「素晴らしい傑作映画を堪能した幸福感の余韻が長く残ります 降旗康男監督の最高傑作と思います」夜叉 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい傑作映画を堪能した幸福感の余韻が長く残ります 降旗康男監督の最高傑作と思います
凄まじいばかりの傑作!
この作品における降旗康男監督は神がかっています
脚本、演出、撮影、音楽、配役、美術、何もかも最高だ!
最初から最後まで痺れ通しです
隅から隅まで美意識が行き届いています
最高峰のヤクザ映画でもあります
このジャンルの最高到達点だと思います
それなのに東宝なのです
東映岩がでてくると思っていたのに東宝マークが出て来てまず驚いてしまいます
いしだあゆみ、田中裕子、田中邦衛、そして高倉健
常連俳優達に当て書きされたような脚本と配役です
もちろんビートたけしの鬼気迫る名演技が本作を引き立ています
あき竹城も素晴らしい演技をみせています
修治を演じる高倉健は、中年から初老に差し掛かる男が見せる最後の足掻きにも似た焦燥感を巧みに表現しています
心の中の夜叉がそのまま老いさせてはくれないのです
本作のテーマでもあります
音楽も洒落ています
トゥーツ・シールマンスのハープが本作の世界を見事に支配してかつマッチしています
彼はジャズフュージョンハープの名手です
主題歌のナンシー・ウィルソンも良いです
この人はジャズボーカルの大御所
劇中でもジャズを上手くBGMとしており、田舎の漁師街の話を垢抜けたものにする魔術を発揮しています
冬の日本海の波濤、雪、曇天山陰の光景、そして美しい石造りのアーチ橋
木村大作のカメラは、それらを彼でしか撮れない美しい構図と色彩とレンズの味の映像で捉えています
彼のキャリアでも一二の仕事だと思います
ラストシーンの田中裕子の勝ち誇った不気味な笑顔
夜叉とは彼女のこの笑顔のことだったのです
これこそが本作の結論だったわけです
素晴らしい傑作映画を堪能した幸福感の余韻が長く残ります
降旗康男監督の最高傑作と思います
矢島が殺された千日劇場跡はいまのビッグカメラが建っているところ
正にミナミのど真ん中です