劇場公開日 1962年3月21日

「昭和37年の未来予想図」妖星ゴラス Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0昭和37年の未来予想図

2023年11月15日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

楽しい

興奮

大きさで地球の四分の三、質量6000倍、
『ゴラス』と命名された黒色矮星が、突然(!)太陽系に現れただけでなく、地球に衝突するという。
人類存亡の危機に直面し、奇想天外、とんでもない方法で衝突回避を目指す姿を描く。
さて、人類の運命やいかに。

映画が公開されたのは、昭和37年。
映画の舞台は、昭和55年。
よって、映画は未来予想図なのである。

私の悪い癖で(?)、古い映画を見ると
画面の隅々から「時代の匂い」を嗅ぎたくなってしまう。

・館内放送?での時間の読み方が「ふたさんまるまる」(23時00分のこと)など、やはり旧軍調。
・日本政府が、当時の金で11兆8000億円(いまの25兆円相当か)かけて土星探検に出発させた宇宙艇『隼』は、ゴラスに衝突して全員遭難してしまうのだが、最後の瞬間に乗組員全員が万歳を唱える。
・隼の艇長役を務めた田崎潤はじめ、池部良など軍人あがりの俳優陣が見せる重厚な演技。
・挿入歌は、やや軍歌調。
・地方へ行くことを、「疎開しましょうよ」

その一方で、

・冒頭の着替えシーンや途中の入浴シーンなど、たぶん当時としては精一杯のお色気サービス
・ジェット機の飛行音、宇宙空間シーンの″ウィーン″という通奏低音、発射されるビーム音など、効果音すべてが、後年のウルトラシリーズと同じ(当たり前か笑)
・ブラウン管タイプの画面の小さなテレビ
・東京タワー、サンドイッチマン、繁華街の喧騒
・左ハンドルのタクシー(ハイヤー?)
・公開当時では、まだ珍しいはずのアパート
・当時まだ実用化されてないテレビ電話

など、「戦後17年目」に「戦後35年目」を空想したらこうなるんだ!、と感じさせる風物も満載だ。

とはいうものの、やはり最大の見所であり、
圧倒されるのは、VFXのない時代に「良くぞここまで!」と感嘆するしかない特撮技術だ。

宇宙船や宇宙空間、富士山麓の基地、無重力訓練の様子、津波、土砂崩れ・・・

これらを模型だけで再現するなんて(絶句)。

本当に、当時の技術陣の執念や努力には頭が下がる。

私のように懐古趣味で観るのも楽しいが、若い人には映画全編が、浮世離れした憧れの姿だと思いながら見ていただきたい。

Haihai