「ゴラス・インパクト」妖星ゴラス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ゴラス・インパクト
東宝特撮1962年の作品。
地球に衝突迫る他惑星!…ってのはそれほど珍しいアイデアでもないが、本作はその対策アイデアにびっくり仰天!な一作である。
土星探検に出発した隼号であったが、太陽系に進出してきた妖星=ゴラスの調査に急遽向かう。データを地球に送りつつ、ゴラスの引力に捕らわれ、宇宙の塵に…。
そのゴラスが地球と衝突する軌道である事が判明。
ゴラスの質量は地球の6000倍。破壊する事は不可能。
そこで出された対策アイデアは、地球の軌道を動かしてゴラスとの衝突を避けるというものだった…!
あちらが動かせなければ、こちらが動く。
南極に幾つもの巨大なロケット噴出口を建造し、エネルギーは重水素や原子力。
凄まじい推進力で地球を動かす…。
一応科学的考証も劇中でされているが(国際対策会議の黒板に書かれてる数字は東大の専門学者が計算したというモノホン)、今となっちゃリアルかSFかとんでも理論か。
言うは易し、実際だったら異次元アイデア…それを娯楽作品にした勢いに最後まで面白く見れてしまう。
話は、南極計画の科学者たちとゴラス観測の若い宇宙飛行士たちのドラマが並行して展開。
科学で地球を救えるか。発展する科学の可能性。
若い宇宙飛行士たちのドラマはカラッと明るい青春明朗劇の様式でもあるが、迫り来るゴラスを目の当たりにし記憶喪失になる件はなかなかリアルさを感じさせる。
特撮面では、南極の広大なセットは東宝特撮作品の中でも随一。
宇宙空間でのライティング、作画によるロケット噴射の細かさ。
地球の軌道変えによって目覚めたセイウチのような怪獣の登場は、唐突と言うか噛ませ犬と言うか、蛇足…。まあ、ご愛敬。
(尚、この怪獣の名は作品に因んで“ゴラス”と呼ばれる事もあるが、正しくは“マグマ”である)
びっくりアイデア故、ツッコミ所は他の作品の比ではない。
地球を経って数日で冥王星付近でゴラスに遭遇する隼号。
地球の軌道は見事変える事が出来たが、地球全体への影響は例の怪獣が目覚めたくらい。
ゴラスの接近で土星の輪も月も吸い込まれ、地球上では天変地異レベルの大災害。でも実際だったらこんなもんじゃないだろうし、月が吸い込まれた時点で地球も…。
地球と衝突するかもしれない惑星の発見も実際だったら700日前じゃなく何十年も前に計算で発見出来る筈。
尻切れトンボな終わり方はエメリッヒ・ディザスター映画に通じるものがある。
異常なまでのテンポの早さ。ハリウッドだったら軽く2時間半であろう内容を僅か1時間半に収めるアメイジングさ!
この手のSFディザスター・パニックと言ったらハリウッドの十八番だろうが、「アルマゲドン」よりも「ディープ・インパクト」よりも遥か前に東宝は作っていた。
そのびっくりアイデアも含め、SF映画の迷作であり名作でもある。