ヒポクラテスたちのレビュー・感想・評価
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けっこうよかった
それこそビデオレンタルの時代からずっと前から気になっていたシリーズで、初めて見た。すると大昔見た斉藤由貴主演の『恋する女たち』に作りや雰囲気が似ている。大森監督を初めてみたのは『すかんぴんウォーク』だったけどそれにはあまり似ていない。『恋する女たち』のことなんかずっと忘れていたのだけど思い出した。
医学生が学生寮で貧乏暮らしをするなど、超絶にかっこいい。頭が良くて国家資格を取る直前で、貧しさをむしろ楽しく暮らしている。僕は常々、金持ちより貧しくても楽しく暮らせる方がずっと豊かであり、強さでもあると考えているので、最高だ。
ただ、主人公は彼女を妊娠させて中絶させて更に体にダメージを与える結果になって泣くなど、非常にビターな青春だ。
映像も出演者の髪型も古く、昭和感が漂っているが、悪くない。 医学生...
映像も出演者の髪型も古く、昭和感が漂っているが、悪くない。
医学生たちのやる気があまり感じられないが、何となく医者を目指すという学生も結構いるのかもしれない。
ただ、伊藤蘭についてはあんな結末にする必要があったのか疑問。
何回も見た映画
アマプラで無料鑑賞
高校生当時ATG作品を片っ端からレンタルしまくり観漁っていたが、その中でも理解し易い内容ということもあり、かなり印象に残っている方の作品。
その後アイドル映画や特撮映画で東宝縛りから抜けられなくなった?大森一樹の私的な部分が多くみられる医学生あるあるコメディ?で、理屈っぽさ満載の粗さが目立つ脚本ではあるものの、若者故の苦悩と妥協が嘘がなく誠実さを感じさせ心にグサグサと突き刺さる。
主演の古尾谷雅人や内藤剛は成人映画で何度か見たことがあった程度。
伊藤蘭は普通の女の子に戻りたく引退してからそれほど間を開けずの芸能界(女優)復帰第一作で、当時は結構避難を浴びていたように思う。
劇中で「蘭」を吸うシーンはニヤッとさせる悪戯な演出。
手塚治虫や鈴木清順などの豪華なバックアップメンバーも楽しそうに出演してくれている。
特に婦人科系に偏ったエピソードが多いが、研修用の器具や避妊具、生理用品など生々しくも監督自身が医学部出身というリアリティで見ていても非常に興味深い。
少し下の世代の自分にとっても、学生寮内での吸い殻を山にしての討論や学生運動など熱い時代をなぜか懐かしく感じさせるパワーがたまらない。
主演の古尾谷雅人はじめ多くの演者さんや監督の大森一樹らはすでに鬼籍に入ってしまい、懐かしい映画の部類には入ると思うが、自分としては色褪せない青春映画として毎回新鮮味を感じながら観てしまうまさに珠玉の一作。
医者の不調法
40年も前の作品を見るということは、何とも言えない感慨深いものがある。古尾谷雅人、阿藤海、斉藤洋介、原田芳雄、渡辺文雄、牟田悌三、鈴木清順、手塚治虫らは既にもういない。スクリーンではあんなにいきいきと動いているのに。大学生役の柄本明は最近ではすっかり老人役が板についた。伊藤蘭は水谷豊の嫁さんになって久しい。
大森一樹監督自身の体験を元にした医学生の青春グラフィティだが、人の生死に向き合う厳しさに時折ひんやりする。
そう言えば、監督も昨年亡くなったのだった。合掌。
舞鶴に帰った恋人との関係はその後どうなったのか気になった。
みんな若いなぁ
何気に柄本明夫婦揃ってる笑
この時は結婚してたのかな?
医者も人間なんだよなぁ。人間として未熟。医者になっても未熟。でも仕事はいつもプロでなければいけない。私も教員なので、何となくわかります。
それにしても蘭ちゃんが自殺なんて😭それは飛躍しすぎだろ。
手塚治虫のレアショットに拍手した
最近の若い者は皆、草食系なので昔の若い者は肉食系が多かったというイメージがあるのだがこの映画を観るとそうでもなかったことがよくわかる。 青春時代はかくも不安で色んなことを考え悩みがちで・・矛盾するように決断が間違っておりリスクを考えずバカな行動をとってしまう・・医者になるような人材でも同じなんだな と思った。全体的にエピソードの羅列みたいな感じで青春グラフィティって感じだった。最後に蘭ちゃんが自殺したってのが出てきたけど何故なのかよくわからない。なんとなく観客の感動を深めようとしてそういうの入れたみたいな感じで後味が悪かった。でも全体的には青春劇が良く描けており良い映画だった。 今回はHDで見たせいかすごくフィルムの持ち味が出ていて見ていて楽しいなと思った。映画監督よ、映画はフィルムで取れ。
公開から40年たってるのかー 何度も観たいと思ってましたがやっと観...
公開から40年たってるのかー
何度も観たいと思ってましたがやっと観れた。
懐かしい京都の街並み、ファッション、そして青春群像劇。いろいろ変わってしまったが、時を経てもあの頃は良かったなー
エンドロールの登場人物のその後は、アメリカングラフティを思い出したし、実際の役者達のその後もオーバラップしていろいろ感じるところあり。
白頭巾ちゃん気をつけて
"たとえば知性というものは、すごく自由でしなやかで、どこまでもどこまでものびやかに豊かに広がっていくもので、そしてとんだりはねたりふざけたり突進したり立ちどまったり、でも結局はなにか大きな大きなやさしさみたいなもの、そしてそのやさしさを支える限りない強さみたいなものを目指していくものじゃないか"
庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』より
*
本作の主人公である荻野は、医学科の最終学年だというのにろくすっぽ進路も決めないで風船のように京都の街を漂っている大学生。「大学モノ」にはよくある導入だ。現在の私がそうであるように。
しかし荻野のそれは『ニッポン無責任時代』の「スーダラ節」のように、嫌なことは忘れて楽しく踊ろう!的な享楽主義とはまったく様相を異にしている。
病院という空間は、生と死が最も鮮やかな実体を持っている場所だ。臨床実習や日々の生活を通じて、荻野はさまざまなヒューマニズム的問題に直面する。
橋の上で交通事故を起こし足を負傷したバイカー。野次馬たちが口々に叫ぶ。「早く医者を呼べ!」
彼の子供を堕ろした交際相手が言う。「医者なんか大嫌い」。
その兄も言う。「俺は医者が大嫌いなんだよ」。
同じ寮の後輩が先輩に向かって叫び散らす。「医者になることは加害者になることなんですよ!そんなこともわかんないんですか!」
荻野はかつて寮の友人たちと共に不正医療を糾弾するデモ活動に明け暮れていた頃もあった。しかし彼は途中で脱落してしまった。それは彼の思考停止を意味するだろうか?安易な享楽主義への堕落を意味するだろうか?私はそうは思わない。
彼は迷っているのだ。混沌をきわめる医療の世界に対して、自分はどのように振る舞うべきなのか、と。
彼が画面に向かって手話で語りかけてくるシーンがある。これは彼の頭の中を逡巡するさまざまな思考が、彼を一時的な失語症へと追いやってしまっていることの暗示だ。
彼は手で語る。「私はなぜ手話を学んでいるのか?私は誰と話さなければならないのか?」
もし考えることをやめられるのであれば、今すぐにでも彼はそうしたかっただろう。しかし彼はそうしなかった。できなかった。
交際相手が家庭の事情で故郷に戻ることになった。彼女は荻野に向かって手紙で語りかける。「まだ世界が終わっちまったわけじゃないんだぜ 頑張れ」。それは呪いのように、祈りのように彼の胸に重くのしかかる。
中盤、荻野と同じ寮に住んでいる映画オタクの医学生が制作した自主映画がチラッと映るのだが、そのタイトルは『白頭巾ちゃん気をつけて』。
これは言うまでもなく庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』のオマージュだ。
『赤頭巾ちゃん』では、学生運動激化の煽りで東大の入試が中止になってしまった年の、ある一人の受験生の心の動きが、生き生きとした一人称視点で語られる。
彼は学生運動という時代のうねりを前に、ある種の虚無主義に陥る。学生運動という「昭和元禄阿波踊り」に盲目的に便乗する以外に、60年代という「狂気の時代」を生きることは無理なのではないかという諦観だ。
これはまさしく人道と利益主義をめぐってさまざまな問題を露呈させ続ける医療・医学という壁を目の前にして失語症に陥ってしまった荻野の姿と見事に符合する。
しかし『白頭巾』を見た寮の先輩たちは、映画オタクの後輩に向かって素っ気なく言う。「これ面白くないな」。
荻野の同期にはみどりという唯一の女子医学生がいるのだが、彼女は夜勤の臨床研修の待機室で、荻野とこんな会話をする。
「暇だな」
「暇でいいのよ。他人の不幸を待つほうが嫌よ」
このとき、みどりは手塚治虫『ブラックジャック』3巻所収の「研修医たち」という話を読んでいた。「研修医たち」のあらすじはこんな感じだ。
ある病院の若手医師たちが、ある日独断で患者を診断していたところを先輩医師に見つかり「手術もお前らで勝手にやれ」と見放される。
しかし先輩医師の高圧的な態度に日頃から辟易していた彼らは、先輩医師の鼻を明かすためにも自分たちだけで手術を敢行することを決意した。
とはいえ経験も浅く自信のない彼らはブラックジャックに手術を依頼する。ブラックジャックはそれを冷淡に断るが、後で心配になって彼らの手術現場に駆けつける。
手術はブラックジャックの手捌きでつつがなく終了したが、ブラックジャックは周囲にいた医師の中に先輩医師が混じっていたことを知る。
「患者にもしものことがあったら大変ですからな」
先輩医師はブラックジャックに微笑みかける。
「たぶんあなたも…」
手塚治虫のヒューマニズムが光る屈指の名編だ。患者を勝負のコマのように扱う若手医師たちと、それを峻厳な眼差しで見つめながら、しかし決して見放さないブラックジャックと先輩医師の優しさ。みどりは同期の医学生の中でもとりわけそのような優しさを備えていたといっていいだろう。
しかしその優しさこそが医者としての仇となり、彼女は各医局への進局を拒み、退学を決意する。そして最後の最後には自らの命をも絶ってしまう。
ここに医師という職業の冷厳さがある。私はレイモンド・チャンドラー『プレイバック』の有名な台詞を思い出した。
"タフでなければ生きて行けない。優しくなければ生きていく資格がない。(If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.)"
みどりにはタフさが欠如していたのだ。ふつうに生活するのであれば、それは大した問題ではない。彼女に「生きている資格」はじゅうぶんすぎるほど備わっていた。しかし医師はそうはいかない。来る日も来る日も、数々の死を、常に最前線で見送らなければいけないのが医師という職業だ。
さて、この狂気の世界に対し、荻野はどんな答えを出したのだろうか?
彼は朝刊で衝撃的な記事を見つける。交際相手が堕胎した病院が、実は無免許医によって運営されていたという内容だった。彼は半ば放心状態で交際相手に電話をかける。電話に出たのは彼女の兄だった。彼は切れ切れの声で絞り出す。
「俺、彼女と結婚します。結婚しなくちゃいけないんです」
彼もみどりと同様に、冷淡な医療現場を素知らぬ顔で闊歩できるほどのタフさを持っていなかった。彼はそのまま気絶してしまう。
次に目覚めたとき、彼はおもむろに自身の白衣をマッキーで真っ黒に塗り潰しはじめた。「paint it black, paint it black」と何度も呟きながら。
彼はひどく打ちひしがれながらも、戦い続けることを選んだのだ。それは、ふとしたきっかけから社会と対峙していくための勇気を得、東京の街へと踏み出してゆく『赤頭巾』ラストシーンの主人公の姿とも重なる。
荻野は真っ黒の白衣を着たまま大学病院に乗り込み、自分を嘲笑する同期の医学生たちに食ってかかる。
しかしたちまち彼は抑え込まれ、精神病棟に収監される。翌年には晴れて精神科医になった元同期の「最初の患者」として病院生活を送っていた。
これを病院ひいては医療という狂気の世界に対する彼の敗北と捉えることに、私は積極的意義を感じない。
むしろ、彼がそれらの不条理と自己の倫理との板挟みによって死の淵へ追いやられながらも、なんとかそこから生へと再起することができたことを、私はとても喜ばしく思う。たとえその回復の過程において、荻野が常々疑問視していた「医学」の力が使われていたとしても。
ラストシーンでは、みどりが自殺したことを含め、荻野の周囲の「ヒポクラテスたち」がそれぞれどのような進路を辿ったのかが説明される。
しかし荻野に関して言えば、彼が2ヶ月後に大学を卒業したこと以外の情報は敢えて何も明かされていない。
彼は医者になったのだろうか?それとも医学の道を諦めて、「生きている資格」のみが重視される優しい世界に腰を落ち着けたのだろうか?
それはわからない。ただ私が願うのは、彼が今もどこかで生きていてほしい、ということだけだ。彼は狂気を生き抜くための術を、どうにか自分の中に確立しつつあるのだから。
白頭巾ちゃん、どうか気をつけて。
医師とは何か?を見事に表現した医療映画の傑作
現在2020年4月10日です
今週東京、大阪など7都府県には新型コロナウイルス緊急事態宣言がなされ、本日東京都が休業を要請する業種を発表したところです
日本もイタリアやニューヨークのように医療崩壊する崖っぷちにあります
イタリアでは医師までが次々に倒れ、リタイアした医師だけでなく、医学生を繰り上げ卒業させて医療現場に投入しているそうです
そうです
本作に描かれているような医学生達が、地獄のような医療崩壊の現場に投げ込まれているのです
医学生と言えども、20歳前後の若い人達です
若さ故の出来事は世間一般と大して変わることはないのです
しかし人の生命を預かる医師という仕事の重さは彼らを押し潰す程に重いのです
本作公開からちょうど40年
ラストシーンで国家試験に合格した医者の卵達は既に60代半ば以上
大学に残っていたならば、みな教授や学部長になっていることでしょう
もしかしたらテレビで解説するレベルに達しているのかも知れません
そしてこのコロナウイルスの猛威の前に最前線の指揮官として立ち向かっている立場のはずなのです
ラストシーンの卒業後の彼らの消息を伝えるテロップがでるときには、涙がでました
医師という仕事の重圧に潰されてしまったものも何人も出ているのです
卒業後も重圧は更に強くなるばかりでしょう
それを乗り越えてきた人々が、いま医療の最前線で戦っている医師の人々なのです
そしてこのような経験をしてきた人々が、いまこのコロナウイルスに立ち向かってくれているのです
これがコロナウイルスと戦う現場の医師達なのです
そのような思いが胸中に一杯になった涙と感動なのです
医療崩壊を起こさぬよう、私達は行動を自粛し感染拡大を防止する事で、それに協力する事ができるのです
医師とは何か?を見事に表現した医療映画の傑作だと思います
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