晩菊

劇場公開日:

解説

藤本真澄製作による林芙美子原作の映画化。「めし」のコンビ田中澄江(魅せられたる魂)と井手俊郎(落語長屋は花ざかり)が共同脚色し、「山の音」の成瀬巳喜男が監督している。撮影は「芸者小夏」の玉井正夫、音楽は「金色夜叉(1954)」の斎藤一郎。出演者は「勲章」の杉村春子、「わたしの凡てを」の上原謙、有馬稲子、「七人の侍」の加東大介、「御ひいき六花撰 素ッ飛び男」の小泉博などである。

1954年製作/101分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1954年6月22日

ストーリー

芸者上りの倉橋きんは口の不自由な女中静子と二人暮し。今は色恋より金が第一で、金を貸したり土地の売買をしていた。昔の芸者仲間たまえ、とみ、のぶの三人も近所で貧しい生活をしているが、きんはたまえやのぶにも金を貸してやかましく利子をとりたてた。若い頃きんと無利心中までしようとした関が会いたがっていることを飲み屋をやっているのぶから聞いても、きんは何の感情も表わさない。しかし以前燃えるような恋をした田部から会いたいと手紙を受けると、彼女は美しく化粧して男を待った。だが田部は金を借りに来たのだ。きんは忽ち冷い態度になり、今まで持っていた彼の写真も焼きすてた。たまえはホテルの女中をしているが、その息子清は、おめかけをしている栄子から小遭いを貰っていた。清が手にとどかない所にいるような気がして、母親は悲しかった。雑役婦のとみには幸子という娘がいて、麻雀屋で働いていたが、店へ来る中年の男と結婚することに一人で決めていた。無視されたとみは、羽織を売った金でのぶの店へ行き酔いつぶれた。北海道に就職した清は、栄子と一夜別れの酒をくみ、幸子はとみの留守に荷物をまとめ、さっさと新婚旅行に出かけた。子供たちは母親のもとを離れたが、清を上野駅へ見送ったたまえととみは、子供を育てた喜びに生甲斐を覚えるのだった。きんはのぶから関が金の事で警察へ引かれたと聞いても、私は知らないと冷たく云いすてて土地を見に出かけた。

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映画レビュー

4.5とても面白かった

2023年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

テーマ的にも若者より年長の大人が楽しむ類の映画なので本来当たり前の話だが、子供騙し的な日和った部分がないのが素晴らしい。唯一、モノローグを使ったシーンだけ若干、演出としてどうなの?と思ったものの、気になったのはそこだけ。
杉村春子の生き方や考え方はあまりにも真っ当過ぎて、時空を超えた共感度の高さだった。上原謙も、心中相手のおっさんもただただキモ過ぎる。それに比べて、メイン3人の素晴らしさときたら表現のしようもない。ラスト、それぞれが諸々に対して吹っ切れた後の行動を描写して終わるのだが、いい映画を見たという満足感で心が満たされた。

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どんぐり

4.0過去との付き合い方について

2022年12月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1954年。成瀬巳喜男監督。元芸者の女は金貸しをしながら聾唖の女中と女二人の倹しい暮らし。元芸者仲間にも金を貸してやかましく取り立てている。そんななか、かつて心中未遂を無理強いされた男がやってきたり、一途に恋していた男から便りが来たりして、昔を振り返ることが多くなって、、、という話。
主人公の様子とともに3人の元芸者仲間の様子も描かれて、中年女たち(晩菊)の悲哀がじわじわと現れてくる。お金があったり、息子がいたり、娘がいたり、自分の店をもっていたり、何かを得ていながらも満たされない人々。いずれも過去を振り返るばかりの人々それぞの矜持、それぞれの諦め、それぞれの慰め。

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文字読み

4.02024年は本作公開70周年です 今こそリメイクするべき意味があると思います

2022年10月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

残菊の候、と手紙の書き出しによく使う時候の挨拶の残菊
それと晩菊とはどう違うのでしょうか?

残菊の方は、秋の盛りの時期が過ぎて初冬の頃になっても、まだ菊が咲き残っいる様子のことを指すのだそうです

では晩菊とは?
その残菊の中でも、年末頃の一番最後の最後まで咲き残っている菊のことを指すそうです

本作の晩菊とは、もちろん登場人物のアラフォーどころか、アラファイブの女性たちのことです

主人公のおきん 杉村春子 48歳
おでん屋の女将 おのぶ 沢村 貞子 46歳
旅館の女中 たまえ 望月優子 49歳
会社の掃除婦 おとみ 細川ちか子 49歳

四人とも20年前は、売れっ子芸者としてブイブイいわせていたようです

その彼女たちも今では、残菊どころか、晩菊になってしまったその有り様を描く物語です

大した事件も物語もなにもありません
昭和29年1954年公開、白黒作品
今から70年近い大昔のお話です
当時は、このような人生の女性は特殊な事例だったと思います

でも、なぜか21世紀にみるとどうでしょう
なにかすごく一般的なお話のように感じてしまうのです

当時は24歳どころか、20歳位で結婚して子供を何人も産んで専業主婦になっていた時代です

それが21世紀の現代では、本作のように女性たちの多くは、30歳どころか、40歳を過ぎても働いています

正社員ならまだしも、非正規労働の不安定かつ低賃金で暮らしている女性も多いのです
毎日あくせく働いて、眠るだけの毎日

本作の晩菊の女性たちと、一体どこが違うのでしょう

四人の内、二人はシングルマザーです
今でいう毒親ですが、それでも子供は成人して巣立っていきます

もう50歳手前、はっきりいってもうおばさんどころか、正直おばあちゃんに見えてもおかしくないのです

それでもまだ女を完成に捨て去った訳ではないのです
おのぶさんは、自分も子供を作りたいとか、たまえに男を紹介しようとしたとか言ってます

女もアラファイブにもなれば、いろいろな過去があります
男との腐れ縁もあります
昔の男が訪ねても来ます
忘れられない男もあります
過去の栄光の記憶もまだまだ新しいのです

2024年は本作公開70周年です
今こそリメイクするべき意味があると思います

本作の晩菊の四人を演じる名女優の演技のものすごいこと!圧倒的です

令和の女優陣がどこまで迫ることができるでしょうか?
男優陣も然りです

何より成瀬巳喜男監督の演出を超えることができるかどうか

正直心許ないのですが、それでも本作のテーマは21世紀の女性には普遍性がある、21世紀にこそ撮られるべき、撮られなければならない映画であると思います

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あき240

3.0芸者コントのルーツ

2021年1月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
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odeonza
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