晩春のレビュー・感想・評価
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戦後まもなくの鎌倉の風景が美しい。当時の文化や思想が随所に見られま...
戦後まもなくの鎌倉の風景が美しい。当時の文化や思想が随所に見られます。映画は歴史遺産ですね。
定番の嫁に行くやら行かぬやらの話。本作が始まりなのだとか。適齢期になれば女は嫁に行かねばならぬ、当時の文化ですね、いやこれは今も色濃く残っている気がします。
嫁に行くより父といたい娘、しかしそれを許さぬ文化。父の気持ちも複雑です。
見どころ
・嫁入りが決まっての親子最後の旅、娘がコクリます。どきどきです。
・ラストの父。結局お前もか。
見ようによってはヤバイ映画。壺が映るシーンに性的な論争があるようです。?。
特に大きな事件が起こるわけでもないのに見入ってしまうのは『東京物語』と同じですね。不思議な魔力です。これで紀子三部作、二作制覇。『麦秋』が楽しみです。
●いつも笠智衆はひとりになるな。
父と娘の物語。
娘を嫁に行かせたい。
というより、行かせないと、自分が死んだ後、困るだろうと。
娘はそれでも父と一緒にいたいという。
笠智衆の淡々とした語り口。
原節子の喜怒哀楽。
杉村春子のストレートさ。
そして、月丘夢路がなんとも魅力的だ。
蛇足だが、原節子と月丘夢路の掛け合いは、演出なのか時代なのか、わからなかった。
割とズケズケした物言いなのだが、そこはかとなく上品でもあり。
何本も小津作品を観ているとどれも同じに見えてくる。ストーリーと時代...
何本も小津作品を観ているとどれも同じに見えてくる。ストーリーと時代に合わない原節子の濃い顔立ちに違和感を感じてしまった。笠智衆と親子のばすがまったく似ておらずかけ離れている。何気ないカットにも物語るものがあり、映像は美しい。
「麦秋」と併せて見る
失われつつある日本人の美質を映像として再確認できる作品。小津の表現したかったことがこの年になってようやく理解できるようになった。原節子の「したたる」ような魅力というか色気も魅力である。笠智衆の妙なしつこさが妙にシュール。「男はつらいよ」が小津映画の廉価版的というかより砕けた表現で描いたという位置付けの作品なんだろうなと改めて感じた。
追悼・原節子 (※ほとんど映画のレビューではありません)
原節子さん死去。
この訃報を聞いた時、これで往年の銀幕スターが全員旅立ったような感じを受けた。
清楚で上品な役柄から、“永遠の処女”。
人気絶頂の60年代に突然引退し、以来半世紀一切公の場から姿を消した事から“伝説の女優”。
自分にとっては、小津安二郎の一連の作品での“古きよき時代の日本の理想の娘”として印象に残る。
小津の代表作「東京物語」での田舎から出てきた老夫婦を唯一気遣うお嫁さんもいいが、やっぱり「晩春」!
結婚を控えた娘とその父が二人で過ごす最後の日々を描いた名作。
小津のその後のスタイルを決め、原節子との初コンビ作。小津にとっても原節子にとっても転機となった一作。
娘・紀子(「東京物語」でも同名役)の可憐さ、いじらしさは、これぞ原節子の真骨頂!
当時、今やお馴染み“お嫁さんにしたい女優ランキング”なんてあったら圧倒的な1位だったんだろうなぁ、と。
今年「海街diary」を見た時、綾瀬はるかの演技にうっすら原節子を彷彿させるものを感じたが(あくまで役柄が)、吉永小百合ともちょっと違う、日本映画に後にも先にも二人と居ない名女優。
今回の訃報でクローズアップされたのが、ゴシップ的な引退の真相。
それよりも、日本映画界にどれほどの足跡を残したか取り上げて欲しかったが、ワイドショーでは典型的な“往年の女優死去”というくらい。
今のTV界には原節子を知らない人が多いのか…?
いずれキネマ旬報では間違いなく大特集するからそれで待つか…。
ご冥福お祈りします。
昭和の轍
私の小津監督初見は「お早う」という喜劇だったので、2作目となる今作品が、監督本来のテイストであると期待を込めて観ました。白黒で何とも時代を感じさせる映像&音響ですが、長い間多くの映画ファンを魅了させ続けていると言われているのも納得の、何ともいえない心地よさの漂う作品でした。
美しい言葉づかい、身の振り、格子障子のぴんとした美しさ、庭を眺める洒落た縁側、等々。現代では尊いと言えるほど、さりげない日常の美意識があちらこちらにちりばめられているのです。そして、最も美しいのは父と娘、親子の情。お互いを思いやる心の清らかさ。現代と比較するのはナンセンスと思ってはいますが、それでも平成の世が描く親子図とのあまりの違いに複雑になります。
『麦秋』『東京物語』は、今作品と同様に紀子という名の女性を原節子さんが演じていて、『晩春』と合せて「紀子三部作」と呼ばれているそうです。
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