「【”勝ち続けると人間性を無くす・・” 戦後の混乱の中、博打打ち達の苛烈な生き方を描く。キャスティングの妙も素晴らしき作品。】」麻雀放浪記 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”勝ち続けると人間性を無くす・・” 戦後の混乱の中、博打打ち達の苛烈な生き方を描く。キャスティングの妙も素晴らしき作品。】
ー阿佐田哲也の傑作麻雀小説「麻雀放浪記 青春篇」を、イラストレーターだった、故和田誠さんが可なり原作に忠実にモノクロで映像化した作品。
”出目徳” ”ドサ健” ”上州虎” ”女衒の達”という小説で強烈なアクを発しているキャラクター達のキャスティングの妙に唸らされた作品。-
■今作の魅力
1.戦後の上野を映し出したモノクローム映像の良さ。及び美術の凄さ。
-戦後の荒廃した雰囲気を、見事に映像化している。冒頭の上野バタ屋部落でのチンチロ博打のシーンから、一気に物語に引きずり込まれる。-
2.キャスティングの妙(学生時代、小説を読み込んだ男の勝手な意見。)
”出目徳” :高品格・・もう、無茶苦茶合っている その1。
”ドサ健” :鹿賀丈史・・もう、無茶苦茶合っている その2。
”上州虎” :名古屋章・・無茶苦茶合っている
”女衒の達”:加藤健一・・合っている。
”坊や哲” :真田広之・・うーん・・
3.牌の手積みのシーンを含めた麻雀シーン
・タバコの煙の中、盲牌の後、卓上に叩きつけられる牌。
・”ロン!””それだ・・”という声の後、見せられる上がり手役を横目で見る卓を囲むメンバーの顔付。手で牌をかき回すシーン。
・”坊や哲”がママ(加賀まりこ)から、ゲンロク積み等、いかさまを教えられるシーン。
・一度だけ、映される”坊や哲”のツバメ返し。
-今や、麻雀はほぼ、全自動卓であるが、昔は手積みだったんだよなあ・・。-
4.博打打ちたちと絡む女性たちの魅力的なこと
・”坊や哲”がママに男にしてもらうシーン。
その後、”坊や哲”がママに惹かれていく姿。(そりゃ、そうだ・・)
・”ドサ健”とまゆみ(大竹しのぶ)の共依存の関係性。
”だって、あんたがあたしに惚れてるから・・”
5.”出目徳”の隠語を呟く顔。
”今夜は月が出てるなあ。明日は、きっと天気だろう・・”
で、”2の2 天和”が出来あがる・・。
6.青天井麻雀の果ての、”出目徳” 卓上死のシーン・
・胸を掻きむしり、卓に突っ伏す”出目徳”。彼が握っていた牌は”九蓮宝燈”の上り牌だった・・。
・そして、”ドサ健”が”死んだら負けだぜ・・”と言って、”出目徳”から身包み剥がすシーン。
・”ドサ健””女衒の達””坊や哲”の三人が”出目徳”の家の近くまで運び、転げ落とした後に”皆で呟く言葉
”良い死に方だなあ・・”
<学生時代、朝から朝まで(アサダテツヤ・・)麻雀三昧で、阿佐田哲也さんの麻雀放浪記を始め、麻雀小説を読み耽り(あの牌字って、まだあるのかなあ・・)映画化の話を聞いた時も鼻で嗤って観に行かずに、後年TVで観て、深く後悔した作品。>
■蛇足
・阿佐田哲也と、色川武大とどちらが好きなのかと問われると、非常に困る。
取り敢えず、阿佐田哲也の”短編”であれば「東一局五十二本場」、色川武大であれば、「怪しい来客簿」と記載しておく。
-これ、誰が読むのかなあ・・。文学だし‥。怒られるかな・・。けれど、今映画作品の面白みを確実に反映した作品群であると思うのだが・・。-
NOBUさん、コメントありがとうございます。飄々とした奇術師ですよね。色物では、ぺぺ桜井も好きです。「私、しゃべりながらじゃないとギターが弾けないんです」がかわいい、凄いギタリストなのに。お元気かな。ここ数年、寄席に行ってないので。
阿佐田哲也さんの弟が、寄席でマジックやってるアサダ二世なんですよね。私、アサダ二世大好きなんです。「今日は、がんばりますよ!」と毎日毎回言うんです。色物の立ち位置をおさえています。背が高い方。