MEMORIES

劇場公開日:

解説

ジャパニメーションの先駆者・大友克洋の製作総指揮で贈る3話構成のファンタスティック・オムニバス。監督は「とべ!くじらのピーク」の森本晃司、OVA『うる星やつら(ヤギさんとチーズ)』の岡村天斎、そして「ワールド・アパートメント・ホラー」の大友克洋。芸術文化振興基金助成、東京国際ファンタスティック映画祭参加作品。

1995年製作/114分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1995年12月23日

ストーリー

「彼女の想いで…」2092年の宇宙空間。ハインツとミゲル、イワノフ、青島の四人は、宇宙に浮遊する難破船など、いわゆる宇宙のゴミを回収する業者をしていた。ある日のこと、彼らは宇宙の墓場と呼ばれるサルガッソー宙域から『マダム・バタフライ』のオペラと共にSOS信号をキャッチ。早速救助へ向かうが、そこには巨大な薔薇の形をした宇宙船が浮遊していた。潜入したハインツとミゲルは、中で立派なお屋敷やオペラ劇場を発見する。調べを進めていくうち、それが21世紀初頭の天才的ソプラノ歌手エヴァの遺品の数々であることが分かった。しかし、やがて二人はそこに巣くうエヴァの情念によって幻想世界に惑わされることになる。忌まわしい過去の記憶を蘇らせられたハインツは、エヴァが愛した男との秘密を暴き、脱出を図った。しかし、宇宙船は爆発を起こし、全ては宇宙の藻屑と化してしまう。からくも命だけは助かったハインツは、藻屑と共に宇宙を浮遊するのだった。 「最臭兵器」甲府にある西橋製薬に勤める田中信男は、その日、風邪で体調を崩していた。彼は、同僚に勧められた新薬サンプルを服用したが、実はそれは政府の極秘の依頼で開発中の、服用した人間から発生されるガスによって周囲の人間を一瞬にして意識不明にしてしまうという細菌戦用兵器だったのである。会社の応接室で仮眠をとって、翌朝目覚めた田中は、同僚たちがバタバタと倒れる様子を見て驚かされる。慌てて東京の本社に連絡を取ると、極秘資料とサンプルを、なるべく人と接しないようにして東京へ運んで来いとのことだった。急いで会社を出る田中は、彼が行くところ行くところに人はおろか鳥や獣までもが仮死状態で倒れていることに戦慄を覚える。東京の本社は政府機関に連絡を取るが、政府はその男を抹殺せよとの決断を下した。政府は自衛隊を派遣して田中を攻撃するが、田中もなかなかしぶとかった。ついにアメリカ軍が開発した宇宙服まで持ち出され、田中抹殺作戦が決行される。中央高速のトンネルの中で勝負はついたかとみられたが、作戦成功にわく政府に戻って来た宇宙服の男は実は田中だったのだ。極秘資料とサンプルを運ぶという自分の使命を果たした田中は、本社の人間を前にヘルメットを脱ぐのだった。 「大砲の街」その少年が住んでいるのは、無数の大砲で重装備した移動都市だった。現在、敵国との戦争の真っ最中で、テレビからは「撃てや撃て力の限り街のため」などという標語が流れている。少年は学校で砲撃の勉強に勤しみ、父は17番砲台の装填手として働き、母は砲弾製造工場にパートに出ている。今日もいつもと変わらぬ戦火の一日が始まり、やがて暮れていく。そんな日々を繰り返す少年は、将来、父のような重労働だが地位の低い装填手ではなく、花形職種の砲撃手になりたいと夢に描くのだった。

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映画レビュー

5.0大友克洋、森本晃司、岡村天斎、今敏、片渕須直らの仕事が堪能できるオムニバスアニメ

2021年9月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画好きで普段アニメを見ない人にまずお勧めするとしたら、この1本かなと思います。3本のオムニバス作品で、バラエティ豊かなで贅沢なSF&メカ描写が楽しめ、大友克洋、森本晃司、岡村天斎、今敏、片渕須直らアニメクリエイターの仕事を堪能することができます。
現実と虚構が交錯する「彼女の想いで」、本格ミリタリーで描かれる逃亡喜劇「最臭兵器」、途方もない手間をかけて全編1カット風に制作された「大砲の街」、どれも十二分の見ごたえがあり、非常に豪華な3本立てです。劇場で見たのは公開時のみですが、何かの機会でスクリーンでかかることがあるといいなと思っています。

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五所光太郎(アニメハック編集部)

4.0アニメーターの見本市のような、三つの異世界。

2024年11月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

怖い

難しい

独特の空気感ながら、かなり楽しめた。

まず私は、『AKIRA』を観たことがないし読んだこともない。音楽はなんとなく知っているし、バイクやオマージュは観たことがあるがそれぐらいである。
なので、大友克洋という人物の凄さも知らないまま、この感想を書いている。

その上で、「面白かったな」と感じた。三つの短編なので、壮大なストーリーがあるわけではない。が、それでも一つ一つにしっかりとしたボリュームがあってかなり満足した。

まずは『彼女の想いで』。
世界観は、現在観ても"未来"であることに変わりがない。ここは重要ポイント。1995年の作品なのだから、色あせていたり古い未来観があっても良いはずだが、それが無い。新鮮ではないが古いとも感じなかった。
その上で、(正確に言えば違うが)AIによる恐怖を描いているが、これが現代と非常にマッチしている。「うわ怖ぇ」となるし、オペラ寄りの音楽も素晴らしい。恐怖を後押しする材料になっている。
あと、かなり吹替洋画チックであった。喋り方といい、キャラクターの人種といい、この辺りは意図したものだと思う。大友さん原作から来ているイメージかもしれない。現実離れしたことができるアニメとはいえ、違和感なく成立させているのは巧い部分だ。
ストーリーとしては三作の中では最も凝っていたのではないだろうか。伏線の貼り方も良い。観直すと意外な発見も多い。
小粋なセリフがちょこちょこ挟まるが、これはあんまり活きていない印象。吹替テイストにした影響もあるか。

次は『最臭兵器』。
タイトルからすでにネタバレ状態ではあるが、ギャグに振り切っている分問題はない。
最初は、陽気で日本に似つかわしくないテーマと、ザ・日本田舎の風景から始まる。そして不穏な様相から日本全土を巻き込んだ大事件に発展していくのだが、様子が全体的にシュールで面白い。主人公である信男のどこまでも能天気な様子が、大慌てな防衛庁との対比となっている。さらに、一般人が臭いに悶え倒れていく様子や(なんか汚い)黄色だったりと、笑えてくる要素がたんまり入っている。
客観的に観ると、怪獣もしくは災害パニック映画であり、ホラーに分類されかねない内容だ。それをあの手この手で、SFコメディ作品として成立させているのには「巧い」と感じざるを得なかった。
オチまで完璧。個人的にはアメリカから来たお偉いさんの顛末が好き。
構成は比較的シンプルかもしれないが、演出は最も凝っているように感じた。バランスを間違えるとホラーだからね。振り切ることと、振り切りすぎないバランスが巧い。
三作の中では一番好き。

そして『大砲の街』。
大したストーリーはない。あくまで何も起こらない日常である。が、全てが非日常の世界観なので観ていて飽きない。
大砲を撃つためだけに造られた街、という設定。なのに全体がスチームパンク。さらに無駄に多用される人材。形骸化した勲章と階級制度。戦時中の日本を思わせる一般市民の生活。どれだけ文明が発展しようとも変わらない貧富差。子供の持つ夢・憧れと想像力、対比するように描かれる大人の諦めと疲労。
絵本のような描かれ方をしているが、その中に様々なこだわりと皮肉と変態性が詰め込まれている。時間としては一番短いが、一枚一枚の情報量が濃く、充分満足できる作品だった。

このように、三作とも飽きることなく楽しむことができた。なかなか趣深くて楽しい2時間だ。
ただ、音響が全体的に悪いように感じた。テレビで観たからかもしれないが、セリフに聞き取りづらい部分があり、状況を把握できない瞬間があった。特に『彼女の想いで』で多くみられる。
あと、絵柄が大友克洋に寄りがちである(『大砲の街』は別。)。ちょっとクセがあるので苦手な人は苦手かも。

と、まぁ正直今の時代では流行らなそうな雰囲気ではあるが、技を感じられたり、色々と考えさせられたり、特異な世界観ながら惹きこまれる内容だった。
大友克洋好きや、日本アニメ好きはぜひ。(面白いので)ツウになった気分にもなれる。そんな作品。

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NandS

3.0BS松竹東急で放送して!!

2024年9月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

『AKIRA』(1988)で世界に名を轟かせた大友克洋が製作総指揮と、一部監督も兼ねた三部構成のアニメ作品。

 EPISODE.1 「彼女の想いで」

 宇宙空間の廃墟からの救難信号で駆け付けた4人乗りの小型宇宙船。彼らがそこで遭遇したのは─。
 人格を持ったコンピューターが人を襲うというプロットは『2001年宇宙の旅』(1968)も含めSFの定番だが、ホログラフィーを使う点が画期的だし、この作品の真骨頂。
 劇場版アニメ作品は普段は見ないが、圧倒的映像表現に、このエピソードだけで充足させてくれる。アニメ映画恐るべし。
 音楽も本格的で素晴らしい。これぞまさしくスペースオペラ?!
 個人的にはこのエピソードがいちばん最後の方がよかった気も。
 ミゲルが「想いで」に取り込まれるラストは何かに似てるなと感じながら見ていたけど、思い出した。
『シャイニング』(1980)ですね。

 EPISODE.2 「最臭兵器」

 山梨県の新薬開発現場に勤める若手社員の田中。風邪をこじらせ、風邪薬のサンプルと思って開発途中の新薬をかってに飲んだばかりに、とんだ大騒動に─。
 些細なことが大袈裟な話に発展し、オチを付けて終わるのは、伝統的な落語の手法(サゲ)だが、大袈裟具合が半端じゃない。アニメならではの見せ場満載。
 エピソードのタイトルで、ほぼネタバレしているとはいえ、田中がどのような変異を遂げるのか、もう少し引っ張って欲しかった。

 EPISODE.3 「大砲の街」

 製作総指揮の大友克洋みずから監督も兼ねた寓意的短編。
 アニメファンの方から怒られるかも知れないが、前の二作品は今の技術なら実写化も可能。ただし、本エピソードだけは別。

 砲弾を製造し、大砲を撃つことだけにすべてが浪費される不毛な街。
 一体誰と、何のために戦っているのか知らされないまま、日々の教育や報道で砲撃手に憧れる少年は、朝晩、砲撃手の肖像画への敬礼を欠かさない。実際の砲撃手が太った醜い中年とは知らずに─。

 精緻で流麗な線画でそれまでの「汚い」「荒い」といった劇画のイメージを一新させた大友が、悪趣味な風刺画のように敢えて醜くデフォルメした人物像を通して人間の愚かしさや単純さを具現化。人間の深層を大胆かつシンプルに戯画化した表現力は、下手なメイクや安直なCGでは到底及ばないだろう。
 長回し映像のようなワンカットの手法も秀逸。

 この作品の公開当時、「大砲の街」に込めた反戦メッセージを見誤る人はいなかっただろう。しかし、過激なゲームが当たり前になり、SNS上では攻撃性剥き出しの情報が飛び交う現在の若者は、「大砲の街」をどのように受け止めるのだろうか。作品のメッセージが今後も正しく伝わることを願いたい。

 松竹配給作品。
 だったら、BS松竹東急でも放送して!!

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TRINITY:The Righthanded Devil

4.0アニメ制作スタジオ

2024年9月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

知的

勢揃いで製作された
大友作品のオムニバス作品

ストーリーの軸にある展開やポイントは
アキラだなぁ。ではあるが

それぞれがしっかりエッジを持って展開されているなぁ。

と観ていて思った。

とは言え、ストーリーの展開の軸がわかり
トッピングされている要素を理解すればする程

吉祥寺界隈で呑んでおられると伺う御大の
ジョーク節が見えてくるから不思議な気分になった。

geeks rulesTはあくまでも洒落の一つだろうから
近いうちのアニメスタジオぶん回し新作を
期待したいものである◎

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tomokuni0714