劇場公開日 1995年12月23日

「BS松竹東急で放送して!!」MEMORIES TRINITY:The Righthanded DeVilさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0BS松竹東急で放送して!!

2024年9月21日
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鑑賞方法:映画館

笑える

知的

『AKIRA』(1988)で世界に名を轟かせた大友克洋が製作総指揮と、一部監督も兼ねた三部構成のアニメ作品。

 EPISODE.1 「彼女の想いで」

 宇宙空間の廃墟からの救難信号で駆け付けた4人乗りの小型宇宙船。彼らがそこで遭遇したのは─。
 人格を持ったコンピューターが人を襲うというプロットは『2001年宇宙の旅』(1968)も含めSFの定番だが、ホログラフィーを使う点が画期的だし、この作品の真骨頂。
 劇場版アニメ作品は普段は見ないが、圧倒的映像表現に、このエピソードだけで充足させてくれる。アニメ映画恐るべし。
 音楽も本格的で素晴らしい。これぞまさしくスペースオペラ?!
 個人的にはこのエピソードがいちばん最後の方がよかった気も。
 ミゲルが「想いで」に取り込まれるラストは何かに似てるなと感じながら見ていたけど、思い出した。
『シャイニング』(1980)ですね。

 EPISODE.2 「最臭兵器」

 山梨県の新薬開発現場に勤める若手社員の田中。風邪をこじらせ、風邪薬のサンプルと思って開発途中の新薬をかってに飲んだばかりに、とんだ大騒動に─。
 些細なことが大袈裟な話に発展し、オチを付けて終わるのは、伝統的な落語の手法(サゲ)だが、大袈裟具合が半端じゃない。アニメならではの見せ場満載。
 エピソードのタイトルで、ほぼネタバレしているとはいえ、田中がどのような変異を遂げるのか、もう少し引っ張って欲しかった。

 EPISODE.3 「大砲の街」

 製作総指揮の大友克洋みずから監督も兼ねた寓意的短編。
 アニメファンの方から怒られるかも知れないが、前の二作品は今の技術なら実写化も可能。ただし、本エピソードだけは別。

 砲弾を製造し、大砲を撃つことだけにすべてが浪費される不毛な街。
 一体誰と、何のために戦っているのか知らされないまま、日々の教育や報道で砲撃手に憧れる少年は、朝晩、砲撃手の肖像画への敬礼を欠かさない。実際の砲撃手が太った醜い中年とは知らずに─。

 精緻で流麗な線画でそれまでの「汚い」「荒い」といった劇画のイメージを一新させた大友が、悪趣味な風刺画のように敢えて醜くデフォルメした人物像を通して人間の愚かしさや単純さを具現化。人間の深層を大胆かつシンプルに戯画化した表現力は、下手なメイクや安直なCGでは到底及ばないだろう。
 長回し映像のようなワンカットの手法も秀逸。

 この作品の公開当時、「大砲の街」に込めた反戦メッセージを見誤る人はいなかっただろう。しかし、過激なゲームが当たり前になり、SNS上では攻撃性剥き出しの情報が飛び交う現在の若者は、「大砲の街」をどのように受け止めるのだろうか。作品のメッセージが今後も正しく伝わることを願いたい。

 松竹配給作品。
 だったら、BS松竹東急でも放送して!!

TRINITY:The Righthanded DeVil