「視聴率って大事?戦後79年経っても大衆迎合するんですか?」火垂るの墓(1988) 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)
視聴率って大事?戦後79年経っても大衆迎合するんですか?
過去数回鑑賞
夏がくれば思い出す不朽の名作
アニメで名作が数多くあれど映画.comオールタイムベストがここまでしっくりくる作品を他にあげることはできない
実写映画の存在は知っているがテレビドラマや舞台の存在は知らなかった
松嶋菜々子主演のテレビドラマはきっと忘れていたのだろう
完全にアナザーストーリーだし
観てみたい気もする
舞台は終戦間近から直後の兵庫県神戸市&西宮市
父も母も妹も主人公も死んでしまい家族全滅
上半身がミイラのようになってしまった母と栄養失調で死にそうな節子
投げつけられたドロップ缶の中から出てきた節子の遺骨
それが強烈に印象に残る
昭和20年9月21日夜ぼくは死んだ
冒頭ここから始まる
リアルを追求する高畑だがリアルを超えたリアルなら死者の立場からの回想に辿り着くのか
僕は毎回ここでいきなり涙が溢れてしまう
散歩のあとに餌を与えようとすると大量な涎を垂らす飼い犬のように
まさしく条件反射まさしくパブロフの犬
ラピュタに比べると金曜ロードショーで放送されなくなって久しい
人間とはポジティブなものよりネガティブななものにすぐ食いつくが飽きるのも早いようだ
権利の問題もあるのだろうがそんなものは話し合いで乗り越えられるし毎年8月後半頃にETVで放送すればいいのにな
日本国から億単位の多額の補助金を貰っておきながら尖閣諸島を中共の領土だと海外に宣伝するくらいなら容易に出来るだろう
この作品は動画配信もされていない
来月からNetflixで配信されるらしいがアメリカ限定で日本は対象外
残念である
DVDを借りるか買う他ない状況
清太は我慢するべきだった
我慢していれば清太も節子も死なずにすんだという意見がいつからか覚えてないがネットで目立ち始めた
大元はなにかと言えば清太の声を担当した辰巳努の発言のようだ
彼を批判する気はないが僕は考えが違う
清太は軍人の息子だし自尊心を傷つけられることが何よりも耐えられなかったのだろう
自尊心が低い人には清太の心情は理解できないのかもしれない
そんなわけで清太のあの行動について批判する気にはなれない
誇り高い少年が野菜泥棒とは辻褄が合わないじゃないかとクレームがありそうだが人間とは矛盾に満ち不合理な存在なのだ
この年になってみると西宮のおばさんの立場も理解はできる
あの頃の自分ではない
この作品に対し「戦争の悲惨さがー」とか「戦争反対」とかそういうありふれた感想を述べる彼方系のレビュアーには抵抗がある
原作者の野坂昭如はどちらかというとそっちの方のようだが
僕としては過酷な環境に置かれた人間がどのように生きてどのように死んだのかという人間ドラマを描いたのだろうと初見からそう捉えていた
どうやら高畑監督も実際そんな感じらしい
そういえば手塚治虫も自作についてそのような発言をしていた気がする
高畑監督曰くやがて西宮のおばさんが正しく清太が悪いという意見が大勢になると
またしても全体主義の恐ろしい世の中になると予想した
ヤフコメだけみてとっても実際にそうなりつつある
今更ながら高畑勲はただ単にアニメ監督としてだけでなく人間的にも素晴らしい人だったんだな感銘する次第だ
声の配役
兄の清太に辰巳努
妹の節子に白石綾乃
心臓が弱く薬を飲んでいる清太と節子の母に志乃原良子
西宮の親戚の叔母さんに山口朱美