劇場公開日 1954年6月22日

晩菊のレビュー・感想・評価

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4.5とても面白かった

2023年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

テーマ的にも若者より年長の大人が楽しむ類の映画なので本来当たり前の話だが、子供騙し的な日和った部分がないのが素晴らしい。唯一、モノローグを使ったシーンだけ若干、演出としてどうなの?と思ったものの、気になったのはそこだけ。
杉村春子の生き方や考え方はあまりにも真っ当過ぎて、時空を超えた共感度の高さだった。上原謙も、心中相手のおっさんもただただキモ過ぎる。それに比べて、メイン3人の素晴らしさときたら表現のしようもない。ラスト、それぞれが諸々に対して吹っ切れた後の行動を描写して終わるのだが、いい映画を見たという満足感で心が満たされた。

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どんぐり

4.0過去との付き合い方について

2022年12月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1954年。成瀬巳喜男監督。元芸者の女は金貸しをしながら聾唖の女中と女二人の倹しい暮らし。元芸者仲間にも金を貸してやかましく取り立てている。そんななか、かつて心中未遂を無理強いされた男がやってきたり、一途に恋していた男から便りが来たりして、昔を振り返ることが多くなって、、、という話。
主人公の様子とともに3人の元芸者仲間の様子も描かれて、中年女たち(晩菊)の悲哀がじわじわと現れてくる。お金があったり、息子がいたり、娘がいたり、自分の店をもっていたり、何かを得ていながらも満たされない人々。いずれも過去を振り返るばかりの人々それぞの矜持、それぞれの諦め、それぞれの慰め。

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4.02024年は本作公開70周年です 今こそリメイクするべき意味があると思います

2022年10月18日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

残菊の候、と手紙の書き出しによく使う時候の挨拶の残菊
それと晩菊とはどう違うのでしょうか?

残菊の方は、秋の盛りの時期が過ぎて初冬の頃になっても、まだ菊が咲き残っいる様子のことを指すのだそうです

では晩菊とは?
その残菊の中でも、年末頃の一番最後の最後まで咲き残っている菊のことを指すそうです

本作の晩菊とは、もちろん登場人物のアラフォーどころか、アラファイブの女性たちのことです

主人公のおきん 杉村春子 48歳
おでん屋の女将 おのぶ 沢村 貞子 46歳
旅館の女中 たまえ 望月優子 49歳
会社の掃除婦 おとみ 細川ちか子 49歳

四人とも20年前は、売れっ子芸者としてブイブイいわせていたようです

その彼女たちも今では、残菊どころか、晩菊になってしまったその有り様を描く物語です

大した事件も物語もなにもありません
昭和29年1954年公開、白黒作品
今から70年近い大昔のお話です
当時は、このような人生の女性は特殊な事例だったと思います

でも、なぜか21世紀にみるとどうでしょう
なにかすごく一般的なお話のように感じてしまうのです

当時は24歳どころか、20歳位で結婚して子供を何人も産んで専業主婦になっていた時代です

それが21世紀の現代では、本作のように女性たちの多くは、30歳どころか、40歳を過ぎても働いています

正社員ならまだしも、非正規労働の不安定かつ低賃金で暮らしている女性も多いのです
毎日あくせく働いて、眠るだけの毎日

本作の晩菊の女性たちと、一体どこが違うのでしょう

四人の内、二人はシングルマザーです
今でいう毒親ですが、それでも子供は成人して巣立っていきます

もう50歳手前、はっきりいってもうおばさんどころか、正直おばあちゃんに見えてもおかしくないのです

それでもまだ女を完成に捨て去った訳ではないのです
おのぶさんは、自分も子供を作りたいとか、たまえに男を紹介しようとしたとか言ってます

女もアラファイブにもなれば、いろいろな過去があります
男との腐れ縁もあります
昔の男が訪ねても来ます
忘れられない男もあります
過去の栄光の記憶もまだまだ新しいのです

2024年は本作公開70周年です
今こそリメイクするべき意味があると思います

本作の晩菊の四人を演じる名女優の演技のものすごいこと!圧倒的です

令和の女優陣がどこまで迫ることができるでしょうか?
男優陣も然りです

何より成瀬巳喜男監督の演出を超えることができるかどうか

正直心許ないのですが、それでも本作のテーマは21世紀の女性には普遍性がある、21世紀にこそ撮られるべき、撮られなければならない映画であると思います

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あき240

3.0芸者コントのルーツ

2021年1月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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odeonza

1.0「杉村春子生誕110年」

2016年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

 神保町シアターで「杉村春子生誕110年」として特集上映。
 「晩菊」は数少ない杉村主演作品である。映画では脇役で登場することのほうが多いこの女優は、スクリーンに映るやその物語において最も気になるキャラクターとなる。気が付くと、彼女の演じる人物の一挙手一投足が気になって仕方がなくなるのだ。
 杉村の芝居の真骨頂はやはりコメディであろう。
 この映画では、むかし熱を上げていた男の訪問を受けてからの身支度のシークエンスでそれを確認することができる。そうすることで毛穴が塞がって化粧ののりが良くなるのだろうか、喜々として氷を割り、手拭いに包んで顔を冷やす。この時の動作と表情が、観客の微笑みを誘う。
 このように嬉しくて小躍りしたくなる大の大人の心情を、杉村は日常の何でもない動作を芝居にすることで表現する。
 このような杉村の芝居は成瀬巳喜男の作品のみならず、いくつかの小津安二郎の作品にも見ることができる。キャストの中に彼女の名前を見つけると、映画を観る前から楽しみになるものだ。客を呼べる俳優とはこういうことを言うのだろう。

 しかし、この作品においては、そのような彼女の力量を無駄にしてはいまいか。
 上原謙が演じる昔の男への想いが、彼の切り出した金の話を契機に急速に冷めていく。この心情の過程を、映画は杉村の独白によって観客に説明してしまう。
 なぜ、この物語の決定的に重要な転換点を、杉村の芝居ではなく、セリフで表現したのか。名匠成瀬にして、これはないだろうと言いたい。
 懐旧と思慕の情が、世知辛い借金の話を境に軽蔑へと変化する。これを芝居や映像で表すことなく、俳優のナレーションで説明してしまったのはなぜなのだろう。
 杉村の芝居がすばらしいだけに、このモノローグが惜しまれる。

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佐分 利信