどきも受けており、根本的なところや端々ではなかなかやるなという映像も見せる
しかし付け焼き場なのは当時の限界だったのだろう
本作の公開は1962年3月
ガガーリンの史上初の有人宇宙飛行はその前年1961年4月のことだったのだから
宇宙の正しい科学知識は乏しかったのだ
ましてやブラックホールと言うような概念も学会でも発表すらされていない時代だったのだ
ともあれ、世界中の特撮業界が本作を手本にしてこれを上回るものを撮ろうと猛烈な努力をしたのは間違いないだろう
キューブリックが本作を観ているのは疑いようもない
2001年宇宙の旅には本作が元ネタになっている映像が散見されるのだから
本作のシーンを下敷きにした映像として、おおとり号のドックに宇宙カプセルを収容するシーン、宇宙ステーションにおおとり号がドッキングするシーンを挙げることができる
キューブリックこの映像を元に2001年宇宙の旅で遥かにグレードアップして凌駕してみせた
物語の始まりは1979年のクリスマスで、ラストシーンは1982年の2月という設定だ
面白いのはその1979年とはメテオの公開された年であることだ
そしてその丁度40年後は今年に当たる
そしてなんと中国が地球の軌道を変えてしまうという本作をベースにしたとしか思えない映画を公開しているのだ
「さまよえる地球(中国語:流浪地球)」がそれだ
これもなにかの巡り合わせによるものなのかもしれない
まだ観ていないが、ぜひ観て観たいものだ
中盤、宇宙パイロット達が宇宙省長官(大臣?)に直談判にヘリで向かうときに東京タワーが空撮でフューチャーされています
赤羽橋上空辺りからタワーを挟んで飯倉の交差点、神谷町、都心方向を望んでいます
真下の芝公園はもちろんですが麻布台も東麻布も空き地や木々が多く普通の民家がパラパラと見える程度
郊外のような光景でした
こういった映像も楽しめます
なぜ東京タワーが長々写されるのか不思議でした
もう完成して4年も経っているのですから
恐らく東京タワーは高度成長の象徴なのです
本編で日本は地球の危機に国際社会をリードして堂々と役割を果たそうとしています
失った自信を取り戻して、国際社会に再度乗り出して活躍していくのだという希望に溢れています
劇中歌「俺ら(おいら)宇宙のパイロット」を歌う若き宇宙パイロット達は60年安保で騒乱を起こした世代です
彼らも科学技術を振興して豊かに復興し国際社会に貢献する、新しい日本をリードしていって欲しいとの期待が込められているのだと思いました
その意味で本作は東京オリンピックを先取りした映画だったのだろうと思います
それが本当のテーマだったのだと思います
観なおしは良し悪し
昔、観て面白かったという漠然とした記憶しかない、同類が多いのか2か月待ちでやっと借りられた。
この種の衝突パニック映画の殆どは小惑星規模で爆破か進路変更可能な設定、ノアの方舟的な古典もあったが地球を動かす発想は本作しかない。なぜ無かったかと言えば奇跡の神頼みや魔法の物語と一線を画したSFならではの作家の矜持だろう。そもそも重量が6×10の21乗トンもある地球の軌道を短期間で変えて回避することは不可能、それを数字のトリックで一線を越えたのが本作である。
世界の終りは万人の関心事、原子力と数字を出せば科学的、大衆は崇高な犠牲者好き、インテリには古典の引用、年寄の考えそうな若者像、女性には恋愛要素、子供には怪獣(マグマ)、おじさんには美人、必然性のない入浴シーンでも見せておけば万事無難と言わんばかりの欲張り且つ安直な発想、東宝娯楽映画の典型パターン。東宝・特撮50本目の記念作品、いくら昔といえど豪華俳優陣、予算をかけてこの程度、初代ゴジラの真摯な志はどうしたのだろう。観なおしは良し悪し。
驚天動地の作戦に真実味を持たせる
東宝特撮映画50本記念作品。
DVDで2回目の鑑賞。
地球に迫り来る怪彗星ゴラスは、赤色に煌々と輝いていて、人類に災厄を齎そうとする凶々しい雰囲気が堪らない。
土星の輪や月を吸収しながら、地球を目指してまっしぐらに進行していく様を描いた特撮が素晴らしい限りだった。
ジェット・パイプ敷設シーンでは、広大な南極のセットでスケール感を演出。南極の大地から吹き上がるジェット噴射の火力を見ていると、「もしかしたら本当に地球は移動出来るのではないか」と納得させられるほどの説得力があった。
クライマックス、大津波のスペクタクルに目を見張る。全てを押し流す津波の猛威に大自然の怖さを実感させられた。
自然法則を人工的に曲げる行為は大いなる代償を伴ったが、無事ゴラスを回避することに成功し、見事な大団円だ。
突如出現したトド怪獣マグマははっきり言って蛇足感が否めないが、スタッフのサービス精神として個人的には好きだ。
マグマを退治したVTOLの模型は、後に「ウルトラマン」に登場するジェットビートルへと改造されたそうである。
ゴラス衝突までの時間的余裕が無い中、見舞われる数々のトラブルにハラハラ、ヒヤヒヤした。度重なる困難を乗り越えようと決死の覚悟で奮闘する人々の物語が胸に迫って来た。
本作は特撮作品にしては珍しく時間の経過が年単位であるから、東宝特撮ユニバースから外した方が良いかもしれない。それとも、ここは流行りのマルチバース理論を持って来るか。
[余談]
荒唐無稽な作戦に真実味を持たせるため、エンタメ性を残しながらも、出来得る限り科学考証にこだわって映像化されているところが、本作が名作足る所以のひとつであろう。
本多猪四郎監督は撮影前、必要な知識を身につけるため東大理学部に1ヶ月間、助監督と一緒に通ったそうだ。ドキュメンタリー・タッチを成し遂げるための努力に驚嘆である。
[以降の鑑賞記録]
2020/09/16:Amazon Prime Video
※修正(2025/01/12)
ゴラス・インパクト
東宝特撮1962年の作品。
地球に衝突迫る他惑星!…ってのはそれほど珍しいアイデアでもないが、本作はその対策アイデアにびっくり仰天!な一作である。
土星探検に出発した隼号であったが、太陽系に進出してきた妖星=ゴラスの調査に急遽向かう。データを地球に送りつつ、ゴラスの引力に捕らわれ、宇宙の塵に…。
そのゴラスが地球と衝突する軌道である事が判明。
ゴラスの質量は地球の6000倍。破壊する事は不可能。
そこで出された対策アイデアは、地球の軌道を動かしてゴラスとの衝突を避けるというものだった…!
あちらが動かせなければ、こちらが動く。
南極に幾つもの巨大なロケット噴出口を建造し、エネルギーは重水素や原子力。
凄まじい推進力で地球を動かす…。
一応科学的考証も劇中でされているが(国際対策会議の黒板に書かれてる数字は東大の専門学者が計算したというモノホン)、今となっちゃリアルかSFかとんでも理論か。
言うは易し、実際だったら異次元アイデア…それを娯楽作品にした勢いに最後まで面白く見れてしまう。
話は、南極計画の科学者たちとゴラス観測の若い宇宙飛行士たちのドラマが並行して展開。
科学で地球を救えるか。発展する科学の可能性。
若い宇宙飛行士たちのドラマはカラッと明るい青春明朗劇の様式でもあるが、迫り来るゴラスを目の当たりにし記憶喪失になる件はなかなかリアルさを感じさせる。
特撮面では、南極の広大なセットは東宝特撮作品の中でも随一。
宇宙空間でのライティング、作画によるロケット噴射の細かさ。
地球の軌道変えによって目覚めたセイウチのような怪獣の登場は、唐突と言うか噛ませ犬と言うか、蛇足…。まあ、ご愛敬。
(尚、この怪獣の名は作品に因んで“ゴラス”と呼ばれる事もあるが、正しくは“マグマ”である)
びっくりアイデア故、ツッコミ所は他の作品の比ではない。
地球を経って数日で冥王星付近でゴラスに遭遇する隼号。
地球の軌道は見事変える事が出来たが、地球全体への影響は例の怪獣が目覚めたくらい。
ゴラスの接近で土星の輪も月も吸い込まれ、地球上では天変地異レベルの大災害。でも実際だったらこんなもんじゃないだろうし、月が吸い込まれた時点で地球も…。
地球と衝突するかもしれない惑星の発見も実際だったら700日前じゃなく何十年も前に計算で発見出来る筈。
尻切れトンボな終わり方はエメリッヒ・ディザスター映画に通じるものがある。
異常なまでのテンポの早さ。ハリウッドだったら軽く2時間半であろう内容を僅か1時間半に収めるアメイジングさ!
この手のSFディザスター・パニックと言ったらハリウッドの十八番だろうが、「アルマゲドン」よりも「ディープ・インパクト」よりも遥か前に東宝は作っていた。
そのびっくりアイデアも含め、SF映画の迷作であり名作でもある。
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